アジア映画巡礼

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『ジャッリカットゥ』のリジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督作『Ee.Ma.Yau』配信中!

2022-08-26 | インド映画

本日より配信サイトJAIHOで、『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(2019)のリジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督の前作『Ee.Ma.Yau』(2018)の配信が始まりました。日本語タイトルは『イエス様 マリア様 ヨセフ様』です、と聞けば、ええ? 原題のどこがJesus, Maria, Josephなのよ、と英語圏の人からは文句が出そうですね。でもそう言えば、小学校の時通っていた日曜学校の日本人の先生は、イエス・キリストのことを「エス様」って言ってましたっけ。「J」音と「Y」音が交替するのもよくありますし(Jacob=ヤコブ)、ケーララの人たちがイエス、マリア、ヨセフをそれぞれ、Eeso, Mariyam, Yousephと呼んだり綴ったりしてもいいんじゃないの、ということですね。で、短縮形が「Ee.Ma.Yau」というわけですが、「Ee.Ma.You」という表記もあるようです。

物語は、ケーララ州のある漁村で、老人が亡くなるところから急展開していきます。それ以前の部分で、この老人がヴァヴァチャンと言い、妻ペンナンマとの間に息子イーシと娘アグニサがおり、イーシの嫁エリサベートとの5人家族であることがわかってきます。ヴァヴァチャンは勝手にどこかに行っては数日間帰ってこなかったりするわがまま老人ですが、家族は皆何となく彼を許し、家長として立てています。ヴァヴァチャンは昔は芝居(「チャヴィット・ナーダガム」と呼ばれる洋風クリスチャン劇。詳しくは英語版Wikiをどうぞ)の花形で、年老いた今はその芝居の記憶と、亡き父を立派な葬式で送ったこととに思いを馳せつつ、酒を楽しみ、妻の作ったカモのカレーに舌鼓を打つ老人でした。中でも、立派な葬式はヴァヴァチャンの中ではとても重要で、自分の時もそうするよう息子イーシに約束させます。イーシはまだまだ元気な父を見ていると、葬式なんて全然現実感がなかったのですが、ある夜、酔っぱらった父が突然倒れたことから葬式が現実のものとなってしまいました。「イエス様!マリア様!ヨセフ様!」と大声で嘆く妻のペンナンマや嫁のエリザベートに、うろたえて何をしていいかわからないイーシ。友人で村の議員でもあるアイヤッパンは彼を元気づけながら、死亡診断書を書いて貰うため医師を呼びに行きますが、医師は泥酔していて起きそうにないので看護師長に頼め、と医師の妻に言われ、看護師長の家に行かざるを得ないなど、すべてのことがスムーズに進みません。やって来た看護師長はヴァヴァチャンの頭部の傷に引っかかり、そこから殺人の疑いが出てくる等々、もうてんやわんや。さて、ヴァヴァチャンが生前望んだ、立派な葬式は出せるのでしょうか...。

最初に、ヴァヴァチャンの父親の葬式らしきシーンが出てくるのですが、日本の村の盛大な野辺送りを思わせるような、とても立派なお葬式の行列でした。ケーララの中で、キリスト教文化が何世代にもわたって受け継がれていることがよくわかる葬列ですが、その”聖”の中に”俗”が入り込むシーンがいろいろ出て来て、ヴァヴァチャンの死後のパートは驚くことばかり。ダイナマイト級のトンデモ事件も出現しますので、2時間の上映時間があっという間に終わってしまいます。リジョー監督は、『ジャッリカットゥ』でも聖職者たちをかなりの俗人として描いていましたが、本作もそうで、神父の判断が悲劇を招きます。

でもこの映画、ラストはとても好きです。キリスト教でも「彼岸」の概念があるのかしら、と思ったりと、「戦い済んで日が暮れて」の美しいラストでした。リジョー監督、やはりストーリーテラーとして一流ですね。よかったら、ぜひ二度見てみて下さい。映画館と違って、お代は同じです(笑)。2020年の第33回東京国際映画祭で上映されたマラーティー語映画『遺灰との旅』(2020)と似たプロットがあるのですが、これはまったくの偶然だと思います。『イエス様 マリア様 ヨセフ様』の出演者は、『ジャッリカットゥ』の肉屋の親父ヴァルキ役のチェンバン・ヴィノード・ジョーズがイーシ役で、あとは馴染みのない俳優さんばかり。でも、みんなそれぞれにうまくて、『ジャッリカットゥ』も素人のように見えて達者な出演者ばかりだったな、と懐かしく思い出しました。下に英語字幕のある予告編を付けておきますので、9月24日までの配信期間中にぜひご覧になって下さいね。

Ee.Ma.Yau Movie Official Trailer HD | Vinayakan | Chemban Vinod | Dileesh Pothen |

 


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