アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第20回東京フィルメックス:Day 1

2019-11-23 | アジア映画全般

雨の中、始まりました第20回東京フィルメックス。今年はメインのスポンサーが再び変更になり、映画製作等の活動をしているシマフィルム株式会社となりました。京都が本拠地で、社長が志摩さんとおっしゃるからシマフィルムのようです。フィルメックスを応援して下さるなんて、心意気のある会社ですね。


開会式で挨拶したディレクターの市山尚三さんも、感謝の言葉を述べておられました。今回の英語通訳は、『バーフバリ』来日ゲストでお馴染みの松下由美さんです。


今回はもう一つ変更がありまして、審査員長で来日する予定だった香港の映画評論家舒琪(シュウ・ケイ)さんが、香港の厳しい情勢のため来られなくなってしまったのです。それで急遽市山ディレクターが白羽の矢を立てたのが、すでに一度審査員長をやったことのあるロンドン在住映画評論家のトニー・レインズさん。「ほんとについ2.3日前にお話があって、今朝ロンドンから着いたところなんです。時差ボケで、前回やったような安倍首相を揶揄した政治ギャグ挨拶も思い浮かびません(笑)」と笑わせてくれます。そうなんですよ、トニー、まだ安倍首相が続投してるんですよ~。彼が審査員長の時に私も審査員をやらせていただいたのですが、あれが2016年、3年前でした。


他の審査員の皆さんは、イラン女優のべーナズ(「ベフナーズ」の方がいいと思いますが...)・ジャファリさん、カザフスタン女優のサマル・イェスリャーモワさん、そして日本からは写真家の操上和美さん、監督の深田晃司さんという顔ぶれです。女優のお二人は、おきれいでチャーミングでした。ベーナズ・ジャファリさん主演のイラン映画『ある女優の不在』は12月13日(金)から公開予定ですが、今回のフィルメックスでも1回だけ上映されます。


トニー・レインズさんは市山さんとツーカーの仲なので、きっと上手に審査員の皆さんをまとめてくれることでしょう。


開会式のあとは、オープニング作品婁(ロウ・イエ)監督の『シャドウプレイ』が上映されました。作品データは下の通りです。すでにアップリンクの配給により、明年2月の公開が決定しています。今日の会場には、アップリンクの浅井社長のお姿も見えました。

 

『シャドウプレイ』
 2018/中国/中国語/125分/英語題:Shadow Play/原題:風中有朵雨做的雲
 監督:ロウ・イエ(婁燁)
 主演:ジン・ポーラン(井柏然)、ソン・ジア(宋佳)、チン・ハオ(秦昊)、ミシェル・チェン(陳妍希)、マー・スーチュン(馬思純)

開始早々、画面には朝靄が立ちこめたような川縁が映ります。2000年の中国・広州市。若い男女が林の中でセックスをしているのですが、何かを見つけて半裸のままあわてて逃げていきます。どうやら、遺体のようです。と、カメラはドローン撮影となり、異様な光景を映し出します。近代的な高層ビルが林立する手前が、廃墟のような低いビル群なのです。スラム化し、汚水がたまり、すでに廃墟と化したビルもいくつかあるようですが、住人がいます。2012年4月、そこにやってきた建設委員会トップのタン(唐奕傑)は、途中から広東語で、「私も皆さんと同じくここにルーツがある人間です」と、立ち退きを拒んでいる人々に訴えます。そして、電気も切られた各家庭を回って説得にあたりますが、屋上に出たと思ったら、部下が続いて屋上に上がった時には姿が見えませんでした。タンはビルの真下、がれきの上に墜落して死亡していました。

この事件を担当したのが、若い警察官のヤン(楊家棟/ジン・ポーラン)でした。ヤンはタンの妻リン(林慧/ソン・ジア)や娘のヌオ(小諾/マー・スーチュン)から話を聞きます。その過程で、リンの昔の恋人が実業家のジャン(姜紫成/チン・ハオ)だったこと、二人の関係はまだ続いているらしいこと、もう一人、台湾から来てジャンの右腕のような仕事をしていた女性アユン(連阿雲/ミシェル・チェン)がいたものの、彼女は数年前から姿を消していること等がわかってきます。タンの死は他殺なのか、だとすると誰が突き落としたのか、アユンの行方は...とヤンがいろいろ嗅ぎ回っている時に、タンの部下から「実は、話したいことが」と言って呼び出されたヤンが彼に会いに行ってみると、部下は殺されており、それを見た女性がヤンを指して「人殺し!」と叫びます。ヤンは警察に追われ、香港に逃亡することになってしまいます....。


最初から、めまぐるしくシーンが変わり、それが何年何月どこでの出来事である、というテロップが重なって、観客はかなりの理解力を要求されます。1989年広州のダンスホールで美男美女のジャンとリンが踊っていて、そこにダサいタンがやってくるものの、結局リンはタンと結婚、というのが一番古い時代の記憶で、それからヌオが生まれ、ハイティーンになるまでの約20年間があっちこっちに回る走馬灯のように描かれていく作品です。言葉は普通話と広東語、それから台湾のクラブで歌っていたアユンとジャンが出会う場面では台湾語も出てきます。3人の男女の人生を、ヤンが万華鏡で見ているようでもあり、とても疲れる作品ながら、疾走感に引き込まれる作品でもありました。

キーワードというか、キーミュージックになっているのが、アユンが台湾のクラブで歌い、エンドロールにも流れる「一場遊戯一場夢」という曲と、タイトルにもなっている「風中有朵雨做的雲」という曲で、前者は台湾の男性歌手王傑(ワン・チェ/ウォン・キッ)が1987年に出したもの、後者はやはり台湾の女性歌手孟庭葦(マイ)が1994年に歌った歌です。これに関しては、Q&Aでロウ・イエ監督が面白いエピソードを語っていましたので、またのちほどお伝えします。ジン・ポーランが狂言回し的役割だけだったのがちょっと残念ですが、ロウ・イエ監督のまた新たな面が見られた作品でした。

 


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