<インディアンムービーウィーク(IMW)>2020もいよいよ大詰め。そうそう、まずお詫びしなくてはいけないのは、最初の頃4回レポートしただけで、その後全然レポートができなかったこと。東京フィルメックスのインド映画『マイルストーン』の字幕の仕事が入って、映画を見に行けなくなってしまったのです。それを見かねてか、IMWの事務局の方から、「『無職の大卒』が今回とても人気があるのですが、マスコミ用ネット試写をご覧になりませんか?」というご親切なお申し出が。というわけで、公開時にシンガポールで見た『無職の大卒』、きれいな日本語字幕で拝見しましたのでご紹介したいと思います。(IMWの公式サイトはこちらです)
『無職の大卒』(原題:VelaiillaPattadhari/ 2014 年/ タミル語)
監督:ヴェールラージ
出演:ダヌシュ、サムドラカニ、アマラ・ポール
主人公のラグヴァラン(ダヌシュ)は1999年に大学に入学、土木工学を学んでエンジニアの資格を取り、卒業してからの4年間いろいろと就活したのですが、いまだに無職です。サラリーマンの父(サムドラカニ⇒சமுத்திரக்கனிなので、”サムディラカニ”では?)にはいつも「役立たず!」と叱られ、すでに就職している弟カールティク(リシケーシュ)からも無言の圧を感じるラグヴァランですが、母(サラニャ・ポンヴァンナン)だけはいつも励ましてくれました。今日も母の家事を手伝い、足こぎバイクで買い物に出かけ、あとは犬のハリーポッターと遊ぶ、という怠惰な1日を送っていた無職の大卒ラグヴァラン、隣に越してきた一家に若い女性がいるとわかると、俄然張り切ります。彼女の名はシャーリニ(アマラ・ポール)で25歳。しかし彼女のお母さんから、「うちの娘は歯科医で、うちの夫よりも稼ぐのよ。月収は20万ルピー(約34万円)ぐらいかしら」と言われてがっくり。それでもひょんなことから親しくなり、つき合いが始まります。そんな時、面接を受けた会社で、あるゴーマンな若社長(アミターシュ・プラダーン)から不採用にされてしまいますが、その後この若社長と深い因縁ができるとは...。
ダヌシュの主演作は、昨年も『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』(2018)が公開され、いよいよダヌシュ、日本でブレイクかっ! と色めき立ったのですが、残念ながらあまり皆さんに憶えてもらえませんでした。『ラーンジャナー』(2013)が<インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)2014>で上映された時から日本でもファンが増えて、『Thiruda Thirudi(男女の泥棒)』(2003)を見てファンになった私も応援しているのですが、なかなかチャンスがありません。でもこの『無職の大卒』をご覧になった方は、こんなスターがインドにも! と驚かれたことと思います。驚きポイントは、①痩せている!(インドではふくよかなスターが好まれる、と言った人は誰だ?!)、②冴えない男を実にうまく演じられる!(大体インドのスターは色白でふくよかなので、冴えない男表現がわざとらしいんですよね)、③アクションがブルース・リー並み!(今回は、闘う時は上半身裸になる、というブルース・リー・コードも守っていて、飛び蹴りが決まる姿がなお美しい!)、というわけで、こんなインド映画スターはダヌシュ以外にはいません(と、キッパリ!)。
ストーリーは前半3分の1ぐらいしか書きませんでしたが、このあとインターバル前に悲劇が起こり、後半はその悲劇が縁である建設会社に就職したラグヴァランのサクセスストーリーになっていきます。前述の若社長と入札で対決、ラグヴァランの会社が勝ったものの若社長側は執拗に妨害をくり返し、それと闘いながらラグヴァランらは低所得者用の団地を作っていく、というお仕事ドラマの後半も、なかなか見応えがあります。ダヌシュのひげ面がひんぱんに口ひげだけになったりするコラコラな点もあるものの、適度に笑いも入れて観客を乗せていってくれます。今回の上映作品の中で人気が高いのも納得の出来でした。なおこのブログでは、以前『無職の大卒』を見た時の紹介をこちらに、その他のダヌシュ作品の紹介をこちらやこちらにアップしています。『無職の大卒』は新宿ピカデリーで10月8日(木)に上映されますので、まだの方はぜひご覧になって下さい。
あと、ヒンディー語映画『結婚は慎重に!』(上写真)も先日新宿ピカデリーで見たのですが、ちょっと期待はずれでした。アーユシュマーン・クラーナー(左)は相変わらず達者ですが、脚本がしっかりと男性同士の恋愛に向き合ってなくて、ただのドタバタコメディになってしまい、残念無念。ジテーンドラ・クマール(右)の従妹の結婚式がドタバタの舞台となるのですが、彼女の描き方も偏見入ってない?、と気になりました。同じようなタイトルの前作『Shubh Mangal Saavdhan(結婚にご用心)』(2017)に出演していたブーミ・ペードネーカルもカメオ出演していたり、アーユシュマーン・クラーナーの別のヒット作『Badhaai Ho(おめでとう)』(2018)で両親役を演じたニーナー・グプターとガジュラージ・ラーオがジテーンドラ・クマールの両親役で出演したりしていますが、柳の下に2匹目のどじょうはいなかったようで...。とはいえ、アーユシュマーン・クラーナーのファンの方には見逃せない作品ですので、10月9日(金)の新宿ピカデリーでの上映には駆けつけて下さいね。
こんな大変な状況の時に、<IMW>を開催して下さったSPACE BOXや映画祭事務局の皆さんには大感謝!です。南インド映画の何本かが、今後公開にまで行くことを願いつつ、御礼申し上げます。
https://www.smt-cinema.com/site/shinjuku/index.html
昨日は雨の中、いらして下さってありがとうございました。
アフタートークなどもあって、インドの通過儀礼について実例がわかり、私も勉強になりました。
『ジャスミン・ウェディング』はいろんな反応を引き出してくれて、貸して下さった田中監督に感謝!です。
新ピカ情報もありがとうございました。
話題作、人気作、大作が上映されている、という感じですが、この先『ウィルス』の上映もあるようなので、私が見逃した『浄め』もあるかも。
ただし、今抱えている仕事が終わらないと行けないなあ...。
しつこく息長く、新ピカさんが全作品上映して下さることを願っています。