<インディアン・ムービー・ウィーク2020>で上映された力作『僕の名はパリエルム・ペルマール』(2018)のDVDが出ました。発売予定日は4月28日ですが、発売元のフルモテルモさんから見本をいただきましたので、一足先に拝見したらこれはすごい! ということで、勢い込んでご紹介してしまいます。まず最初に、映画のデータとあらすじをどうぞ。
『僕の名はパリエルム・ペルマール』
2018年 /インド/タミル語/153分/原題:Pariyerum Perumal
監督:マーリ・セルヴァラージ
出演:カディル、アーナンディ、ヨーギ・バーブ、マーリムットゥ、ワンナーラッペーッタイ・タンガラージ
<ストーリー>
弁護士を目指して法科大学に進学したパリヤンことパリエルム・ペルマール(カディル)。ダリト(被差別カースト)出身の彼は、良家のどら息子で気のいいアーナンド(ヨーギ・バーブ)と友だちになり、また授業で親切にしてくれた女子学生ジョーことジョーティ・マハーラクシュミ(アーナンディ)とも仲良くなっていきます。ですが、上位カーストであるジョーの親族からは、激しく卑劣な差別を受けることに。大学で問題を起こしたパリヤンは父親(ワンナーラッペーッタイ・タンガラージ)と共に学長に呼び出されますが、その後校門を出ようとすると、芸人であるパリヤンの父親に対し、学生たちはとんでもない行為を仕掛けてきます....。カースト制度に基づく差別の構造と実態を、苛烈とも言えるリアルな表現で描いた力作です。冒頭に登場するパリヤンの飼い犬カルッピ(クロ/上写真左、下写真右)が、映画を象徴する存在となっています。
<ソフトデータ>
『僕の名はパリエルム・ペルマール』DVD
提供:SPACEBOX
発売元:フルモテルモ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
税込価格:4,290円(本体価格3,900円)
発売日:4月28日
このDVDで、何がすごい! かと言えば、上写真の右下に書いてある「封入特典:解説リーフレット」。下に付けたのがその表紙なのですが、B4判4つ折の内側には、そこに書いてあるように「作品を読み解くキーワード」がぎっしり。私も初めて目にすることが含まれていて、すごく勉強になりました。そのほか、表紙の面の片側には、スタッフとキャストの詳しい紹介があって、映画公開時のパンフレットに引けを取りません。このリーフレットをゲットするだけでも、DVDを買う価値は十分にあります。
表紙裏面には「解説リーフレット」のクレジットがあって、執筆者はどうやら安宅直子さんのようです。<追記4.28:安宅直子さんと印度映画広報委員会のAさんとの合作だそうです。AさんはIMWの広報担当としてもがんばっている方です>
安宅さんは、インド映画に関する書き手としては最も信頼できる執筆者の一人なのですが、この「作品を読み解くキーワード」は特に力作です。どの項目も充実していますが、さらに欲を言えば、本作に登場する人物の中で特異な存在である「名誉殺人請負人」(カラテ・ヴェンカテーサン)について、監督の想像の産物なのか、実際にそんな職業が存在するのか、もう少し踏み込んで教えておいていただけるとありがたかったです。「名誉殺人請負人」って何? と思われた方は、ぜひ本作を見てみて下さいね。
『僕の名はパリエルム・ペルマール』は、これを見ないではインド映画の現在を語ることはできない、というぐらい、重要な作品です。本作は、このリーフレットの中にあるように、2019年にニューヨークで行われた「第1回ダリト映画&文化フェスティバル」で上映された6本のインド映画中の1本にも選ばれました。他の上映作品は、『生と死と、その間にあるもの(Masaan)』(2015/ヒンディー語)、『ファンドリー(Fandry)』(2013/マラーティー語)、『カーラ 黒い砦の闘い(Kaala)』(2018/タミル語)、『Papilio Buddha(ブッダオビクジャクアゲハ)』(2013/マラヤーラム語)、『Bole India Jai Bhim(インドよ叫べ、ビーム=アンベードカル万歳と)』(2016/マラーティー語)の5本でした。ここだけの数字ですが、タミル語映画とマラーティー語映画は現在、ダリト映画の製作では他言語の映画をリードしていると言えそうです。
本作は、第66回フィルムフェア賞のタミル語映画作品賞など、たくさんの賞も受賞しています。こんな記念すべき1本のDVD、ぜひお手元にどうぞ。最後に予告編を付けておきます。
僕の名はパリエルム・ペルマール DVD発売予告編