アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ヒンディー語映画@チェンナイ

2019-03-23 | インド映画

チェンナイには、ヒンディーワーラー(ヒンディー語話者、ヒンディー語が母語の人)もたくさん住んでいます。そんな人たちがヒンディー語を話すのが聞けるのは、ヒンディー語映画の上映されている映画館です。21日には公開早々の『Kesari(サフラン色)』をAGSシネマに見に行ったのですが、その時通路を挟んで向こう側に座っていらした50代・60代と見える女性4人は、映画が始まるまで楽しそうにヒンディー語でおしゃべりしてらっしゃいました。映画終了後に外に出てウーバーを待っていると、1人の方の運転する車に待っていた2人の方が乗り込み、もう1人の方は運転手が運転する車に乗り込んで帰っていかれました。車は別の方角に行ったので、「映画の後はお茶して、映画の感想言い合いましょ」ではないのねー、と思ったのですが、確かに『Kesari/ケーサリー』は感想を言い合いたい映画ではありませんでした...。

Kesari poster.jpg

『Kesari』はイギリス統治時代の実際の事件に基づいています。1897年の「サーラーガリーの戦い」と呼ばれるこの戦いは、イギリス軍兵士であるシク教徒21人が守る砦を1万人を超えるアフガン人(パシュトゥー族)が攻撃した事件で、もちろん多勢に無勢、最後にシク軍団は全滅します。物語は最初、シク教徒軍団がこの砦に派遣される前に所属していた、グリスターン砦でのイギリス軍将校とシク教徒軍団のいろいろな確執から始まり、やがてイシャール・シン(アクシャイ・クマール)を指揮官とする21名がサーラーガリーの砦に派遣されるまでが描かれます。グリスターン砦ともう一つの拠点ロックハート砦の間が離れすぎていて、鏡による光通信ができないことから、中間地点のサーラーガリーの砦にも最低限の人員を割くことになったようで、この光通信がかなり正確に戦況を伝えたため、サーラーガリーの戦いも事実が記録されているのだとか。いろいろドラマを盛り上げるために個々人の生前のエピソード、そして死に様が描かれていくのですが、アクション映画としての面白さは多少あるものの、壮絶な死を次々と見せられてるとだんだん意気消沈してきて、ラストなどは「うう、もういいです...」状態でした。下が予告編です。

Kesari | Official Trailer | Akshay Kumar | Parineeti Chopra | Anurag Singh | 21st March

「サーラーガリーの戦い」再評価が始まったのは2000年頃かららしく、右翼勢力の台頭と共にいろんな愛国エピソードが掘り起こされ、ヒンドゥー教徒だけでなくシク教徒もそれに組み込まれたということなのかも知れません。題名の『ケーサリー』は予告編にも登場しているように、カーキ色のターバンから主人公がサフラン色のターバンに変えて戦いに挑む、ということで付けられています。この色が登場するまでは、画面は本当にカーキ色(ウルドゥ語の「カーク、ハーク(土埃)」が語源)一色で、文字通り色気のない世界です。フラッシュバックや幻想シーンで、イシャール・シンの故郷の村が登場し、恋人(パリニーティ・チョープラーの特別出演)が出てくることでかろうじて潤いが生まれていますが、口の中がじゃりじゃりしてくるような作品でした。監督は、これまでパンジャービー語の作品を撮ってきたアヌラーグ・シンという人で、これがヒンディー語映画デビューです。共同脚本も担当していますが、イギリス軍将校やアフガン人指導者の描き方も底が浅く、アクシャイ・クマール主演作と言えども100カロール(10億ルピー)超えは難しいかも知れません(でも、インド人、愛国映画好きだからなあ...)。

Akshay Kumar in Kesari (2019)


もう1本、全然期待しないで見たのが『Total Dhamaal(大騒ぎ総集編)』。ところが、これがバカバカしいながら案外楽しめて、ベタなギャグに大笑いさせてもらいました。館内には子供たちも多かったのですが、動物もいっぱい登場したので、きゃっきゃとかわいい声を上げていました。

Total Dhamaal poster.jpg

主人公は、4組のわけありの人たち。離婚を考えているアビナーシュ(アニル・カプール)とビンドゥ(マードゥリー・ディークシト)。離婚のためには子供の了解を得ないと、というわけで、寄宿学校にいる子供の元に向かいます。けちな悪党グッドゥ(アジャイ・デーウガン)と、その相棒の老人ジョニー(サンジャイ・ミシュラー)は、警察幹部(ボーマン・イーラーニー)がワイロで大金を受け取った現場に踏み込み、スーツケース2つに入ったそのお金5億ルピーをいただいてしまいます。ところが、運転手にそれを持ち逃げされ、骨折り損のくたびれ儲け。消防士だったラッラン(リテーシュ・デーシュムク)は、火事場の人命救助もワイロ次第という行為をやってクビになり、相棒と共に行き当たりばったりでオンボロヘリに乗る羽目に。また、アーディ(アルシャド・ワールシー)とちょっとおつむの暖かい弟マーナヴ(ジアーヴェード・ジャーフリー)もやることなすことが裏目に出て、砂漠をさまよいボロボロに。こんな4組が5億ルピーを持ち逃げした転手の死に目に遭遇、「お金は動物園のOKの下にある」という遺言を聞き届けます。4組はいずれも一番乗りをしようと動物園に急ぎますが、そこでは女性経営者(イーシャー・グプター)がその地方の大物(マヘーシュ・マーンジュレーカル)に動物園の土地をだまし取られようとしていました。大物は毒入りの食べ物で動物たちを始末し、土地を再開発しようとしていたのです。その現場に遭遇した4組は、サルに象に虎、ライオンやサイなどの動物たちを助けようと奮闘します...。

Total Dhamaal | Official Trailer | Ajay | Anil | Madhuri | Indra Kumar | Feb. 22nd

この宝探しゲーム、前にも「Dhamaal」シリーズだったか「Golmaal」シリーズだかで見たことがある気がするのですが(サンジャイ・ミシュラーがそれにも出ていて、椰子の木の下だったかに宝が、という設定だった)、たくさんの出演者をうまくさばき、動物たちの出番まで考えた演出は、さすがベテランのインドラ・クマール監督。今回はほとんどの場面をCG使用で処理し、「ありえへん!」冒険を出演者たちにさせています。CGとわかっていても面白い場面が多く、観客も大笑い。美男美女コンビのアニル・カプールとマードゥリー・ディークシトも、車で余部(あまるべ)の鉄橋みたいな(?)木橋は渡らされるは、川に流され滝からも落下させられるはでさんざんですが、他のコメディアン組に負けずにがんばっています。アジャイ・デーウガン始め、他のコメディアン組は余裕でアホなことをやってくれ、中でもサンジャイ・ミシュラーはいちいちセリフに「Bro(兄弟)」をつけるアメリカかぶれ男を演じて、演技巧者の面目躍如。とっても楽しかったです。

Madhuri Dixit, Ajay Devgn, Javed Jaffrey, Anil Kapoor, Arshad Warsi, Sanjay Mishra, Boman Irani, and Riteish Deshmukh in Total Dhamaal (2019)

ところで、前にも書いたように、『Total Dhamaal』を見たエスケープ・シネマでは国歌演奏フィルムの上映が皆無だったのですが、『Kesari』を見たAGSシネマでも「♫Jana Gana Mana...」はありませんでした。なぜなのか、昨日ラージーヴ・メーナン監督に聞いてみればよかった...。タミル・ナードゥ州にお住まいで、実態やその理由をご存じの方、ぜひご教示下さい。



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