アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

香港FILMARTとアニメ版「ラーマーヤナ」

2011-04-23 | インド映画

3月の香港国際映画祭に行った時、同時に開催されていたFILMARTにも行ってみました。3月21日~24日、ワンチャイの會議展覧中心(通称コンベンション・センター)で開催されたものです。

FILMARTは各国の映画会社による映画見本市で、会場にはたくさんのブースが並んでいます。韓国の映画会社のブースには、ハ・ジョンウのでーっかい写真が。『黄海』 (2010)のシーンみたいですね。

もちろんインドの映画会社もブースを出しています。こちらは、リライアンス・ビッグ・ピクチャーズという、大財閥アンバーニー・グループの会社のブースです。ヒット作や、日本でも上映された有名作品のポスターがずら~り。ほ、ほしいなあ...。

リライアンス・ビッグ・ピクチャーズの担当ガーヤトリーさんは、とても素敵な女性で、かつスグレモノでした。彼女と話していて思い出したのですが、昨秋『ラーヴァン』の字幕翻訳をしていて、ある歌の歌詞だけがどうしてもネットで探し出せず、思い余ってTIFFの事務局から聞いていた提供元リライアンス・ビッグ・ピクチャーズの担当者にメールを出したことがありました。こんなことを言っては何ですが、相手はインド、答えはあまり期待していませんでした。ところが速攻で返事が返って来、「その件は製作会社マドラス・トーキーズの担当者に伝えましたので、そちらから返事が行くはずです」という連絡が。そして、1,2日のうちにマドラス・トーキーズの担当者が歌詞を送ってきてくれたのでした。

その時のリライアンス・ビッグ・ピクチャーズの担当者が、ガーヤトリーさんだったのです。こんな所でお礼が言えるなんてラッキー。でも、彼女にとっては単なる業務の一つだったみたいで、「あー、『ラーヴァン』の海外窓口は私だったからやったかも」という反応でした。インドも確実に変化しているのだな、と頼もしく思った次第です。

その他のインドのブースでは、「インド映画輸出業者連盟」というのがあったので、なになに、と覗いてみました。するとおじさんたち(写真下)につかまってしまい、2010年秋にインドで公開されたアニメーション映画『叙事詩ラーマーヤナ』(原題:Ramayana -The Epic)を大推薦される羽目に。

『叙事詩ラーマーヤナ』のプレスをもらい、よくよく見ると何とケータン・メーヘターの名前があるではありませんか。昔、我々が開催したインド映画祭で彼の監督作品『おとぎ話』 (1980)を上映したりしたので、旧知の間柄です。このアニメ、ケータン・メーヘターと妻のディーパー・サーヒーが製作した、チェータン・デーサーイーという監督の作品のようです。

上がプレスの表紙で、裏表紙には主人公ラーマと妻のシーター、そして彼らを助けるハヌマーンなど正義キャラが一堂に会するシーンが使われているのですが、3Dのこの絵柄、ちょっとゲーム系というか、十頭身スーパーモデル体型で、アニメとしてはいまいちなじめないキャラ・デザインです。

プロモDVDももらったので、やっと先日見てみたものの、う~ん、日本への売り込みはちと難しいかも。YouTubeに予告編と、ちょっと長いプロモがありましたので付けておきます。今の若者はこんな絵柄や動きも抵抗ないんですかねー。とはいえ、インドでもあまりヒットはしなかったようです。

「ラーマーヤナ」は「マハーバーラタ」と並ぶインドの二大叙事詩として知られており、これまで映画化された作品はスピンオフもの(たとえばハヌマーンの物語とか)も入れると、文字通り数知れずあります。前述した『ラーヴァン』もその一つですね。アニメ版「ラーマーヤナ」の第1作は1992年にインドで公開された『ラーマーヤナ:ラーマ王子伝説』ですが、ラームモーハン作画、佐々木皓一監督によるこのアニメは、日本人プロデューサー酒向雄豪さんの血のにじむような努力で完成したというのはあまりにも有名な話。何せ最初にインドに話を持って行った時には、「神であるラーマ様をマンガにするとはけしからん!」という大反対に遭ったというのですから、昔日の感があります。(でも、紙マンガにはなってるじゃん、とツッこめばよかったですね、酒向さん)

『ラーマーヤナ:ラーマ王子伝説』の絵柄は、日本のセル画アニメの美しさを受け継いだタッチとなっています。この映画は英語版とヒンディー語版で公開されてヒットし、さらにテレビでも放送されて人気を呼びました。下が英語版VCDのカバーです。歌のシーンの映像はこちら。日本でも1998年に公開されたのですが、残念ながらソフト化はされないままで終わりました。

あと、『ラーマーヤナ:子供向けアニメ』(原題:Ramayana - Kids Animation)という映像もYouTubeで見つけましたが、絵が固いし動きも雑で、全体の感じが暗く、これで子供が喜ぶかなあ、とちょっと首をかしげてしまいます。インドではここ10年ほど、劇場用、テレビ用ともにアニメ制作が盛んになり、ハリウッドとも提携したりしていろんなアニメが作られています。たとえば、「ラーマーヤナ」のスピンオフものと言える『ハヌマーン』 (2005/原題:Hanuman)は結構ヒットしました。下はそのVCDカバーです。

 

ただ、この『ハヌマーン』も技術的にはいまひとつで、まだまだこれから向上の余地大いにあり、というところ。コンピュータ王国でもあるインドですので、今後に期待することにしましょう。

 


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