アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第25回東京フィルメックスまであと2週間:目玉はインド映画2本!!

2024-11-09 | 映画祭

ここのところ、いかにも11月、という気候になってきましたね。私たちアジア映画系ライターの意識では、東京国際映画祭(TIFF)の10月、東京フィルメックスの11月、という季節感が長い間続いていたのですが、ここ数年はコロナ禍もあって、その季節感がだいぶ混乱していました。東京フィルメックスも、TIFFが有楽町&日比谷に移ってきたことで同時期開催に近くなったりして、「TIFFとフィルメックスで見たい作品が重なってもう大混乱!」と我々を嘆かせたりしましたが、今年は従来通りの棲み分け開催となり、ホッとしています。

ただメイン会場が今年は、「フィルメックスと言えば朝日ホール」だった有楽町朝日ホールから離れ、丸の内TOEIとなりました。聞くところによると、丸の内TOEIは来年2025年夏で閉館となるため、今年だけのフィルメックス会場ということのようです。丸の内TOEIは開館60年で老朽化が目立つため、東映本社は京橋のエドグランに移るそうで、となると試写室もそちらになるのでしょうか。丸の内TOEIは東映マンガ祭りなど都心のど真ん中でお子様が映画を楽しめるスポットとして人気があり、私もアニメ『手塚治虫のブッダ』(2011)等、この劇場で見た作品がいくつかありますが、それ以上に第一と第二の試写室によく通いました。執務中の東映社員の皆様を横目に見て、試写室に行くのは少しばかりワクワクする体験でしたっけ。今年のフィルメックスは、この丸の内TOEIと、昨年に引き続きヒューマントラストシネマ有楽町が会場となります。すでにチケット発売も1週間前から始まっているので、皆さんチケットをゲットなさっているのではないでしょうか。もしまだでしたら、ここにご紹介するインド映画2本は、そろそろ満席に近くなっていますのでお早めにチケットをゲットなさって下さい。さて、その2本のインド映画は――

  ©Oxfam

『サントーシュ』 作品紹介サイト
 2024年/インド、イギリス、ドイツ、フランス/120分/原題:Santosh संतोष
 監督:サンディヤ・スリ
 出演:シャハーナー・ゴースワーミー、スニーター・ラージワール、サンジャイ・ビシュノーイー
 上映:11月24日(日)12:50~ 丸の内TOEI(Q&A)
    11月29日(金)21:10~ ヒューマントラストシネマ有楽町

©Oxfam

画像からもおわかりのように、主人公は婦警です。ですが最初から警察官だったわけではなく、インドでは珍しい恋愛結婚をした相手が巡査で、勤務して1、2年の時に暴動に出動して命を落としてしまったため、警察の救済制度を利用して夫と同じ巡査の身分になった、という女性です。もちろん勤務するまでに警察官としての訓練をうけるのですが、この職業相続制度みたいなものがインドにあるのを初めて知りました。「ムリタク मृतक(死亡者)・アーシュリトआश्रित(被扶養者)」制度と言うのだそうで、映画の中で簡単な説明が出て来ます。ところが、張り切って巡査になってみると、見えてきたのは..ということで、カースト差別、イスラーム教徒への偏見、貧富の差、女性蔑視などの現状が登場します。警察の横暴さにだんだん主人公も引き入れられていくシーンでは、目を背けたくなるような場面もあり、映画とはわかっていても見るのがつらいのではと思います。

©Oxfam

主人公を演じたシャハーナー・ゴースワーミーは、バングラデシュ映画『メイド・イン・バングラデシュ』(2019)で主人公シムが相談するNGOの女性ナシマを演じた女優です。今回は、もっときつい表情を作り、強面の巡査サントーシュを演じています。その上司となるギーター・シャルマー(この姓からバラモン階級とわかります)を演じているのがスニーター・ラージワールで、いつもはやさしい母親役などが多いのに、今回は凄腕の女性警部を貫禄十分に演じています。監督は、ロンドン在住の女性監督サンディヤ・スリ。目下字幕制作作業をしていますので、内容のあちこちが気になるのですが、インド在住でなくてもここまでリアルに撮れるのだ、という点は驚きでした。あと気になるのが、タイトルにもなっている「サントーシュ」という名前。劇中でも、「男の名前じゃないか」と言われる場面があるのですが、サントーシュは「女性の名前でもありますよ」と切り返します。とはいえ、「サントーシュ(満足、の意味)」は男性名詞ですし、女性名なら「サントーシャー」にするとか、あるいは形容詞ですが「サントーシー」にするとか、普通の親なら「サントーシュ」は付けないのではないかと思います。劇中ではその謎解きはしてないので、何かの機会に監督にうかがってみたいです。最後に、予告編を付けておきます。

SANTOSH | Official Trailer

 

『女の子は女の子』作品紹介サイト

 2024年/インド、フランス、アメリカ、ノルウェー/118分/原題:Girls Will Be Girls
 監督:シュチ・タラティ
 出演:プリーティ・パーニグラヒー、ケーサヴ・ビノイ・キロン、カニー・クスルティ
 上映:11月25日(月)15:05~ 丸の内TOEI(Q&A)
    11月30日(土)21:10~ ヒューマントラストシネマ有楽町

こちらの作品は未見ですが、この監督シュチ・タラティもニューヨークをベースにしているそうで、海外在住インド人監督という形では、と思います。そして何よりも注目したいのが、主人公の女の子の母親役を演じているカニー・クスルティで、来年夏に日本で公開されるパーヤル・カパーリヤー監督作『All We Imagine as Light』(2024)の主役を演じている女優なのです。カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した映画の中心人物である彼女、一体どんな女優なのでしょう。こちらもぜひ見てみたい作品です。

最後に予告編を付けておきます。

Girls Will Be Girls Trailer #1 (2024)

 

と、字幕翻訳の合間にご紹介してきたのですが、運の悪いことに、私は『女の子は女の子』が見られないかも知れません。第1回目の上映日である11月25日(月)は、実はその日まで、住んでいるマンションの給排水管交換工事予定が入っているため、1日在宅していないといけないのです(何と、休日を間に挟むとはいえ延べ11日間の大工事! 平日は日中ずっと在宅の必要ありで、おまけに数日間はお風呂が使えないし、ある日はトイレも使用禁止。風呂は一駅向こうにあるお風呂屋さんへ、またトイレはマンション中庭の簡易トイレを利用するのですが、ストレスたまりまくりです)。そして、2回目の11月30日(土)の夜は、インド映画研究会があり、これまた家を離れられません。ご縁がないのかも。こうなれば、『女の子は女の子』をどこかの配給会社さんが買って下さることを祈るのみ。皆さんはぜひ、劇場でご覧になって下さいね。

 

 


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