アジア映画巡礼

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『バーフバリ 王の凱旋』公開まで秒読み!シリーズ<2>戦うプリンセスに注目!

2017-12-01 | インド映画

本日夜より、『バーフバリ 王の凱旋』の本予告編が解禁となりました。もぉぉぉぉぉのすごーーーーーく格好イイィィィィ予告編です。まずはご覧になって、のけぞって下さい

「バーフバリ 王の凱旋」予告編

すばらしいシーンがいくつも組み込まれているのですが、いわばこれは「武勇編」にあたり、見どころとなるアクションシーンの片鱗が満載されている予告編です。先日リリースされた、下の本チラシと同じイメージですね。


『バーフバリ 王の凱旋』「武勇編」の中心となるのは、アマレンドラ・バーフバリとその妻デーヴァセーナです。特にデーヴァセーナは、『バーフバリ 伝説誕生』(2015)では下写真のような、露天の牢獄につながれたみすぼらしい中年の女性として登場したので、『バーフバリ 王の凱旋』での気高く美しい、かつ武勇にも長けたプリンセス・デーヴァセーナの姿には、目が覚めるような思いがします。

 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

デーヴァセーナ(アヌシュカ・シェッティ)は、アマレンドラ・バーフバリ(プラバース)、つまりシヴドゥことマヘンドラ・バーフバリ(プラバース二役)の父が旅先で見初めた女性で、クンタラ王国の王の妹であるプリンセスです。アマレンドラ・バーフバリは、カーラケーヤ部族との戦いに勝利した後、シヴァガミ妃(ラムヤ・クリシュナ)によって次のマヒシュマティ国王に選任されるのですが、即位する前に各地を回って視察してくるよう命じられ、カッタッパをお供にして旅に出ます。その時に出会ったデーヴァセーナー姫と結婚し、のちに息子マヘンドラ・バーフバリが生まれたものの、その赤ん坊が『バーフバリ 伝説誕生』の冒頭のようにシヴァガミ妃に抱かれて逃げ延びざるをえなかったのはなぜか、というストーリーが、『バーフバリ 王の凱旋』のメインとなるのです。これは、「カッタッパはなぜアマレンドラ・バーフバリを殺したのか」の答えであり、また、「なぜデーヴァセーナは牢獄につながれ、現在の王バラーラデーヴァ(ラーナー・ダッグバーティ)からひどい扱いを受けていたのか」という疑問の答えともなっています。

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予告編にもあるように、デーヴァセーナ姫の初登場シーンは実に鮮やかです。襲ってきた盗賊団の一味を、見事な剣さばきで一瞬のうちにけちらしてしまうデーヴァセーナ。その姿に一目で惚れてしまうアマレンドラ・バーフバリ。さらには、その後の映像に出てくるように弓も得意です。インド人観客には、『バーフバリ 伝説誕生』で「デーヴァセーナ」という名前を聞いた時から、こういったシーンがおぼろげにイメージされていたのでは、と思います。デーヴァセーナとは「神の(デーヴァ)軍隊(セーナ)」を意味し、軍神スカンダ(=カールティケーヤ/カールッティケーヤ)の妻の名前なのです。スカンダはガネーシャと共にシヴァ神の息子とされ、南インドではスブラマニアと呼ばれています。また、タミル地方で一番人気のある神様ムルガンとも同一視されており、デーヴァセーナという名前を聞くと、こういうイメージが一度に思い浮かんできます。

Devasena 

Murugan and His Two Wives - valli and Devasena

上の図像のうち、小さな方がWiki"Devasena"から取った図像で、有名な19世紀末の画家ラージャー・ラヴィ・ヴァルマーの手による「孔雀に乗る6つの頭のカールティケーヤ」です。向かって右側、カールティケーヤの左足の膝に座っているのがデーヴァセーナで、向かって左はもう1人の妻ヴァッリです。ムルガンが描かれる時もこの2人の妻が一緒に描かれている図像があり、下の大きな画像は"Murugan and His Two Wives - Valli and Devasena or Devayani"というサイトから借用しました。アマレンドラ・バーフバリには「2人の妻」というモチーフは採用されなかったのですが(笑)、デーヴァセーナと結婚したシヴァ神の息子スカンダ=カールティケーヤ=スブラマニア=ムルガンと重なるイメージは、前回こちらの記事でお伝えしたような、シヴァ神へとつながっていくものとなります。

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デーヴァセーナは武勇に優れていただけでなく、王族としてのプライドも高く、強い心を持ったプリンセスでした。その強さが、マヒシュマティ王国にある転換をもたらし、デーヴァセーナとアマレンドラ・バーフバリに別の意味での戦いを強いることになります。それが『バーフバリ 王の凱旋』の、後半の見どころにもなっています。その戦いの描写はアイディア満載でなかなかに面白く、S.S.ラージャマウリ監督の真骨頂というか、このシーンは120%楽しんで撮っているな、と思わせてくれるのですが、最終的にはアマレンドラ・バーフバリは亡くなり、デーヴァセーナは王宮の囚人として、25年間鎖につながれる身となってしまうのです。

 

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『バーフバリ 伝説誕生』の時から、囚われの身にも負けずにバラーラデーヴァに呪いの言葉を放っていたデーヴァセーナですが、あの”小枝を集める”という描写にも感心させられました。「小枝を集めたりする愚かなことはやめて下さい」と言い、逃亡を勧めるカッタッパに、「今に息子が助けに来てくれる。これは弔いの準備。集めた小枝に火を付け、バラーラデーヴァの血と肉を灰にしてやる。生きたまま焼き殺すのだ」と言うデーヴァセーナ。ヒンドゥー教徒の生涯は最後の火葬で終わるのですが、その時に使う薪は太い丸太状のものです。太い薪とはまったくかけ離れた小枝ながら、それが集められた牢獄の一部からは、今にも火葬の煙が立ち上ってきそうな感じが押し寄せてきます。何と上手なイメージ誘導だろう、と監督の手腕に感心したのでした。

 

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こんな風に、常に戦いの中に身を置くプリンセス、デーヴァセーナ。国母シヴァガミや女性戦士アヴァンティカ(タマンナー)とはまた違う、美しく強い女性像を、『バーフバリ 王の凱旋』ではたっぷりとご覧下さい。ところで、あの小枝はどうなったかって? それもラストで登場しますので、じっくりとご覧いただきたいのですが、このラストシーンには『バーフバリ 王の凱旋』冒頭のシーンもからんできます。シヴァガミ妃と嫁のデーヴァセーナが重なる瞬間、どうぞお見逃しなく! 『バーフバリ 王の凱旋』の公式サイトはこちらです。『バーフバリ 伝説誕生』のリバイバル上映をやって下さる劇場さんも日に日に増えていますね。首都圏でもぜひお願いします!! 12月29日(金)の公開まで、いよいよあと4週間です。ジャイ・マヒシュマティ!

 


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