その中でCPUクーラーの風を当てれば更に温度を下げられる可能性があると紹介しました。
そこで試しに厚紙を使ってダクトを作りCPUクーラーの風を当てて見たのですがほとんど効果が有りませんでした。
理由はCPUクーラーの風が思いのほか弱かったからです。
ソフトウエア(今風にいえばアプリ)を起動していないアイドリング状態ではCPUの温度が低く、CPUクーラーのファンは低速で回転しており、風は余り出ていませんでした。
技術の進歩でCPUの低電力化が進み、昔のCPUに比べると発熱が少なくなっている訳です。
約30年前、インテルが初代のPentiumという名前のCPUを発売した頃、CPUの発熱で目玉焼きが出来るなどと言われていました。
実際の消費電力はそれほど大きくはなく、仕様書では最大でも15W(3.3V版)になっていました。
これでは目玉焼きはできそうにありません。
当時、ペルチェ素子を使ったCPUクーラーが流行っていましたが馬鹿な事をするものだと思っていました。
ペルチェ素子は電流を流す事によって熱を移動することが出来る熱電素子です。
車に搭載出来るポータブル冷蔵庫などに使用されています。
冷却するために電力を使用します。
必要な電力は決して小さくありません。
重要なのは温度が高くなる側の放熱をきちんとしなければならないことです。
ペルチェ素子も発熱するのでうまく放熱してやらないとペルチェ素子の温度が上昇し冷却側の温度が上がってしまいます。
下手をすると冷却しているつもりが加熱しているということが起こり得ます。
CPUクーラーの場合、CPUの熱を奪う為にペルチェ素子に電力を供給し、その電力でペルチェ素子が発熱しCPUとペルチェ素子の両方の熱をファンを回して放熱しなければならないという矛盾が起きていました。
もしかしたらペルチェ素子の発熱も加わって目玉焼きが出来たのかもしれません。
新し物好きが理屈を理解せずに飛びついたのでしょう。
予想通りあっという間に姿を消しました。
その後はヒートパイプを使う物が主流になりました。
ヒートパイプは電力を消費せず、気化熱を利用しているので使いやすい熱伝導素子です。
もともとは肉などの内部に熱を伝えて中からも加熱調理するのに使われていました。
CPUの消費電力は性能の向上とともに増大して行きました。
初代のCore i7-920などはTDP(Thermal Design Power:熱設計電力)130Wになっていて最大で130W分の発熱を想定してパソコン本体を設計する事になっています。
単純に比較出来ませんが初代Pentiumの約10倍ですね。
(性能差は10倍どころでは無いです。)
その後、低電圧化、配線パターンの微細化による消費電力低減がなされ同じコア数、クロック周波数であれば消費電力そのものが減っています。
また、負荷が軽い時にはクロックの周波数を下げて低消費電力化するSpeedStepテクノロジーなどが組み込まれるようになりアイドリング状態での消費電力はかなり抑えられるようになっています。
i3-8100はTDP65WでSpeedStepテクノロジー対応ですのでアイドリング状態では発熱が小さいのだと思われます。
CPUクーラーの風があてに出来ないことがわかったのでSSDの温度を下げるには小型のファンを用意してヒートシンクに風を当てるしか無さそうです。