井上章一さんは(、雑誌『AERA』で)電車の中で大声で泣き出した子供に、
「元気だねえ」と声をかけられたら、
「生きていること自体が人に迷惑をかけている」という意識を持つことがこの国でうまく生きていくコツであるといっている。
ありがたいお言葉である。
さっこん香料の問題被害などでも、
「人に迷惑をかけてもよい」という若い人たちの風潮があるので、よく言ってくださったという思いである。
またこういうことも氏はおっしゃっておられる、
ピアノを弾いて、近所の人から、
「お上手ですね」とほめられたら、
「やかましくてすみません」と謝るのが正しい姿勢ですと。
わたしの近所でも民家でやっている小さなピアノ教室があって、そこを通ると四六時中ピアノの音が聞こえていたりする。隣の家の人たちはどんな思いで暮らしていることだろう。
こういうことが多いのは日本の若者だけではなく、
「人に迷惑をかけてもよい」というおかしな風潮が日本ではまかり通っているからであろう。
日本人は後進国・新興国に学ぶのではなく、自国文化を深く学び理解するか、かつてのヨーロッパのような文化的に成熟した国の文化をもう一度学びなおしてよい点は見習ったほうがいいと思う。
それにしても井上さんの言葉から分かることは、わが身の処し方である。ほめられても鼻高々になるのではなく、わが身をふり返って、わが身を正す。自分が見えていない人にはできないことである。