外出自粛の期間中に、ネットフリックス(略称ネトフリ)のお世話になった方は多いはず。先日、何かのネットニュースになっていたのですが、この間のネトフリで一番人気が高かったのは韓国ドラマ「愛の不時着」で、二番目が「梨泰院(イテウォン)クラス」だったのだとか。私も、YouTubeでお笑い芸人たちがリモート飲み会しながら、「梨泰院クラス」についてしゃべっているのを見てびっくり。思いがけぬ韓流ブーム復活ですね。お仕事系ドラマ大好き人間の私も「梨泰院クラス」にハマったクチなのですが、あの主役パク・セロイを演じたパク・ソジュンの主演映画が公開されます。公開はだいぶ先、8月14日(金)からではあるものの、シネマート新宿での上映なので、この機会にご紹介してしまうことにしました。タイトルは『ディヴァイン・フューリー 使者』で、「神の怒り」というタイトルからもわかるように、神と悪魔との闘いの物語です。まずは、映画のデータをどうぞ。
『ディヴァイン・フューリー 使者』 公式サイト
2019年/韓国/韓国語/129分/原題:사자/英語題:THE DIVINE FURY
監督・脚本:キム・ジュファン
主演:パク・ソジュン、アン・ソンギ、ウ・ドファン、チェ・ウシク
配給:クロックワークス
※8月14日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
物語の始まりは、主人公パク・ヨンフの幼い頃の思い出から。ヨンフの父は警察官で、キリスト教信者でもあったため、毎日曜日にはヨンフを連れて教会へ通っていました。ヨンフの母は出産の時亡くなったのですが、それがヨンフには納得できず、「何でも願いをきいて下さるはずの神様」がなぜ、といつも疑問に思っていました。そして、父が夜間の交通取締りの時に車にはねられ、帰らぬ人となったことで、ヨンフの中では神への信仰は一切失われてしまいます。成長したヨンフ(パク・ソジュン)は格闘技選手として活躍、ロスで行われた試合にも快勝して、負けなしを誇っていました。ところが、韓国への帰国便の中でヨンフは悪夢にうなされ、目覚めてみると右の手のひらに鋭いものが刺さったような跡ができ、出血していました。それからというもの、夜になると悪夢にさいなまれ、右手が出血するくり返し。医師に診てもらってもらちがあかず、知人が教えてくれた占い師を訪ねたところ、「悪霊がついている。家の南方に十字架があるから、そこに助けを求めなさい」と言われます。
その場所、教会に行ってみると、バチカンからやってきたアン神父(アン・ソンギ)と、若いチェ神父(チェ・ウシク)とが、ある男の悪魔払いをしている最中でした。あまりにも強力な悪魔の力に、チェ神父は逃げ出しますが、ヨンフが右手を男の体に当てると、そこから炎が上がります。ようやく男を鎮めたアン神父は、ヨンフの右手の傷は「聖痕」、つまり、イエス・キリストが十字架に打ち付けられた時の釘が貫通した痕だ、と言います。悪夢の話をすると、アン神父はヨンフの自宅にきて鎮めの祈りをしてくれ、その晩ヨンフは久しぶりに安らかに眠りました。こうしてヨンフは、いまだ神は信じられないながらも、アン神父の悪魔払いの手助けをするようになります。アン神父の話では、「闇の司教」(ウ・ドファン)がソウルにいて、人々を悪魔化させている、とのこと。若い女性や、修道院の養護施設にいる男の子が悪魔憑きになり、アン神父とヨンフは現場に出かけていきますが...。
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昔、大ヒットしたハリウッド映画『エクソシスト』(1973)を思い出させる作品ですが、「聖痕」を使ったところが、アジア映画としては新しいかも知れません。それから、『エクソシスト』時代にはなかったCGやVFXをふんだんに使えるので、悪魔憑きシーンは結構な迫力となっています。本作では特に臓器や血などが大盤振る舞いで、それが恐いというか気持ち悪いというか、目をつぶりたくなるシーンが何カ所かありました。今回はネット試写でパソコンの小さな画面で見たため、まあまあOKだったのですが、昨年夏にシンガポールで見た時は大画面だったことから、恐怖に震えた憶えがあります。苦手な方は、注意してご覧になって下さい。さらに、悪魔側の生成過程が何の説明もされていないうえ、「あれは何だったの?」というシーンも多くて、見終わってスッキリ、の作品ではありませんでした。
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その分、俳優陣は熱演で、特に我々オールドファンには『風吹く良き日』(1980)や『鯨とり』(1984)等々の韓国映画ニューウェーブ作品でお馴染みのアン・ソンギは、ほぼ出ずっぱりの大活躍。アクションもこなし、痛めつけられるシーンも何のその、その一方で、パク・ソジュン相手にそこはかとないユーモアが潜むセリフも見事にきめて、とても68歳とは思えません。バチカンからやってきた神父という設定なので、ラテン語の祈祷文句も次々と唱えるのですが、韓国人はキリスト教徒が多くてラテン語にも慣れているとはいえ(カトリックではミサの中で、神父が短いラテン語の文章を唱えたり、聖歌にも「♫グローリア・イン・エクセルシス・デーオ」というラテン語の歌詞が入っていたりする)、英語とは違うので、いかに韓国外国語大学出身のアン・ソンギといえども大変だったことでしょう。
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パク・ソジュンは、本作を昨夏見た時は『ミッドナイト・ランナー』(2017)と比べると大人になったなあ、という感じがしたのですが、今回、「梨泰院クラス」を見たあとで見直してみると、もっといろいろ演技のできる人だと思うのにもったいない、と感じてしまいました。本作の監督・脚本は、『ミッドナイト・ランナー』の監督・脚本も担当したキム・ジュファンなのですが、アン・ソンギ御大に気を遣いすぎて、脚本構成力&演出力が鈍ったのかも知れません。とはいえ、最初の方の格闘技シーンや、ラスト近くのアクションシーンは、高い身体能力を生かして見応え十分。今後、華を背負ってスクリーンで暴れられるスターとして、引く手あまたになるかも知れません。パク・ソジュンのほか、悪魔側のボス役であるウ・ドファンも、そしてチェ神父役で出番は少ないながらラストシーンで目立っていたチェ・ウシクも、若手スターはみめ麗しい実力派を揃えてあって目の保養になります。そうそう、本作より前に公開された『パラサイト』(2019)では、チェ・ウシクとからんでパク・ソジュンが一瞬ゲスト出演していましたが、本作ではその反対だったわけですね。チェ・ウシクの「ラストシーン」は、主要クレジットタイトルが出てからの登場となりますので、見逃さないよう気をつけて下さい。見逃すな、と言えば、「梨泰院クラス」のキャストの1人も意外なシーンで登場しますので、ご注意下さい。
最後に、日本版予告編がまだのようなので、「特報」と、「インターナショナル版予告編」を付けておきます。今夏はきっと暑いと思うので、『ディヴァイン・フューリー 使者』でぜひ暑気払いを! 夏が待ち遠しいですね。
『ディヴァイン・フューリー/使者』特報
The Divine Fury Trailer #1 (2019) | Movieclips Indie
<追記>
「梨泰院クラス」にハマっている間にいろいろYouTubeも検索したのですが、パク・ソジュンは自分のチャンネルも持っているのですね。あの髪型が決まるヘアカットシーンを付けておきましたが、江戸時代の子供の髪型「芥子坊主」を連想させるようなこのヘアスタイル、セロイの役にぴったりでした。10数年も変えないなんて、頑固な男です(笑/あの短さではエクステもムリだし、女優陣のような変身は望めません)。『ディヴァイン・フューリー 使者』では、粋な七三分けを見せてくれますので、ご期待下さい。