熱い日本を逃れ、タイのバンコクに来ています。バンコクも昼間は32、3度ぐらいになるのですが、湿度が低いのと風があるのとで、外を歩いていてもそんなに暑い感じがしません。ここ数年、毎年この時期は、バンコクの方が涼しいです。
いつもなら8月の初めから来ることが多いのですが、今回8月後半にしたのは、プラバース主演の『Saaho(勇気)』が8月15日から公開予定だったから。ところが公開まで1ヶ月を切ってから、「公開日は8月30日に延期」と変更になってしまって、まったく、インド映画ったら! と怒ってみたものの仕方ありません。そんな訳で、同じ8月15日公開のアクシャイ・クマール主演作『Mission Mangal(ミッション「火星」)』を見てきました。くやしいことに、本編上映前とインターバル後の再開時に『Saaho』の予告編が2度も流れるではありませんか。バンコクではヒンディー語版が公開されるようで、下の予告編が英語とタイ語字幕付きで流れました。
SAAHO Trailer | Prabhas, Shraddha Kapoor, Neil Nitin Mukesh | Bhushan Kumar | Sujeeth | Vamsi Pramod
プラバースのこの声、本人みたいに聞こえますね。テルグ語映画界の皆さんはヒンディー語も達者なので、プラバース本人のアフレコかも知れません。劇場で見た時アッと思ったシャワーシーン、やっぱり全裸ではなかったです(笑)。
で、『Mission Mangal』ですが、こちらはちょっと期待外れでした。これも実話を元にしていて、「火星探査機ミッション(Mars Orbiter Mission/MOM)」と呼ばれる研究開発に従事した科学者たちのお話です。冒頭、2010年のベンガルール(バンガロール)で、インドが宇宙探査ロケットを飛ばそうとして失敗。責任者のラーケーシュ・ダワン(アクシャイ・クマール)が査問に付され、チーフ研究者のターラー・シンデー(ヴィディヤー・バーラン)が自分の判断が甘かったと責任を感じて悔やむシーンが出てきます。そこから、火星探査に切り替えてはどうか、ということになったものの、完全に成功しないミッションと上部からは見なされ、冷や飯食い扱いを受けます。ターラーは主婦業の知恵から、少ない予算で火星に探査機を飛ばすには、と計画を練っていきますが、研究所は古い建物の倉庫みたいなところで、さらに希望していた研究者たちは誰も回してもらえず、その下にいる経験の浅い研究者ばかり回されてきます。
配属されてきたのは、本当はNASAに行きたいエカー・ガーンディー(ソーナークシー・シンハー)、自動車免許講習ですらあぶなっかしいクリティカー・アガルワール(タープシー・パンヌー)、ケーララ出身の新婚で、姑から早く子供を作れと嫌みを言われているワルシャー・ピッライ(ニティヤ・メーナン)、夫の浮気により離婚したばかりで、ホステル住まいのネーハー・シッディキー(キールティ・クルカルニー)という若い女性陣のほか、何かというと占いに頼る奥手の男性パルメーシュワル・ナーイドゥ(シャルマン・ジョーシー)、そして老科学者のアナンタ・アイヤル(H.G.ダッターレーヤ)という面々。みんなそれぞれ専門分野に関しては凄腕なのですが、いかんせん経験がない上に今回のミッションを単なる仕事としてしか捉えていないため、ラーケーシュやターラーとは温度差がありあり。これらの研究者をまとめ、火星探査機が火星に一番行きやすい時期に照準を合わせてミッションを遂行するのは、ほとんど不可能に思えました。
さらに、ターラーには家庭があり、心配性の夫(サンジャイ・カプール)と大学生の娘、音楽家を目指す息子と体の不自由な舅まで抱えていました。楽天的な肝っ玉母さんのターラーですが、迫り来るタイムリミットを前に、スタッフもワルシャーが妊娠してやめると言い出したり、クリティカーの軍人の夫が負傷したりと、次から次へと問題が出来します。これも楽天的なラーケーシュと共に何とか解決するうちに、いよいよロケットが完成、打ち上げの日が迫りました。ところが今度は、続く長雨に雷雨まで加わって、打ち上げは延期また延期。明日をはずすと後がない! ミッション「火星」は成功するのでしょうか...。
最初話を聞いた時には、これはサクセスストーリーとしてきっと上出来の映画になるに違いない、と思ったのですが、どの人の役もいまいちで、パンチに欠ける映画になってしまいました。エピソードの詰め込みすぎかも知れません。ターラーが台所仕事で、ガス節約のためにプーリーを余熱で揚げることからヒントを得て、ロケットエンジンの燃料節約を考えつくなど、「おお!」と思うシーンもいくつかあるものの、対する悪役(?)としてNASA帰りの上司(ダリープ・ターヒル)を配するなど、古くさい手法も鼻につきます。脚本には『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)のR.バールキ監督も参画しているのですが、それだけにフェミニズムにもこだわったりしたのが裏目に出たのか...。もっとドキュメンタリータッチにした方がよかったかも、です。アクシャイ・クマール主演作は、ここのところ『パッドマン』そして『KESARI/ケサリ』(2019)と日本公開が続いたので、出来がよければと期待していたのですが、これではどうでしょうかしらん...。監督は、これがデビュー作となるジャガン・シャクティです。予告編を付けておきます。
Mission Mangal | Official Trailer | Akshay | Vidya | Sonakshi | Taapsee | Dir: Jagan Shakti | 15 Aug
ところで、8月16日(金)公開の『KESARI/ケサリ』は、皆さんもうご覧いただけましたでしょうか。これも1週間限定公開だったなんて、うっかりしてこのブログでお知らせするのを忘れてしまいました。ごめんなさい! ブログとはまた別の内容を加えて、「BANGER!!!」でご紹介しましたので、こちらもぜひご覧下さい。