先日ご紹介した本「激闘!アジアン・アクション映画大進撃」には、熱い反応をいただきありがとうございました。アジアのアクション映画に関する本がしばらく出ていなかったこともあってか、こちらの記事は3日間ほど、かなりの数のPVを獲得し続けていました。
その人気本の中で、「SPECIAL GRAVURE」として画像だけを集めたページが2Pだけあるのですが、そのうちの一つが『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』「ベニー・チャン監督、渾身のマカロニ活動大写真!」(P.143)なのです。もう一つは「武侠映画の闘う女たち」(P.52)なので、作品としては『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』は特別扱い、というわけなんですね(いや、ひょっとしたら、単に1P余ってしまい、この作品のステキな画像がたくさんあっただけ、かも知れないんですが^^)。ともかくもこの注目作、こちらでご紹介した『おじいちゃんはデブゴン』に続く「サモ・ハン is Back!」特集の第2弾なので、謹んでご紹介する次第です。まずは基本データをどうぞ。
『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』 公式サイト
2016年/中国・香港/120分/原題:危城/英語題:CALL OF HEROES
監督:陳木勝(ベニー・チャン)
主演:彭于晏(エディ・ポン)、劉青雲(ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、呉京(ウー・ジン)、袁泉(ユアン・チュアン)、江疏影(ジャン・シューイン)、廖啓智(リウ・カイチー)
配給:ツイン
※6月10日(土)より、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか、全国順次ロードショー
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時代は1914年。当時の中国は中華民国成立直後ながら内戦状態で、中でも北洋軍閥の曹瑛(チョウ・イン)は財力と武力にものを言わせ、各地を蹂躙していました。町や村を追われた人は多数にのぼり、その中に、学校を襲撃されて教師や生徒が殺される中、10人の子供たちを連れて逃げ延びてきた女性教師白玲(パク・レン/ジャン・シューイン)の姿もありました。彼らが山中の食堂で出会ったのは、食堂の客を襲う盗賊どもをたちまちやっつけてしまった若い男馬鋒(マー・フン/エディ・ポン)。子供たちを守ってほしいと「大俠」と呼びかけた白玲にも反応せず、飄々と行ってしまったこの男と、白玲たちは避難先の町で再会することになります。
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その町、普城では、白玲の従兄が麵屋をやっており、そこは楊克難(ヨン・ハックナン/ラウ・チンワン)を団長とする自警団に守られて、人々は落ち着いた暮らしを営んでいました。しかしながら、白玲のような避難民を多数受け入れることになり、馬鋒もやってきたりして、徐々にキナ臭い空気が漂い始めます。そして次の日、曹瑛の息子で残忍な曹少麟(チョウ・シウロン/ルイス・クー)が姿を現すに及んで、町は完全に混乱状態に。平気で人を次々と撃ち殺す曹少麟は楊隊長によって捕縛されますが、彼を救い出すため軍閥の将校張亦(チョン・イック/ウー・ジン)が町に乗り込んできます。ところが、張亦はなんと、以前馬鋒の兄弟子だった人物でした....。
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原題の「危城」は「危険な町」という意味で、「普城」、つまり「普通の町」が曹少麟という悪魔的な男の侵入によって、「危険な町」へと一挙に変貌していく様を見せてくれます。悪知恵も働くこの男に対し、楊隊長やその妻周素素(ジョウ・スースー/ユアン・チュアン)、自警団のご意見番格の廖(リウ/リウ・カイチー)や若き隊員たちがどう闘っていくのか、というのが中心軸となりますが、加えて、正体がよくわからない流れ者の馬鋒と張亦の師兄・師弟愛と対立も描かれるという、なかなかに盛りだくさんな内容です。
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見どころは何と言っても、アクション・シーンの数々。冒頭の、馬鋒が盗賊たちをやっつける食堂シーンでのコミカルな戦いに始まって、中盤の自警団への襲撃などのほか、後半には工夫をこらされたアクション・シーンが3つ登場します。それもそのはず、アクション監督が洪金寶(サモ・ハン)なのですから、見応えもあろうというもの。ハイライトとなる3つのアクション・シーンをちょっとご紹介しておきましょう。
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まずは、正義を貫こうとする楊隊長が、妥協を求める地主たちには邪魔な存在と写り、始末されようとする時のアクション・シーン。先頭切って襲ってくるのは、『カンフー・ハッスル』(2004)でハチマキして闘っていた功夫の達人釋彦能(シー・ヤンネン)ですが、夜の浮き橋での闘いは、これまで見たことのないような道具立てです。闇とたいまつの光、水しぶきに、樽と板で作られた浮き橋と両側にそびえる網目状のフェンス。その美しい背景を縦横に使った素晴らしいアクション設計には、目を奪われてしまいます。それにしてもこんなすごいセット、よくぞ作ったものですね。
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次は、最後のクライマックスとなる、楊隊長をリーダーとする住人たちと、曹少麟と張亦率いる軍閥軍との戦い。当初、楊隊長は妻や娘、自警団のメンバーが町から出るように仕向けるのですが、結局彼らは戻ってきて、軍閥に囚われた住人たちと共に闘うことになります。頭脳戦も含めて、住人たちもそれなりに闘うというバラエティに富んだアクションが展開し、そのメリハリに酔わされてしまいます。
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そんな中で、シビアな闘いとなるのが、張亦と馬鋒との師兄・師弟対決。これが何と、上の写真にあるように、積み上げた壺の上で行われるのですからこれまた前代未聞。積み上げるのも大変だったでしょうが、闘っていくうちに壺が割れるので、闘う方もこれまた大変。もちろんCGも多用してあるものの、一部はリハなしのぶっつけ本番だったのでは、と思います。ウー・ジンならではのアクションと言えますし、エディ・ポンもよくついて行っています。
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こんな素晴らしいアクションを指揮したサモ・ハンは、最後の方のシーンで一瞬だけ登場します。また、息子の洪天照(サミー・ハン)も自警団のメンバーとして出演していますので、チェックしてみて下さいね。監督のベニー・チャンは、ご存じのようにジャッキー・チェンの『WHO AM I?』(1999)などのヒット作を撮った人です。「激闘!アジアン・アクション映画大進撃」には、江戸木純さんによるベニー・チャン論も掲載されていますので、そちらもぜひお読み下さい。あれやらこれやら楽しめる『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』、最後に予告編を付けておきます。
「コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝」予告編