ムンバイは、縦に長い街です。『めぐり逢わせのお弁当』(2013)をご覧になった方にはおわかりのように、中心部のシティと呼ばれる古くからある街と、その北に広がる郊外部分からなります。そして、さらにその北のターネー市や、東に広がるナヴィ(新)・ムンバイもムンバイの範疇に入れることがあります。ちょうど首都圏が、東京と埼玉や千葉、神奈川から形成されている、という感じですね。私が今泊まっているホテルは、郊外部分の南寄り、アンデーリーという地区にあります。郊外は縦に鉄道が走っており、それを境にして東と西に分かれる地区が多く、私のいるコーヒヌール・ホテルは、アンデーリー(イースト)にあります。
このホテルはよく会議なども行われていて、朝食(右:豪華ビュッフェです~)を取るレストランに行くまでの間には、たいていいつも左のような会議受付場所が。そういう会議の中には、朝食付きのもあるようで(あるいは、一部の参加者だけに朝食券が配られるのかも知れません)、時間帯によってはレストランがすごく混み合って、宿泊者とは感じの違う人たちが溢れていたりします。また、国際的な会議では、ホテルに宿泊して参加する人もいるようで、先日は中国からの参加者である2人の女性に会ったりしました。朝食の席が隣り合い、英語で話し始めたのですが、お二人の間では普通話だったので、「ごめんなさい、広東語しかできなくて」と言ったら、「あら、私たち広州の出身なんですよ!」ということで、広東語で話がはずみました。
左のパン小姐は、ベルギー在住が長く、英語の他オランダ語もしゃべれるとか。映画の話になって、「『pk』ではベルギーのブルージュが出て来ましたね」と言うと、「あそこはとてもきれいな街でね」とスマホの写真をいくつも見せてくれました。ブルージュの映画祭に審査員としてやってきた、王全安監督(『白鹿原』の監督です)の通訳もしたことがあるそうです。右のシュウ小姐も英語が上手で、「王全安監督は、高圓圓と恋人同士だったのよね」とか、つい中国映画界のゴシップなどをしゃべり合うことになりました。私の予定が決まらなくて、夕食をご一緒できなくて残念でした。
今回このホテルを選んだのは、交通の便からです。国際空港まですぐの距離なのです。インドから東アジアに飛ぶ便は、大体が深夜の出発なので、シティのホテルに泊まると1時間余りかけてタクシーで行くことになります。すいている時間帯ならいいのですが、ここ数年、特に交通渋滞が激しくなり、シー・リンクという海上のバイパスができても焼け石に水。というわけで、ここ数年はずっと郊外地区に宿泊しています。幸い、シティよりもビジネスホテルが多く、空港近くには高級ホテルもずらり。半年ぐらい前に予約すれば、コーヒヌールのような四つ星でも9,000円で泊まれたりします。
問題は、シティでの用事を済ませるために、何度かシティまで行かなくてはならないことで、これまではアンデーリーより南のカール地区やバンドラー地区に泊まっていたため、そのままタクシーで行っていました。でも、アンデーリーからだと、距離が長くて時間もお金もかさむため、鉄道と地下鉄(メトロ)を利用することにしました。というわけで選んだのが、地下鉄のチャカーラー駅正面にあるこのホテルだったのです。地下鉄は上のようにピカピカの車両で、駅も清潔&快適です。特にこの路線は高架なので、高架鉄ちゃんの私にはピッタリ。駅で乗るたびにセキュリティ・チェックを受けなくてはいけない(下の写真左奥。飛行機に乗る時のように、荷物をスキャン台に乗せ、男女に分かれて係員のボディチェックを受ける)のがわずらわしいですが、それも安全のためと思えば、です。
地下鉄は、チャカーラーからアンデーリーまで20ルピー(約35円)。終点から終点まで乗っても40ルピーと、格安です。さらに安いのが鉄道で、アンデーリーから近くの駅なら5ルピー(約8円)、1時間ぐらいかかる終点のチャーチゲートまででも10ルピー(約17円)です。ただ、こちらは駅などの設備があまりきれいではなく、車両も一時よりはきれいになったものの、扉は閉まらず、朝夕の時間帯はものすごく大変な状況の中、乗らないといけなくなります。一等車にすると、値段は10倍になりますが、少し混雑は緩和されるほか、シートがちょっとだけソフトになります。アンデーリーからチャーチゲートは107ルピー(約180円)と高いように感じますが、タクシーで移動すると400ルピー(約680円)なので、それからするとずっと安いです。
プラットフォームにも電光掲示板ができて、行き先の略称(Cがチャーチゲート)、F(快速)かS(鈍行)かなどの区別がわかります。女性たちがいっぱいいるのは女性専用車両の乗り場で、これも上から掲示がぶら下がっているのですが、1列車に3~4箇所あるので、とりあえず女性の姿を捜し、複数いたらそこで待つ、というのが賢いです。そうそう、地下鉄でも女性専用車というか、スペースがある時があり、乗ったらこんな感じでした。
男性側は満員なのに、女性専用側はすいています。でも、規制線がちゃんとわたされているので、男性諸君は踏み込めないんですよね。女性は得だ~。また、地下鉄では、若い女性や男性から、よく席を譲ってもらいました。マナーも育ちつつあるようです。
話がそれましたが、列車に乗ると、必ず物売りがやってきます。たいていが女性でアクセサリー売りが多く、ヘアアクセもよくありました。こんな風につり革に商品を吊し、乗客に選ばせます。大体1個10ルピーか20ルピー。私もきれいなピンアクセがあったので、買ってみました。列車の場合、1等と2等はコンパートメントが分かれており、物売りさんたちはいったんホームに降りて、隣の等級のコンパートメントに移っていきます。大変ですねー。
最近は列車の中にも電光掲示板ができ、英語とヒンディー語で次の駅の表示が出る上に、アナウンスはマラーティー語、ヒンディー語、英語の3種類が。以前はアナウンスも掲示板もなく、必死で地図とにらめっこして駅を確認していたのもですが、今回はとっても楽でした。
ただ、乗り降りの呼吸や、席を譲り合うシステム、降りる駅を聞いて近い駅で降りる人の前に人が立つシステムなど、旅行者にはとまどうことも多いかも知れません。でも、そういうやり取りをしている女性たちを見るのは楽しく、席を譲ってくれたり、というか、3人掛けを詰めて端に座らせてくれたり、「私、次降りるから、ここに座れば」と言ってくれたりと、コミュニケーションがいろいろ取れるのがインドの列車の良さだと思います。
そうやってやってきたシティでは、まず買った紙物をG.P.O.(中央郵便局)から小包にして送付。サジャルさん(左)というもう20年以上顔見知りのベンガル出身パーセルワーラー(小包を作る人)の所に行って、布で覆った小包を作ってもらいます。この日は日本総領事館で運転手をしているというアシュラフさんという人が小包を頼みに来ていて、いろんなお話をしました。アシュラフさんは私に劣らぬ映画狂で、二人で映画話合戦をすることに。サジャルさんがあきれていました。窓口に小包を出すには、サジャルさんについて行くと、何事もスムーズに運びます。ただし、係員にちょい鼻薬もかがせねばならず、10.8キロ3,071ルピーで「おつりはいいです」と3,100ルピー差し出すことに。まあ、20、30ルピーは損しても、早くやってくれるし、サジャルさんへの貢献にもなるので、マダムは不正に手を染めるのでした。
そこからポスター屋さんに。おなじみ、ドリームランドシネマでタクシーを降りて、道をまっすぐ突き当たりまで(左)。そこを右に曲がった、このごちゃっとした並びに、ガーンディーさんの「ガーンディー・フィルム」と、ラージューさんの「マンシー」があります。
お二人とも元気でしたが、ガーンディーさんは下のお店を明け渡し、2階に移動していました。昨年、ご両親と、障害児だった下のお嬢さんを亡くしたとかで、宗教への帰依心が強くなったようで、教団の仕事するためにアメリカに渡るかも、という話でした。この人、最初はヤクザかと思ったのですが、長年付き合っているうちに、よき家庭人であり、まじめな商売人だとわかってきたことに加え、今回は思わぬ宗教心を見てしまった感じです。ポスターがほしい方は、早めに訪問して下さいね。古いポスターもいっぱいあります。なお、彼も郊外路線のかなり北から通っているため、12時ごろにならないと、店は開けられないそうです。
ラージューさんの所は相変わらずで、彼のお店の写真を使った本をあげたらとても喜んでくれました。年取ったお父さんもお元気で、何かとラージューさんに指図する(「マダムにお茶をだしたのか」「テーブルの上が汚れているぞ」等々)のがうるさいらしく、「えーい、うざいなあ」という感じが何だか若者みたいで面白かったです。どちらのお店もポスターは1枚40ルピー(約70円)。『Bajrangi Bhaijaan(バジュランギー兄貴)』などいろいろ買いましたが、この重いのを持って帰るんですねー、私。
ここからグラントロード駅に出て列車に乗ったのですが、グラントロード駅の左のトンネルには、パチもんのスターポスターなどをいろいろ売っています。ご覧のように、海賊版のDVD屋もいて(と紹介するとまた怒られそうですが)、まあ、そういう町なんですね、グラントロードは。今回は、列車やメトロの旅を十分に楽しんだムンバイ滞在でした。
そうそう、私がよくプレゼントにしたりするシール等は、アブドゥル・ラフマーン・ストリート(クロフォード・マーケットの所が南端になります)から1本横に入ったバージーパラ・レイン(Bhajipala Lane, Off A. R. Street)にあるお店Hiroo MFG.Coで買います。以前にも何度か紹介しましたが、今回お店の中の写真を撮らせてもらったので、付けておきます。
問屋さんなので、すごく安いです。それだけに、値引きは絶対なし。そう言えば、今回はガーンディーさんにもラージューさんにも値引きを申し出るのを忘れました。お友達になるのも、善し悪しですね~。
そして、ムンバイのシメはこれ。地下鉄の片方の終点ヴェールソーヴァーで昨年飲んでとってもおいしかったスムージーです。記憶だけで探して、やっと辿り着いた小さなお店ピシューズ。左がマンゴー&ブルーベリー、右がマンゴー&ベリーで、どちらも170ルピーと高いですが、その価値はあり。どなたも行かないと思いますが、お店の名前と住所を付けておきます。Pishu's, Shop 9, Nandkripa Shopping Center, Ratan Nagar, 4 Bunglows, Andheri (W)
では、また来年!
インド旅、満喫されているようで、ブログを呼んでいるこちらも楽しませていただいております♪
cinetamaさん、広東語もしゃべれるのですか!?
しかも、高架鉄ちゃんだったんですね!
さすが、アジア映画巡礼のcinetamaさん☆
そして、インドには小包作る人がいるんですか!?
いろんなお仕事があるのですね。
20年以上の顔見知りとは。
ということは、サジャルさんは、このお仕事を20年以上やっているということですね。
凄い(@_@)
まだまだ知らないこといっぱいです。
インドは、映画も電車もポスターも安くていいですね♪
日本は高くて・・・。
映画、インドくらい安ければ、もっといろんな映画をたくさん見れるのに~。
引き続き、インド旅のお話楽しみにしております♪
すみません、スムージーをシメに、ムンバイから香港に移動してきてしまいました。
というわけでインド話の続きはありませんが、よかったら、毎年3月のインド報告を遡って読んでみて下さい。
ムンバイのモノレールやらデリーのメトロやら、高架鉄ちゃん魂炸裂の報告がいろいろあります。
広東語は、1980年代後半に香港映画が面白くなった時に習い始め、ついには仕事を辞めて1993年に香港中文大学の語学研修所に留学してしまったのでした。
その後も続けているのですが、なかなかヒンディー語のレベルには達しません。
友人には広東語がよくできる人がいっぱいいるので、うらやましく思っています。
まあ私のは、旅行広東語レベルですね。
では、引き続き香港レポートをお楽しみ下さい。