アジア映画巡礼

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TIFF DAY 7 今日は『チェイス!』の日

2014-10-29 | インド映画

本日は、TIFFの特別招待作品であるインド映画『チェイス!』の記者会見が午前11時30分から1時間行われ、続いて午後1時45分から、上映前の舞台挨拶が約20分間行われました。登壇したのは、主演のアーミル・カーンとヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督です。今日はまず、記者会見の模様からお伝えしましょう。

最初に、ひと言ご挨拶を、という司会者の言葉で、アーミル・カーンと監督がそれぞれ第一声を。

 

アーミル:日本に来ることができて、とても嬉しく思っています。本当に、来てみたかったんです。もちろん、東京国際映画祭に参加したかった、というのもあるんですが、実は今回一緒に来日している妻と共に、この後1週間ほど東京に滞在するので、それもあってワクワクしています。

 

監督:オハヨウゴザイマス(拍手)。これだけしか日本語はわからないのですが、今回来日できて本当に嬉しいです。私はいろいろ映画を見ることで映画製作を学んだのですが、黒澤明監督、それから三池崇史監督の作品をよく見ました。そんなわけで、日本に初めて来ることができて、そして映画祭に参加することができて、とても嬉しく思います。皆さんにこの映画を楽しんでいただければ幸いです。

 

Q:アーミル・カーンさんの『きっと、うまくいく』が昨年ヒットしたので、お会いできるのが楽しみだったんですが、来日なさっての印象と、日本でどんなことをなさりたいのかについて教えて下さい。

 

アーミル:『きっと、うまくいく』が日本でヒットしたということを聞いて、とても嬉しかったです。実は僕に気づいて声を掛けて下さる方がいて、この作品を気に入って下さったんだな、と今回来日して実感しました。日本でやりたいことについてですが、僕の妻は計画魔で(笑)、旅行前にあれこれリサーチするんです。それで、東京のこととか、行くべき所、するべきことをすでにリストアップしていまして、楽しみにしています。妻は京都に行きたいとも言っていたのですが、今回は1週間しかないので東京を楽しむことにしよう、また次に来た時に京都とかほかの場所に行けばいいじゃないか、と言いました。

 

Q:監督は何か計画がおありですか?

 

監督:私は今週末までしか滞在しないのですが、おいしいものを食べるのが好きなので、おいしいレストランを巡りたいと思っています。次回は家族を連れてきて、ゆっくり回ってみたいですね。

 

Q:『チェイス!』はインドだけでなく全世界でヒットしたのですが、その理由は何だと思われますか?

 

監督:いい映画だったからではないですか?(笑)基本的にインドの映画というのは、感情表現が巧みなのです。『チェイス!』もアクション満載の作品ですが、心を動かすドラマが盛り込まれています。そういったところが、言葉の壁や国境を越えて、外国でもアピールしたのではと思います。

 

(ここでアーミル・カーンが、「僕にもちょっと言わせて」と参入)

 

アーミル:『チェイス!』の人気には驚きましたね。成功してよかったと思います。実は、映画が公開されるまでは本当にナーバスになってしまうんですよ。悪い点が目について、もう一度やり直せるものなら撮影をし直したい、と思ってしまうのが常です。そんな状態なので、皆さんが映画を喜んで見て下さるととっても救われるんです。その点、『チェイス!』はインドだけでなく、世界中の人が楽しんでくれました。それは今監督も言ったように、スペクタクル傑作ではあるものの、観客の感情に訴えるところがあるからだと思います。インド人観客の心の琴線に触れるもの、それが世界中の観客にも同じように響いたのではないでしょうか。

 

Q:アーミル・カーンさんの主演作は『ラガーン』とか『1947年 大地』とかよく見ています。お聞きしたいのは、日本でのロケとか、日本との合作とかについていです。日本映画のリメイクも含めて、そういったことは考えていらっしゃいませんか。

 

アーミル:機会があれば、そして自分に合った作品があればぜひ、とは考えています。日本の作品に出演する、ということも、それから共同製作ということも含めてですね。おっしゃったように、日本の作品のリメイクをインドで作るということも考えられますね。帰国したら可能性を探ってみようかな、と思っています。それから、私の過去の作品をいろいろ見て下さっていて嬉しく思います。

 

Q:アーミル・カーンさんは『きっと、うまくいく』ですごく若い役を演じるとか、いつも難しい役に挑戦してらっしゃいます。トップスターなのに、難しい役に挑戦なさるのはなぜでしょう? また監督にうかがいたいのですが、撮影中にアーミルさんに関して、さすがはトップスターだ! と思われたエピソードがありましたら教えて下さい。

 

アーミル:(質問の英訳が少々長かったので)えーっと、僕への質問忘れちゃった。(笑) 『きっと、うまくいく』はラージクマール・ヒラニ監督の作品で、脚本を読んだ時とても気に入ったのですが、こんな若い役ができるかな、観客に笑われるのでは、と躊躇しました。でも監督は絶対僕に、と譲らなくて、それでは監督の直感を信じてやります、ということでチャレンジしたわけです。幸い成功して、いい作品になってよかったと思います。
 僕が作品を選ぶ時は、まずストーリーありき、なんです。最初に観客として脚本を読んでみて、惹かれる所があるかどうかを判断し、それから俳優として脚本を読んでみて、キャラクターの中に自分が飛び越えるべき新しいチャレンジ要素があるかどうか、という点で判断して作品を選んでいます。

 

監督:アーミルはまず、スター気取りが全然ないのです。私から見ると、彼は”監督の大親友”という存在ですね。『チェイス!』の彼の役は、すごく強い部分と繊細な部分を持っている難しい役なんですが、彼はそれを努力などしていないように、役作りの上でいとも簡単に演じているかのように見せて演じてしまうんです。そこがまず、すごいスターだな、と思わせられる点ですね。あと、彼はチームワークを大切にします。映画というものは1人では作れない、チームで作るものですが、彼はそれがわかっている人です。また、子供のようにワクワクして、演じるのが楽しいということを表に出せる人でもあります。今回一緒に撮影ができて、素晴らしい経験になりました。

 

Q:アーミル・カーンさんにお聞きしたいのですが、さっき監督が”親友のような存在”と言ってらっしゃいましたが、アーミルさんから見て監督とはどういう方か、ということを聞かせて下さい。それから監督は、黒澤明監督と三池崇史監督が好きだとおっしゃっていましたが、具体的にどんな作品がお好きか教えて下さい。
(その後、司会者の方からアクションについての追加質問が入りました)

 

アーミル:監督はすごく要求の高い人です。でも、彼のその監督としての資質が、僕の演技を引き出してくれたと思っています。彼のことは”ヴィクター”と呼んでいるんですが、自分が何を撮りたいのかというヴィジョンが正確にある人ですね。とてもオープンで暖かい人ですし、セットの誰にでも平等に接するので、現場の雰囲気もよかったです。あと、監督にはユーモアのセンスがあるんですよ。だから、撮影中もハッピーな気分で撮影ができました。今回初顔合わせでしたが、今では友だちのような関係になっています。

 

監督:まず、アクションについてですが、今回の作品は完成までに3年かかりました。今、皆さんに見ていただいて気に入っていただいてる、ということをとても有り難く感じます。アクションは現実にはありえないことを見せるわけで、現実の世界ではバイクに乗って自動車を飛び越える、なんてことはないですよね。それを見せるためには、一つの世界を作り出さないといけない。ありえないことでも、観客には、その役者が実際にそうやっていると思わせないといけないわけです。ですので緻密に計画を立てて、アクションを撮っていくことを重要視しています。アクションで失敗してしまうと、見た目上致命的になってしまうため、アクションには一番力を入れています。
 特撮は今回、ハリウッドのチームに協力してもらうことができました。撮影場所がシカゴでしたから、アメリカのチームと一緒に作り上げることができてよかったです。観客の皆さんはアクション好きだと思うので、この作品を見て気に入っていただけると嬉しいです。
 日本の監督については、先ほど黒澤監督と三池監督の名前を挙げたのですが、ほかに北野武監督も大好きで、監督と役者の両方をやっている、表面では何を考えているのかわからないのだけれども、ある瞬間バッと爆発させる、そういうキャラクターにとても惹かれています。好きな作品は、『七人の侍』に『乱』、そして一番好きなのが『用心棒』です。『用心棒』は、自分もああいう作品が作れたらなあ、と思っています。ただし、三船敏郎のような役者がいればですけれどね。(笑)あと、あまり知られていないと思いますが、黒澤監督の『天国と地獄』がインドで作られて、ヒンディー語の『イムテハーン(試練)』『インカール(拒絶)』という作品になっているんですよ。ですから、インドでは黒澤作品は身近な存在でもあります。
 三池監督作品では『スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ』が好きですし、そのほか、溝口健二監督、宮崎駿監督も好きです。宮崎監督は本当に天才的な監督ですね。

 

(ここで司会者が「それではこれで質問を終わって...」と言ったところ、まだ手を挙げる人があり、アーミルが「この方に当ててあげたら? さっきからずっと手を挙げてるよ」と進言して、異例の追加質問に)

 

Q:インドのナレンドラ・モーディー首相が先月来日しました。モーディー政権になって大きなインドが実現することを我々も望んでいますが、過去においてはインドの多文化社会ではいろんな事件がありました。アーミルさんはイスラム教徒であるわけですが、モーディー政権にどんな期待を持っていますか。

 

アーミル:インドも様々な問題を抱えており、それぞれ立場の違う人たちが存在しています。私は確かにインドではマイノリティに属していますが、何よりもまずインド人である、という自覚を持っています。モーディー首相も民主的な手続きを経て首相に選ばれました。ですから国民も期待を持っているわけなので、それに応えていってほしいと思っています。


その後はBMWのバイクが登場。その前での記念撮影となり、記者会見は終了しました。


 (舞台挨拶のご紹介はのちほどまた~) 



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2 コメント

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『天国と地獄』のリメイク (kubo)
2014-10-30 17:18:45
アーミル記者会見の詳細なご報告ありがとうございました。日活サイトのイベントレポートよりもさらに詳しい内容で、興味深く読ませていただきました。
質問された記者の方も『1947年大地』に言い及ぶなどアーミルの映画をよく知っているようで、なかなか充実した会見になったようですね。
ところで、ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督の発言で、一点気になったことがあります。
「黒澤監督の『天国と地獄』がインドで作られて、ヒンディー語の『イムテハーン(試練)』という作品になっている」と語っていますが、これは1977年の『インカール』(Inkaar、日本語訳は『拒絶』?)の間違いではないでしょうか。『イムテハーン』(Imtihaan)という
ヒンディー語映画は1974年と1994年に公開されており、私はどちらも観ていませんが、ウィキペディアで粗筋を読む限り、『天国と地獄』のリメイクとは思えません。
『インカール』の方は観ましたが、これは明らかに『天国と地獄』のリメイクで、あの有名なパートカラーの煙突の煙のシーンも再現されてます(こちらはフルカラーですが)。
『インカール』と1974年版『イムテハーン』はどちらもヴィノード・カンナが主役なので、監督が勘違いしたのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
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kubo様 (cinetama)
2014-10-31 00:32:07
コメント、というかご教示ありがとうございました。

まさに、「ご明察!」でして、今日監督インタビューがあったので確認しようと思い行ったところ(私も昨夜「Imtehaan」2作を調べて疑問に思ったのでした)、本日の通訳の藤井美佳さん(『チェイス!』字幕担当)がちゃんと調べてくれていて、正しくは「Inkaar」だと教えてくれました。
「Inkaar/インカール」はおっしゃるとおり「拒絶」という意味で、監督の勘違いもご指摘のようなことが原因だったみたいです。
藤井さんがそのことを監督に言ったところ、監督は彼女に、「あなたが指摘してくれて助かったよ」と感謝していたとか。
kuboさんの映画探偵ぶりも、藤井さんに劣らずすごいですね。

今日は監督に、三池崇史監督の『一命』のプレスをあげたらとっても喜んでくれました。私も三池監督が好きなので、「インドの同志!」とか思ってしまいます。
次作、もっと規模の小さい作品でもいいから、三池、北野ばりの作品を撮ってほしいですね。役者はもちろん、ナワーズッディーン・シッディーキーで!
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