アジア映画巡礼

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『スーパー30 アーナンド先生の教室』にようこそ!<3>予習1限目:主役の横顔

2022-08-29 | インド映画

インド映画『スーパー30 アーナンド先生の教室』の公開は9月23日(金)。公開まであと1ヶ月を切りました! そろそろ予習をしないといけませんね。ストーリー等基本的なご紹介はこちらでやったので、本日は予習1限目として、主役のリティク・ローシャンを取り上げてみましょう。

ところでこの映画の公式サイトも、内容がぐぐっと充実してきました。映画を見る時はなるべく事前に知識を入れないで見る、という主義の方もいらっしゃると思いますが、私は予習派ですので、公式サイトの「ABOUT THE MOVIE」をバッチリ読みました。本作は実在の人物アーナンド・クマール氏の半生に基づいた物語ですが、そのアーナンド・クマール氏と、本作のアーナンド先生ことリティク・ローシャンのツーショット写真もあります。右のアーナンド先生の本物に合わせて、リティク・ローシャンも髭を伸ばしたのですね。

©Reliance Entertainment ©HRX Films ©Nadiadwala Grandson Entertainment ©Phantom Films.

そのリティク・ローシャンですが、日本ではまだ「3人のカーン」こと、アーミル、サルマーン、シャー・ルクほどには知られていないと思います。ボリウッドでも、3人のカーンに約10年遅れてデビューしたリティクは、いまだ3人のカーンの弟分的存在です。でも同世代の、2000年前後にデビューしたスターキッズの中では群を抜いた存在で、すでに1980年代の人気スターだった父親ラーケーシュ・ローシャンを超えた、と言っても過言ではないと思います。特に、今回フィルモグラフィーをあらためて点検してみたら、意欲的な作品選びにうならされました。単にカッコイイ役だけを選んで出演する、外面だけのスターじゃないんですね。今回の『スーパー30 アーナンド先生の教室』もどちらかというと汚れ役で、リティクが主演すると知った時にはちょっと不思議に思ったものでしたが、作品を見てみると自分のイメージにこだわらず、全身全霊で役に取り組んでいる姿に感心しました。

Photo by Pradeep Bandekar

リティクのデビューは2000年の『Kaho Naa…Pyar Hai(言って、愛しているって)』で、父親ラーケーシュ・ローシャンの監督作でした。それまで、シャー・ルク・カーンとサルマーン・カーンの主演作『カランとアルジュン』(1995)やシャー・ルクとマードゥリー・ディークシト主演の『コイラ~愛と復讐の炎~』(1997)等を監督してヒットさせてきたラーケーシュ・ローシャン監督でしたが、これらの作品に自分のアシスタントとして関わった息子の俳優デビュー作とあってか、力の入った作品になっていました。上の写真はその頃のリティク、下の写真は公開当時のムンバイの看板です。

このデビュー作が大ヒットしたあと、翌年にはシャー・ルクやアミターブ・バッチャンと共演した『家族の四季 愛すれど遠く離れて』(2001)も大ヒット、リティクは若手トップスターとして順調にキャリアを重ねていきます。で、いくつものキラキラ映画(えー私の命名で、あまり内容はないけれど男女スターが光っている作品を指します)に出たあと、次に出演したのが学習障害があって幼児的な言動しかできないけれど、科学の才能が抜群の青年を演じた『Koi...Mil Gaya(何かが...手に入った)』(2003)でした。これも父親のローシャン監督作なので、息子に難しい役を演じさせたお父さんが偉かった、と言うべきなのかも知れません。ハリウッド映画『E.T.』のイタダキ的側面もある作品ですが、これも大ヒットとなります。後年、この時の主人公の息子クリシュが、母を亡くし、父は行方不明のまま祖母に育てられて、超高度身体能力を持った青年「クリシュ」としてスーパーマン的活躍をする、という話になって、『Krrish(クリシュ)』(2006)が誕生します。日本では、原題「Krrish 3」(2013)が『クリッシュ』というタイトルになって発売されているのでまぎらわしいのですが、ともかくリティクは、ボリウッド興行収入のトップ10に入る作品を連発してきたのです。

 

というわけで、その後も『Dhoom 2(騒ぎ2)』(2006)や『Jodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)』(2008)など素晴らしい作品に出演してきたリティク。その後の作品は下に付けたフィルモグラフィーのとおりで、結構日本でも公開、あるいは映画祭上映されているのですが、この2作品が日本で紹介されていないのは何としても残念です。この先、<インド映画の全貌>というような特集上映があれば、ぜひ『Dhoom 2』と『Jodhaa Akbar』を入れたいものです。それともう1作、入れたいのが、2010年の『Guzaarish(願い)』です。これは、首から下がマヒした元マジシャンの青年が、ディスクジョッキーとして活躍しながらも安楽死を願うという作品で、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督作品としても特異な分野に入ります。しかしながら、リティクと相手役アイシュワリヤー・ラーイの演技が研ぎ澄まされていて、とても心に残る作品なのです。

Guzaarish poster.jpg

『Guzaarish』以降、リティクは盲目の青年を演じた『Kaabil(ふさわしい人)』(2017)、そしてこの『スーパー30 アーナンド先生の教室』と、自らが挑戦できる役柄に積極的に取り組んでいるように思われます。日本でも一昨年に公開された『WAR ウォー!!』(2019)はカッコいいリティクの出番でしたが、間もなく公開される『Vikram Veedha(ヴィクラムとヴェーダー)』は、同名のタミル語映画のリメイク作品で、元の作品ではヴィジャイ・セードゥパティが演じた複雑な男ヴェーダーを演じる予定。はてさて、陰影と凄味のある主人公の片われヴェーダーをどんな風に演じてくれるのか、楽しみなところですね。

   

リティク・ローシャン出演作
【子役時代】
1980    Aasha「アーシャー」(ソング&ダンスシーン出演)
1980    Aap Ke Deewane「あなたに夢中」(ソング&ダンスシーン出演)
1981    Aas Paas 「近隣」(ソング&ダンスシーン出演)
1983    Aasra Pyaar Da(パンジャービー語映画、ソング&ダンスシーン出演)
1986    Bhagwaan Dada「バグワーン兄貴」~祖父の監督作&父の主演作

【監督助手時代】
1987    Khudgarz 「身勝手」(監督助手)~父の監督作
1993    King Uncle「キングおじさん」(監督助手)~父の監督作
1995 『カランとアルジュン』Karan Arjun[映画祭上映/DVD](監督助手)~父の監督作
1997 『コイラ ~愛と復讐の炎~』Koyla[DVD](監督助手)~父の監督作

【俳優出演作】
2000    Kaho Naa... Pyaar Hai「言って、愛しているって」
     ★Filmfare Award for Best Actor ★Filmfare Award for Best Male Debut      2000     Fiza「フィザー」
2000   『アルターフ 復讐の名のもとに』Mission Kashmir[DVD]
2001   Yaadein「思い出」
2001   『家族の四季 愛すれど遠く離れて』Kabhi Khushi Kabhie Gham...[公開/DVD]
2002     Aap Mujhe Achche Lagne Lage「君が好きになってきた」
2002     Na Tum Jaano Na Hum「君にも僕にもわからない」
2002     Mujhse Dosti Karoge!「僕と友だちになる?」
2003     Main Prem Ki Diwani Hoon 「私はプレームに夢中」
2003     Koi... Mil Gaya「何かが...手に入った」
     ★Filmfare Award for Best Actor ★Filmfare Critics Award for Best Actor
2004     Lakshya「目標」
2006     Krrish「クリシュ」~「クリシュ」1作目、Koi...Mil Gayaからはシリーズ2作目
2006     Dhoom 2「騒ぎ2」★Filmfare Award for Best Actor
2006     I See You「じゃ、また」※カメオ出演
2007   『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』Om Shanti Om※カメオ出演[公開&DVD]
2008     Jodhaa Akbar「ジョーダーとアクバル」★Filmfare Award for Best Actor 
2008     Krazzy 4 「クレイジー4」※カメオ出演
2009   『チャンスをつかめ!』Luck by Chance[東京国際映画祭]※カメオ出演
2010   『カイト』Kites [東京国際映画祭]
2010     Guzaarish「願い」
2011   『人生は一度だけ』Zindagi Na Milegi Dobara [映画祭上映]
2011   『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』Don 2 ※カメオ出演[公開&DVD]
2012   『火の道』Agneepath[東京国際映画祭]
2013     Main Krishna Hoon「僕はクリシュナ」※カメオ出演
2013   『クリッシュ』Krrish 3[公開&DVD]
2014     Bang Bang!「バンバン!」~ハリウッド映画『ナイト&デイ』リメイク
2015     Hey Bro「おい、兄弟」※カメオ出演
2016     Mohenjo Daro「モヘンジョ・ダロ」
2017     Kaabil「ふさわしい人」
2017     Hrudayantar「心の内」~マラーティー語映画 ※カメオ出演
2019   『スーパー30 アーナンド先生の教室』Super 30
2019   『WAR ウォー!!』War [公開&DVD]
2022     Vikram Vedha 「ヴィクラムとヴェーダー」~タミル語同名作品リメイク、9月30日インド公開予定

最後に、『スーパー30 アーナンド先生の教室』の予告編と、『Vikram Vedha』の予告編を付けておきます。リティクの印象がかなり違うところにご注目下さい。え、似てるって? 髭面のせいかなあ...。

「スーパー30 アーナンド先生の教室」予告【9.23公開】

 

Vikram Vedha Teaser | Hrithik Roshan, Saif Ali Khan | Pushkar & Gayatri | Radhika Apte|Bhushan Kumar


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