やっと時間ができたので、配信で映画をせっせと見ています。昨日はインド映画2本立て+韓国映画1本を見る、という贅沢なことをやりました。韓国映画は間もなく公開される作品なのでのちほどじっくりご紹介することにして、Netflixで見たインド映画2本を簡単にご紹介しておきます。
『スケーターガール』
2021年/インド/ヒンディー語・英語/107分/原題:Skater Girl
監督:マンジャリー・マキジャニー
主演:ラーヘール・サンチター・グプター、アムリト(エイミー)・マゲーラー、ワヒーダー・ラフマーン
※Netflixにて6月11日(金)より配信中
観光地ラージャスターン州にあるケームプル村。中学生の少女プレールナー(ラーヘール・サンチター・グプター)は、レンガ職人の父親、畑仕事をする母親、そして弟アンクシュと共に、低カーストの人々が住む地区で暮らしていました。プレールナーは、貧しい家計を助けるために母の作った野菜を市場で売ることもあり、そうすると学校を休まざるを得ず、先生に注意されます。でも、着られる制服も教科書もなく、学校に行っても叱られてばかり。そんなある日、プレールナーはロンドンから村に休暇でやってきたジェシカ(エイミー・マゲーラー)と知り合います。さらにジェシカを訪ねて、インドで英語を教えている青年エリック(ジョナサン・リードウィン)もやって来ますが、エリックが乗り回すスケートボードに村中の子供が夢中になります。その姿を見てジェシカは子供たち用に10数台のスケボーを購入、みんな喜んで乗り回すようになりました。さらに、村の道で遊んでは「邪魔だ! 禁止する!」と言われてしょげかえる子供たちを見て、ジェシカはスケボー専用の練習場を作ろうと思い立ちます。民宿のオーナー青年の手引きで、この地方のマハーラージャーの屋敷に行ったジェシカは、マハーラーニー(ワヒーダー・ラフマーン)に訴えて、ついには土地の提供を承諾させます。こんなにもジェシカがこの村に心を傾ける背景には、彼女の父の事情があったのでした....。
インド人と欧米人が登場すると、どうしてもそこにプレゼントの山が築かれることになります。本作でも、ジェシカはプレールナーの窮状を聞いてまず学校の制服をプレゼントし、やがて子供たちへのスケボー、そしてスケボー練習場とどんどんプレゼントは膨らんでいきます。ジェシカの亡き父の存在が背景にあるとは言え、施し文化でいいのか、という気がしてきてしまいます。
女性監督マンジャリー・マキジャニーは、『炎』(1975)など多数の映画に出演した脇役俳優マック・モーハン(故人)の娘だそうで、アメリカとインドで映画製作を続けているのだとか。彼女の中では、「スケボーが解放する女性差別、スケボーによって自立し、幼児婚にも抵抗する女性たち」といったような図式が浮かんでいたのでは、と思いますが、その点での描写もあまり成功しているとは言えず、心に響くシーンがありません。さらに欲張って、村に存在する高位カーストと低カーストとの壁も描こうとしたりもするものの、ごくごく表面的な描写になっています。唯一心に残ったのは、プレールナーが自分の名前の意味を説明するところで、「”感動”っていう意味なの」と訳されていましたが、Prerna प्रेर्णा はむしろ「励まし」というような意味になります。予告編はこちらです。なお、予告編の始めに登場するスケボー練習場は、この映画のために実際に建設され、撮影終了後は地元の子供たちに愛用されているそうです。
Skater Girl | Official Trailer | Netflix
『美に魅せられて』
2021年/インド/ヒンディー語/136分/原題:Haseen Dillruba
監督:ヴィニール・マシュー
主演:タープシー・パンヌー、ヴィクラーント・マッシー、ハルシュワルダン・ラーネー、アーディティヤ・シュリーワースタウ
※Netflixにて7月2日(金)より配信中
こちらはなかなか巧みなサスペンス映画です。リシューことリシャブ・サクセーナー(ヴィクラーント・マッシー)は、田舎町ジュワーラープルに両親と住む電力会社勤務のエンジニア。壊れた家電製品を修理するのが趣味で、ホミオパティの薬に詳しいという、少々冴えないキャラのせいかいまだに嫁が決まりません。今回は、デリーに住むちょっと派手な美人ラーニー(タープシー・パンヌー)と見合いをし、互いに気に入ってやっと結婚にこぎつけました。しかしながら、ラーニーは家事はまるでダメで、姑は怒り狂います。美容師としての腕はあるので、舅の髪を染めたりカットしたりして舅はゴキゲンなのですが、奥手のリシューとも気持ちはすれ違うばかり。一時はラーニーに惚れ込んで、左手首内側に「ラーニー」とタトゥーまで入れたリシューでしたが、やっとベッドインしたあとでラーニーがデリーの母親にあからさまな不満を訴える電話をしているのを聞き、情熱も冷めてしまいます。そんな時、従弟のニール(ハルシュワルダン・ラーネー)が、渓流下りをするラフティングのインストラクターとして、夏の間稼ぐためにリシューの家に滞在します。たくましい肉体を持つニールを見て、ラーニーは彼に惹かれ始めますが...。
冒頭、両親が出かけている時にニールがリシューとラーニーを訪ねて来、ラーニーが買い物から戻ると家で大爆発が。室内ではリシューが遺体となっており、一方ニールは行方不明....というショッキングな事件が起きます。ラーニーが警察に呼ばれ、警部(アーディティヤ・シュリーワースタウ)に尋問されるシーンに過去のフラッシュバックがかぶさっていく、という構成で、三角関係の男女が描かれていくのですが、3人が3人ともどうしようもないヤツばかりで....と、コメディ風味のサスペンス映画という感じでした。ただ、タープシー・パンヌーとヴィクラーント・マッシーの演技がうまく、つい乗せられてしまいます。ラスト直前に登場する謎解きは、いろんな点で「ありえへん!」なのですが(止血もしないでまったく!)、達者なプロットに敬意を表して、いちいち突っ込まないことにしましょう。予告編はこちらです。
Haseen Dillruba | Official Trailer | Taapsee Pannu, Vikrant Massey, Harshvardhan Rane| Netflix India
この『美に魅せられて』の字幕も藤井美佳さんで、ちょっと下品な会話もさらりと流されていてさすが。うーむ、「ホタル(ジュグヌー)」か...(意味を知りたい人は『美に魅せられて』を見ましょう)。邦題はちょっとズレて訳してあって、美術館訪問みたいなタイトルになっていますが、「美しすぎる嫁」とでも訳すとピッタリかも。コロナ禍で、トップスターたちの出演作は劇場公開を待つために現在は一時お蔵入り。一方トップでない俳優たちの作品は、配信にどんどん流れてギャラも入る、というわけで、トップスターたちの存在が色あせつつある今のインド映画界、という記事が出たりしていました。タミル語映画『Mandela(マンデラ)』も、配信のためのリマインダー予約が日本でも始まりました。『ダルバール 復讐人』でも活躍するコメディアン、ヨーギ・バーブ初の主演作です。インドと同時配信で見られるのはありがたいのですが、この変則的な状況がいつまで続くのやら...と、少し心が疲れてきました。ヨーギ・バーブ主演『マンデラ』、元気の出る作品であることを祈ります。