TIFF7日目です。私にとっては、今日でTIFFは予定終了となりました。
今回、タイトルに「DAY 1~7」を使ったのは、インド映画『たとえ明日が来なくても』 (2003)の「6日間で女の子をゲット」作戦を意識したからですが、あれは6日間で作戦終了で「DAY 7」はなかったですね。あの映画では、サイフ・アリー・カーン扮するローヒトが「何で6日間なの?」と聞いたのに対し、シャー・ルク・カーン扮するアマンが、「僕は日曜日には仕事しないのさ」と答えていました。安息日ですもんね~。でも、日曜だろうが休日だろうが7日目だろうが、仕事をするのが我々フリーランスです。
最終日は、<アジアの風>部門3本でした。
『僕は11歳』 (我十一/11 Flowers)
2011年/中国=フランス/115分
監督:王小帥(ワン・シャオシュアイ)
主演:劉文卿(リウ・ウェンチン)、王景春(ワン・ジンチュン)、閻[女尼](イェン・ニー)
時代はプロレタリア文化大革命(文革)が終息する前年の1975年。重慶の近くだと思うのですが、山中にある工場の町を舞台に、11歳の仲良し悪ガキ4人組が出会う事件を描いていくのが本作です。と同時に、この4人の成長を描く少々幼い青春グラフィティともなっています。
主人公となるワン・ハン少年の家は、父は舞台の脇役俳優(何かの理由から文化工作隊の一員にされた、という感じ)で、母は工場勤務。妹が1人います。父はワン・ハン少年に絵を描くことを勧め、特に印象派の絵について語ります。文革とは相容れない情操教育を息子に与えようとする父の姿から、文革の傷が臭ってきます。また、父は近所の人々との酒盛りの席で歌を歌った時も、ある所に来ると、「歌詞を忘れた」と言って歌うのをやめてしまうのですが、その先は毛沢東を称える歌詞になっていたのでした。
そんな文革の影をあちこちに潜ませながら、物語は、ある青年が妹をレイプした工場の顔役を殺して逃亡した事件を描いていきます。兄妹の父は上海出身のインテリなのですが、この山中の工場から上海に戻りたがっており、どうやらそこにつけ込まれて工場の顔役に娘をレイプされる結果になったようです。その女の子は、悪ガキ4人組にとって気になる存在だった女子学生であるうえ、ワン・ハン少年が逃亡中の青年と関わったことで、彼らにとっては忘れられない事件となってしまいます....。
まずびっくりしたのは、1975年当時の雰囲気がよく出ていること。私もその時代の中国を知っているわけではないのですが、小道具の端々に到るまで神経が行き届いたセットになっていたように感じました。それから、ワン・ハン少年を演じた子が映画監督のジャ・ジャンクーそっくりだったことにもびっくり。息子と言っても通るぐらい似ていました。あと、わからなかったのが字幕に出てきた「保皇派」と「411」という言葉。文革の文脈で出てくる「保皇派」って一体....。どなたかご存じでしたらご教示下さい。
『金(かね)で買えないモノ』 (金不換/Cure)
2010年/香港/93分
監督:葉剣峰(ビル・イップ)
主演:マカラ・スピナチャルーン、ジラーラット・テーチャシープラサート
3月の香港国際映画祭ですでに見ていたのですが、日本語字幕でもう一度。香港上映版なのか、中国語と英語の字幕が入っていました。以前に付けた、香港国際映画祭提供の画像をもう一度付けておきます。
『ラジニカーントのロボット(仮)』 (Enthiran)
2010年/インド/170分 インド公式サイト
監督:S.シャンカル
主演:ラジニカーント、アイシュワリヤー・ラーイ
これもすでにDVDで見たのですが、大画面+日本語字幕でもう一度。大画面の迫力がさらにこの映画をパワーアップしてくれます。プレス向けID上映で見たのですが、随所で笑い声があがっていました。結構インパクトは強かったみたいで、エンディング・タイトルになってもすぐ出て行く方はなく、余韻を楽しんでいらした気配が。この映画、イケるかも、という感触を得ました。
で、ちょっと不満だったのは、カタログの人名表記2カ所。TIFF事務局から人名カタカナ表記のお問い合わせが来て、タミル語専門の方の教えを請いながら一覧表を提出したのですが(こういう仕事は全部ボランティア)、TIFFのチラシでは正しかったものがカタログでは間違った状態に。配給会社の方、公開時はぜひ正しい表記を出すようにして下さいませ。以下の2人で、特にシャンカル監督の方は音引きをつけると完全に間違いになりますからよろしくお願いします。
監督:S.シャンカール →(正)S.シャンカル
主演:アイシュワリヤ・ライ → (正)アイシュワリヤー・ラーイ
【本日の拾い物】
ヒルズにあるTIFFの事務局と同じ階にある、ビジネスラウンジでゲットした中国映画『ここ、よそ』のプレスとスチール集。
スチール集は茶色い袋に入っていて、舞台となる中国の上海、内蒙古、パリのスチールがそれぞれ2枚ずつ。まず、上海篇です。
続いて、内蒙古の山の中篇。
最後がパリ篇です。
字幕と監督の通訳をなさった樋口(渋谷)裕子さんによると、監督のルー・シエンは画家でもあるそうで、それでどの情景も素敵なのですね~。一番上のプレスの表紙にある絵も、監督の作品かしら? というわけで、本日の拾い物80点。
私のアジア映画ベストスリーは、『哀しき獣』 (韓国)、『嘆き』 (イラン)、『ここ、よそ』 (中国)でした。皆さんはいかがですか? TIFFはあと2日ありますので、最後まで楽しんで下さいね!
なので、411派というのは造反派のことなのかなと
思ったのですが、原文は造反派となっていなかった
ので、何か意味があるのだと思い、そのままにしま
した。確信が持てれば造反派にしたんですが。
文革末期なのに保皇派が出てくるのは、たぶん巻き返しを図ったのだろうなとも思います。
ワン・ハン君、私も王小帥というより、ジャ・
ジャンクーと思いました。
なるほど、「保皇派」の「皇」は「皇帝」ではなく、「共産党エリート=貴族」という意味だったのですね。ご教示、ありがとうごさいました。
「411」の方は「4月11日」なのか、あるいは何か部隊の名称とかなのか、マダムでもご存じないとしたら、局地的にしか知られていない呼び方なのかも知れませんね。どんなグループだったのか、いつか謎を解いてみたいです。
カットが短くて「お~」「あ~」と思っているうちにコロコロ作品が変わってしまいましたが、なかなか面白かったです。サブリミナルにちゃんと洗脳されて帰って来ました。あ~、インドに行きたいです!!
ホントに『ボリウッド』は、「お~」「あ~」でしたね。たまに「この映画、何の映画?」と思ってもすぐ次が出てくるので、超高速で途中では止まれない、という感じでした。
TIFFの授賞結果で、『ラジニカーントのロボット(仮)』が最優秀アジア映画賞のスペシャル・メンションをもらっていてびっくり。審査員の方次第で、受賞作も変わるものですねー。「よくぞあそこまでやったで賞」なのかも知れません。