アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

映画祭が始まる前に

2012-03-21 | アジア映画全般

第36回香港国際映画祭が今日から始まりました。正式なオープニング・セレモニーは夕方行われますが、その前にちょこっとDVDで映画を見てきました。

まず、ガラ・プレミアで上映されるオムニバス映画『美好2012』。顧長衛(クー・チャンウェイ)、蔡明亮(ツアイ・ミンリャン)、許鞍華(アン・ホイ)という中国語圏の3人の監督と、韓国のキム・テヨンによる、それぞれ20分前後の作品4本が集められています。このうち、韓国作品を除く3本を見ることができました。

顧長衛監督作品「龍頭」は、3人の男女の会話を基礎に、その同じ時に彼らのいる家の周りで起こっている日常的な出来事を描くもの。登場する猫はかわいいものの、あまり動きのない作品でちょっと退屈でした。

蔡明亮監督作品「行者」は、もちろん李康生(リー・カンション)の主演。坊主頭になり、赤い衣をまとった裸足のシャオカン君が、香港のいろんな場所に出没します。尖沙嘴のにぎやかな通り、湾仔の拝み婆さんの所、アイスクリーム売りの車の前、旺角の歩行者天国....。約20箇所で彼は右手にハンバーガー、左手に白いビニール袋に入れた飲み物を捧げ持ち、頭を垂れてそろりそろりと歩を進めます。気づかない振りをして通り過ぎていく人、物珍しそうにじっと見つめる人、ケータイで写真をとる人....。さまざまな反応を引き出しながら、夜の街をさまよった行者は、新聞の卸場所で朝を迎えます。すごく辛抱強いショットがあるかと思えば、すぐに終わってしまうショット、ロングで盗み撮りのようにしたショットなど、この撮り方にどんな意味があるのかしら? と、いろいろ楽しめる作品です。

許鞍華監督作品「我的路」は、呉鎮宇(フランシス・ン)の主演。性同一性障害を自覚した主人公が、中学生の息子もいるのに妻(ジェイド・リョン~懐かしいです)にマンションを渡して家族と別れ、一人安アパートに住んで女性としての道を歩き始める、という物語です。性転換手術や、実際に性転換した女性たちが登場しますが、何だか呉鎮宇の女装はゴツくて、かえって痛々しく思われてきます。それを狙ってのキャスティングでしょうか。でも、黒いストッキングの足の線がとってもきれいで、うらやましかったです。

韓国編は見られなかったのですが、「美好2012」のいろんな解釈が提示されているとはいえ、「う~む」というのが正直な感想でした。

あと、東京国際映画祭の時見逃したフィリピン映画『浄化槽の貴婦人』を見ました。昨秋のTIFFで見た人が異句同音に「おもしろかった~」と言っていたので、どんな風に面白いのかと不思議だったのですが、いや、これは確かに「おもしろい」という形容が一番ぴったりです。賞狙いの映画をスラムで撮ろうとする若者3人が、プロットを作っていく過程や、主演女優を決める過程などをユーモアと皮肉たっぷりに描いていて、ユニークな映画になっています。アジアン・フィルム・アワードのユージン・ドミンゴさんの達者な演技を、またまた楽しませてもらいました。

それから、夜の開幕イベントまで時間があったので、AMC又一城という映画館で『アウンサン・スーチー(ザ・レディ)』を。

アウンサン将軍の暗殺から始まるこの作品は、アウンサン・スーチーさんとその夫の愛情を中心に、家族の絆を強く結び合いながら、ビルマの民主化に向けて闘う二人を描きます。スーチーさんに扮したミシェル・ヨーが熱演で本当にはまり役。夫役のデヴィッド・シューリス(という俳優さんらしい)と共に、ご本人たちが演じているかのようでした。英語の会話が多く登場する、とか、ミシェル・ヨーが髪に飾る花がご本人よりも派手とか、小さな違和感はありましたが、リュック・ベッソン監督は手堅い演出で見る人を映画に引き込んでくれます。グッとくるシーンも多く、133分という長さも全然気になりませんでした。日本でも公開されることを願っています。

その他、街中の映画館では『桃姐』を始め、張家輝(ニック・チョン)と任達華(サイモン・ヤム)の『大追捕』など、面白そうな中国語圏映画をいろいろやっています。そうそう、インド映画『人生は一度だけ』も上映中。おいおい暇を見つけて見ることにしますが、『桃姐』はポスターをゲットしました。本屋さんで劉徳華(アンディ・ラウ)著「我的30個工作天~<桃姐>拍■日記」が発売されていて、買うと下のポスターが付いてくるのです。得しました~。

では、あとは開幕イベントのご報告まで、ちょっとお待ち下さいね。

*印:第36回香港国際映画祭提供

 


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