2019年に日本公開された韓国映画で印象に残っている作品と言えば、『神と共に』2部作と『工作』でしょうか。『神と共に 第一章:罪と罰』『神と共に 第二章:因と縁』そして『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』はいずれもスケールの大きな作品でしたね。これらに比べるとスケールは小さいのですが、めっちゃ面白い作品が韓国映画には目白押し。その中の1本が、11月22日(金)に公開されるチョ・ジョンソクとユナ(少女時代)の主演作『EXIT イグジット』です。見ているだけで体中の筋肉が緊張し、翌日筋肉痛になったぐらい素晴らしいアクション映画であり、主人公たちが有毒ガスから逃れて脱出できるのか、と手に汗握るサスペンス映画であり、いかにも韓国映画らしいベタな家族間ドタバタがてんこ盛りのコメディ映画でもあります。まずは作品データをどうぞ。
『EXIT イグジット』 公式サイト (予告編はこちらからどうぞ)
2018年/韓国/韓国語/104分/原題:엑시트
監督:イ・サングン
出演:チョ・ジョンソク、ユナ(少女時代)、コ・ドゥシム、パク・インファン
配給:ギャガ・プラス
※11月22日(金)より新宿武蔵野館他にて全国順次公開
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実家で暮らすヨンナム(チョ・ジョンソク)は、いまだに就職先が決まらず、公園で無駄な体力作りに励んだりしていて、小学生の甥にもバカにされる始末。甥っ子の母である姉のジョンヒョン(キム・ジヨン)にもどやされるものの、今回も就職試験にまた失敗。ヨンナムにできるのは、70歳となった母(コ・ドゥシム)の古希祝いの会場を予約したり、当日父(パク・インファン)と母を車で連れて行くことぐらいでした。会場にはジョンヒョンら姉3人が勢揃いし、その夫や子供たちもやってきて、古希祝いの場は大いに盛り上がります。実はその宴会場の副主任は、ヨンナムが大学時代に付き合っていた後輩ウィジュ(ユナ)で、ふられたヨンナムは後腐れなく別れたと思いきや、まだまだ彼女に未練があったのでした。ところが会もそろそろお開きか、という頃、会場の近くではとんでもない事件が起きていました。ある会社に恨みを持つ男がトラックで会社に突っ込み、積んでいた液体から発する有毒ガスがあたりに漂い始めたのです。呼吸器官をやられて、バタバタと倒れていく通行人や自動車を運転する人たち。ガスは拡散し、次第に上へ上へと上がってきます。人々は屋上に逃げ、少しずつヘリで救助されていきますが、ヘリの定員の関係で、ヨンナムとウィジュだけが取り残されてしまいました...。
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2人だけ取り残される状況に至るまでにも、結構手に汗握るアクションシーンが続きます。屋上に逃げようとしたら、屋上の扉が施錠されていて外からしか開かない!⇒ヨンナム、窓を破って外に出たあと、外壁を辿り屋上に上がって、外側から扉を開く、とかなんですが、ここで早くも見ている方の脇の下には冷や汗がにじんできます。「外壁を辿り」と一言で書いてしまいましたが、それがもう「SASUKE」第二ステージ並みの難度で、冒頭に公園での鉄棒トレーニングを見せたのはここの伏線だったのか、と納得してしまいました。しかも巧みなのがビルの全面ガラスを割る手段で、会場の廊下に飾ってあったトロフィー(優良宴会場賞、とかですかね?)の類いを投げつけて割るのです。この、「ありもので間に合わせるアクション」がこの後もいろいろ登場して、その工夫も見どころの一つになっています。
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もちろん、それは都合良すぎ、という物も登場してくるのですが、たとえば上の写真の防毒装備一式にしても、それを使って非常にベーシックなサスペンスを作り出すことに成功しており、上手な脚本にうならされます。脚本もイ・サングン監督が担当していますが、とても初監督作とは思えない、細部の作りがうまい作品です。そして、この防毒マスクをはずさざるを得なくなってからが、いよいよアクション全開本番です。そこであらためて目を見張らされるのが、ユナ扮するウィジュの活躍ぶり。会場から逃げるとなった時には、すぐさまスカートをジャージに着替え、ヨンナムの名アシスタントとして様々な面で彼を支えるほか、時には彼をリードもするのです。
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ユナは『コンフィデンシャル/共助』(2017)で、ユ・ヘジンの義妹役で初めて映画に出演したのですが、あの時はお添え物、という感じの、どっちかというとおバカキャラを演じていました。こんなに身体能力が高いのなら、『共助』でもヒョンビンと一緒に活躍させればよかったのに! と思ってしまうぐらい、アクションをがんばっています。それも、スーパーウーマンのアクションではなく、事務服ベスト姿のお姉さんがやるのですから、見ている方はもうハラハラドキドキ。途中で忘れずに笑いも入っていて、屋上を逃げ惑ったり、逃げ遅れた人の心配をしたりするヨンナムとウィジュに、ついつい「ガンバレ!」と声を掛けたくなってしまいます。
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そして、本作のラスト近くには、ドローンを使ったさらなる見どころが。こんなにドローンの使い方のうまい映画は、2年ほど前に見た香港のフェイク・ドキュメンタリー映画『気象および意思としての雨』(2014)以来です。韓国では、一般の人々の間でもドローン操縦が盛んなのでしょうか。感動して目がうるむぐらいの名場面が出現していますので、ドローン好きの方はお楽しみに。
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ベタなファミリードラマ部分がうるさすぎ、とか、チョ・ジョンソクが太った(笑ー幸せ太り? しかしふっくらしてもアクションは見事!)とかいう弱点もあるものの、大いに楽しめる作品として大推薦したいと思います。今夏の旅行中、シンガポールや香港でも間もなく公開予定で、『EXIT イグジット』の予告編をたびたび見せられたのですが、こんなに面白い作品だったとは知りませんでした。香港で拾ってきたチラシの画像も付けておきますので、1ヶ月後にぜひ劇場に足をお運び下さいね!
私、お父さん役の方、大好きです(*^-^)
初めてこちらのブログを拝読しました。
また、立ち寄りたいと思います。よろしくお願いいたします。
『EXIT』は今でも思い出し笑いが出るほどで、なぜかなさけなーいチョ・ジョンソクの姿ばかり思い出されます。
お父さん役、というのは、パク・インファン(またはイナン)でしょうか?
彼の演技は1998年の『クワイエット・ファミリー』の時から見ていますが、「大好きです」とおっしゃる方に出会ったのは初めてです。
お知りになったら喜ばれるでしょうね~。
韓国映画は他にもいっぱい紹介していますので、またご訪問下さいませ。