危うく午前様になる寸前に帰宅しました。昼間は暑いほどだったのに、11時前に上映が終わって外に出てみると、木枯らしに近い風がピューピュー。ヒルズだからよけいに風が強くて、「一挙に冬!」という感じでした。明日は冷え込みそうですね~。
本日は午前と午後のお仕事ダブルヘッダーを終えて、夕方から上映もダブルヘッダー。あとの方の上映は2本立てなので、結局3本見たことになります。それも、うまい具合に<アジアの風>の特集「ディスカバー亜州電影~アジア映画史アラカルト」のうちの3本を続けて見る、という絶妙のプログラミング。それぞれに作りが違っていて面白かったです。
『ボリウッド~究極のラブストーリー』 (Bollywood: the Greatest Love Story Ever Told)
2011年/インド/77分
監督:ラーケーシュ・オームプラカーシュ・メーヘラー、ジェフ・ジンバリスト
予告編1 予告編2
私が字幕を担当したので、もうさんざっぱら見てはいるのですが、大画面でもう一度見たい、字幕の乗り具合も確認したい、というわけでID上映で見てきました。いやー、映像に酔ってしまうとはこのことか、と思うぐらい楽しめました。シネスコ大画面のDCP上映、実に迫力です。
「インド映画通信」さんのブログに、「映画の原題が入っていればよかった」というコメントがあったのですが、元の画像には一切映画題名が入っていません。それを「小さな親切、大きなお世話」で日本語題名を入れられる限り入れたものの、DCP上映は投影字幕になるため、右側タテ字幕以外は入れられず。結局日本公開題名、あるいは日本語翻訳題名と製作年しか入れられなかった、という次第なのでした。これがDVD上映とかだと、タテ字幕以外にヨコ字幕を、上にでも下にでも入れられるのですが。
元の画像に一切映画題名が入っていないのは、あまりにもコラージュしすぎて入れられる状態ではなかったからだと思います。私も、歌は『心が望んでる』 (2001/原題:Dil Chahta Hai)の曲が流れているのに、映像では『見知らぬ男と見知らぬ女』 (2010/原題:Anjaana Anjaani)が長く使われている所は、題名を出すと誤解を受けるかも、と出しませんでした。ヒマになったら、映像と音声のソース一覧、とかいうのを作ってみたいのですが、はてさて、いつになるやら。
『韓国映画の秘密』 (Through Korean Cinema)
2011年/イタリア/70分
監督:レオナルド・チニエーリ・ロンブローソ
インタビュー出演:監督イム・グォンテク、パク・クァンス、イ・ミョンセ、イ・チャンドン、パク・チャヌク+トニー・レインズら評論家
予告編
5人の監督へのインタビューと、その作品のクリップ(元の画面にちゃんと英語題名と年号が入っています。ドキュメンタリーはこうでなくっちゃ)、そしてメイキング映像からなるドキュメンタリーです。それに評論家が、監督それぞれの位置づけや、その時代の分析などを話して補うという構成になっています。冒頭と最後に詩が読み上げられるのですが、その声はソル・ギョングとムン・ソリが担当しています。
最初に登場したイム・グォンテク監督、何だか急に老け込んだ感じで、ちょっと胸を突かれました。「自分の映画はあまり見ません。見ると、”なんだ、この程度か”と腹が立つから」という発言や、「納得のいく作品を作れないまま生涯を終えるのだろうな、と思っています」という発言の謙虚さに、しみじみ、いい監督さんだなあ、と思ってしまいました。『美しき青年全泰壱(チョン・テイル)』や『チルスとマンス』のパク・クァンス監督、『デュエリスト』のイ・ミョンセ監督(トニー・レインズが彼をそんなに高く評価してるとは知らなんだ)、『オアシス』のイ・チャンドン監督、そして『JSA』や復讐3部作のパク・チャヌク監督と、いずれも個性の強い監督たちの発言は面白く、韓国映画の歴史もバッチリ学べます。
『フィリピン映画への帰還』 (Return to Manila: Filipino Cinema)
2010年/フランス=フィリピン/57分
監督:ユベール・ニオグレ
こちらは冒頭、友人の映画評論家テディ・コーが登場してびっくり。白髪が増えましたねー(お互い様だけど)。お腹がぽっこり出てますねー(こちらもお互い様だけど)。そのほか、まだお元気だったのですか!のエディ・ロメロ監督や、ティコイ・アギルス監督、ブリリャンテ・メンドーサ監督(よく見るとハンサム)、レイモンド・レッド監督、ローリス・ギリエン監督(女優でもあります)らが出演。チャロ・サントスら俳優も加わって、それぞれにフィリピン映画との関わりや思い出を語ってくれます。
チャロ・サントスの語る、「学生時代は、女優ではノラ・オノール好きとヴィルマ・サントス好きとに分かれていた」という話なども面白く、また男の子は一様にフェルナンド・ポーJr.に憧れたようで、やっぱりな~、と納得しました。ただ、全体的に語りが多く、もっと映画のクリップが見たかった、というのが正直なところ。政治とからめたところなど、意欲は買いますが少々退屈してしまいました。
【本日の拾い物】
上の記事には画像が全然ないので、TIFFCOMでいただいたコンペ作品『夢遊 スリープウォーカー』の小型パンフからいっぱい画像をご紹介。
主演のアンジェリカ・リーです。プレス試写の時は2D映像だったのですが、本来は3D上映。ご覧になった皆さん、3Dでのあの恐怖はいかがでしたか?
この小型パンフ、おわかりになるでしょうか? 左上に「TIFF TOKYO」と入っています。今回のTIFFのために、わざわざ作られたパンフなんですねー。この努力、最終日に報われるでしょうか? 共演のチャーリー・ヤンとフオ・スーイエンの画像もあります。
これを下さったのは、香港貿易発展局のブースの方。香港から唯一の参加と言っていい貿易発展局ですが、資料やら香港国際映画祭のメモ帳やらいろいろ下さって、熱心に説明して下さいました。来年も絶対、香港国際映画祭に行こうっと。
TIFFCOMは月・火・水の3日間。明日もまた何か資料をゲットして来ようと思います。
イム・グォンテク監督、いいインタビューでしたね。監督の人柄が伝わってきます。
それぞれの監督、作品に取り組む姿勢の違いがはっきりとしていて面白かったです。
自分がもっと、監督と作品とをきっちり把握できていれば、もっと面白く観ることができたのですが。
フィリピン映画の方は、自分が楽しみにしていたあたりがきれいにスルーされていて、かなり消化不良でした。もっと、第二次黄金時代についても語って欲しかった。
でも、ローリス・ギリエン監督やチャロ・サントスのインタビューは面白かったですね。特に女子学生たちがノラ・オノール派とヴィルマ・サントス派に分かれて対立していたなんていうエピソードが楽しかったです。
キラキラと輝く万華鏡のような映画でした。
いつまでも回し続けていたかったです…
「小さな親切」はとてもありがたかったです年数を入れていただいたので、時代のイメージがすぐに浮かびました。映像がきれいだったので、古い映画でも鮮やかでしたよね。
「夢遊」、あまり期待しないで(失礼)行ったのですが、話がよくできていてとてもよかったです。3Dの必要性はあまり感じなかったんですが、Q&Aで監督が「白黒がカラーになった時代にも『なぜカラーで?』と質問されただろう。先端の技術で映画を撮るのは当然のことだ」というようなことを答えていて、なるほどねと思いました。ナマで女優さん俳優さんを見られて、すごいオーラを感じました~
フィリピン映画の第二次黄金時代というと、どのあたりを指すのでしょう? 独立前の『大洋のニンフ』(36)あたりが第一次で、独立後のサンパギータ、LVNといった大スタジオ時代が第二次ですか? で、第三次がブロッカ、ベルナールあたりとか? またお暇な折にでもご教示下さい。
いろいろ他の方のブログをチェックしてみたら、私がわからなかった題名を言い当てている方もいらして、皆さんすごいなー、と思ってしまいました。こういうのをきっかけに、日本でボリウッド映画がブレイクしてくれるといいんですが。
『フィリピン映画への帰還』の中でも触れられていましたが、リノ・ブロッカ、イシュマエル・ベルナールあたりを第一次黄金時代と呼び、1980年あたりの娯楽映画を山ほど作っていた頃を第二次黄金時代と呼ぶのだそうです。
『浄化槽の貴婦人』のマーロン・リベラ監督は、インディーズ映画がさかんに作られるようになったいまを第三次黄金時代と呼びたいと言っていましたが、はたしてどうなんでしょうね。
昨夜は『ボリウッド~究極のラブストーリー』を観てきました。めまぐるしく登場する名場面の数々にただひたすら陶然としてしまいました。あれはすごい編集ですねえ。
ラストで、モガンボ様が締めてくれているのにも大受けです。
『ボリウッド』も見ていただき、ありがとうごさいます。よしださんのブログも拝見したのですが、モガンボ様のキメのセリフは、「モガンボ・クシュ(喜び)・フアー(生じた)」となります。
あの編集、すごいだけにつなぎ方がまずい所も見受けられて、特に音声で気になるところが数カ所ありました。「もっと腕のいい編集者を起用せんかい!」と文句を言いつつ字幕作業をやっていた私です。絵と音を合わせるのがいかに大変だったか、ということでしょうね。