本日は、TIFFの前に山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)の作品上映が続いている新宿K's シネマへ。前にこちらで書きましたように、交流ラウンジに登場してくれたインドの映画監督パーヤル・カパーリヤー監督のドキュメンタリー映画、『何も知らない夜』(2021)の上映を見て来たのです。11月1日なので特別料金1,000円ということもあってか、上映は満員でした。簡単に映画のご紹介をしておきます。
『何も知らない夜』
2021年/インド・フランス/ヒンディー語、ベンガル語/100分
監督:パヤル(パーヤル)・カパーリヤー
*YIDFF2023 大賞(ロバート&フランシス・フラハティ賞)受賞
今回の上映「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー――山形in東京2024」のチラシには、「映画的技巧を駆使して語られる、虚構の悲恋物語。背景にあるカースト制と社会の右傾化が浮かび上がる」とありますが、山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)のサイトには、次のように解説されています。
..................................................................................................................................
映画を学ぶ学生のL(エル)が恋人へあてた手紙が学生寮の片隅で発見された。女性の朗読に託された架空の物語は、Lの恋愛の破局の背後にあるカースト制へと導かれ、さらに2016年に実際に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件へと接続される。若者の日常の光景、Lの悲恋の逸話、路上デモや警官との衝突のシーンにおける緊迫した闘争の様子がモノクロームの映像の中で融合し、フィクションと現実が境界をなくしていく。抵抗する者たちの情熱や信念、映画作家たちの意志の記録とともにインドの現在を描き出す。
..................................................................................................................................
最初、モノクロ画面にはディスコのような映像が流れ、それに若い女性のヒンディー語によるモノローグが重なります。このモノローグは次々と話者が交代、若い男性が出て来たり、またしゃべる言語もヒンディー語からベンガル語になったり、画面上に浮かび上がる文章の文字も、ヒンディー語文字からベンガル語文字になったりします。語られる内容は、自分たちの恋愛に親が反対している、というような内容から始まり、上記枠内の解説のように進んでいくのですが、映像と語りはシンクロせず、プネーにある映画・テレビ研究所になったり、街頭デモの様子になったりと、変化していきます。デモは2019年から2020年にかけて大きな論議を呼んだ「インド市民権改正法」反対デモかな、と思い、ノウシーン・ハーン監督作のドキュメンタリー映画『我が理想の国』(2023)(この作品も11月3日にK's シネマで上映予定)を思い出したりしながら見ていたのですが、上の解説から別の抗議行動だったことがわかりました。というわけで、私にとっては、なかなか難解なドキュメンタリー映画でした。予告編を付けておきます。
A Night of Knowing Nothing - Official Trailer
新宿から日比谷に移り、TIFFのプレス上映で見たのはアフガニスタンの1978年を描いた作品でした。
『シマの唄』
2024年/スペイン、オランダ、フランス、台湾、ギリシャ、アフガニスタン/ダリー語/97分/英語題:Sima's Song
監督:ロヤ・サダト
出演:モジュデー・ジャマルザダー、ニルファル・クーカニ、アジズ・ディルダール
主人公スラヤは、当時のアフガニスタンで革命思想の一翼を担った教授の娘。亡くなったその教授の回顧録が出版され、出版を記念する集まりが持たれて、軍の高官やソ連大使館の外交官などが集まってきます。スラヤの友人シマは接待を手伝っていましたが、スラヤに請われて古典音楽に乗せ、1曲歌います。2人はやがて、その後のソ連侵攻と反ソ武装勢力との争いに取り込まれ、銃を持つことになりますが...。アフガニスタンの歴史にうといので、いまいち内容がよく理解出来ませんでしたが、劇中でシマが歌う歌曲はイラン古典音楽曲とよく似ていて、懐かしかったです。監督のロヤ・サダト(下写真)はアフガニスタンのヘラート生まれ。誠実な作り方の作品でしたが、いまひとつ惹かれるものがなくて、ちょっと残念でした。
今年のTIFFは、幕開けの『ラスト・ダンス』こそ素晴らしかったものの、その後はなかなか惚れ込める作品に出会えません。昨日の記事で、映画祭事務局に行ってゲストパスをもらった、と書きましたが、ゲストパスにはプレスパスにはない特典がいくつか付いています。その一つがオンライン試写が見られる、というもので、日本語字幕付きではないものの、英語字幕で結構作品が見られる――はずでした。ところが今年は、ほんの少ししかオンラインで見られる作品がありません。いつもなら30本ぐらいはアップされているはずが、今年は何とたったの13本。しかもそのうち、日本映画が7本なので、私が見たい外国作品は6本だけ。ちょっと情けないのではないですか? 例年なら、確か30~40本はアップされていたのに、どうしてしまったのでしょう? 出品者が皆、オンラインで見せるのを嫌がったとか? というわけで、とことんついてない今年のTIFFなのでした。
えーい、験直しだ! 本日より公開のタミル語映画『カッティ 刃物と水道管』(2014)の、元気なティーザーを付けておきます。すでにご覧になった皆様、いかがでしたか? 私も劇場で一度、大将ヴィジャイのお顔を拝むことにしましょう。
インド映画『カッティ 刃物と水道管』特報映像