あれから5年、
最も恐ろしいのは
ユナイテッド93の悲劇が忘れ去られてしまうこと
■監督・脚本 ポール・グリーングラス
■キャスト コーリイ・ジョンソン、デニー・ディロン、タラ・ヒューゴ、サイモン・ポーランド、デヴィッド・ラッシュ
□オフィシャルサイト 『ユナイテッド93』
2001年9月11日。 ニューアークの空港は、朝の喧騒に包まれていた。 離陸の準備を整えたユナイテッド航空93便は、40名の乗客を乗せ、サンフランシスコへ飛び立つ。 その直後、ワールド・トレード・センターに2機の民間機が激突した。 その頃、ユナイテッド93便の機内でも、テロリストが爆弾を持って操縦室を制圧。 機内は混乱に陥るが、地上で起こっている事態を知った乗客と乗員たちは、わずかな武器を手に立ち上がった…。
おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★
この事件をニュースで知ったとき、夜11時過ぎのTVのニュースだったと思う。 最初何が起こっているのかわからず、しばらくしてから事の重要さ理解した。
まず、ニューヨークの友人にメールを入れた。 ワールド・トレード・センターの中ではないが、すぐそばで仕事をしているからだった。 ちょうど通勤中か、もしかしたらすでに勤務中だと思ったその時間、いつもすぐにレスが来るのだが、なかなか来ないので気が気ではなかった。 結局次の日の朝、無事が確認されたが、友人の多くがこの事件で亡くなったことを知らされた。
あまりに全世界的だったこの事件、僕の好きなポール・グリーングラス監督がどんな風に事実を伝え語り映像として残すのか楽しみだった。 楽しみと言うのは語弊があるのかもしれないが、日本が広島や長崎の原爆の史実を風化させてはならないのと同様に、ひとつの歴史的事実を曲げないで後世にも伝わるものとして作り上げて欲しいという願いといった方が良かったのかもしれない。
この映画に主役はいない。 メジャーな役者も配していない。 まさに知らざれざる93便の中で起きた壮絶な事実を多少の推測部分はあるものの、遺族やこの史実にに携わった人たちの実話を元に描かれていた。
緊迫感を煽るためだろうか、ハンディの多用で映像に関しては少し疲れたが、機内で実際に起こっていたであろう雰囲気は十二分に伝わってきた。
実際に死に直面した人たちが、爆弾を偽者だと判断し、更に自分たちの命を犠牲にしてまでも、引き換えに無実な多くの人たちを救うために結束し闘う。
多少、おまぬけな犯人たちの描き方には吹きだしてしまう場面もあったが、ただ実際にはテロリストの側面はこんな感じなのかもしれない。 特に自爆犯は。
この映画でもう少ししっかりと描写して欲しかったのは“時間軸”だ。 管制センター、防空指令センター、軍上層部等々のやり取りの中で、その時間的展開が明確でない。 英語圏の人なら字幕なしで問題ないのだが、この映画を字幕で観る人たちには、そのやり取りの字幕を読んでいるだけで前後関係、横の関係がなかなかつかみにくい。 展開の速さと映像にその緊迫感を持たせることは十分なのかもしれないが、残念ながらそれよりも、時間的推移をもっと明確且つ的確に観ている側に理解させなければならなかっただろう。
そう思った原因のひとつには、このエンドロールを観てわかったのだが、管制センター、防空指令センター、軍上層部等々のやり取りの中で実際にこの事件に関わった当時の本人たちが登場していたことを知ったからだった。 これは本当に重要なことであると同時に、史実を曲げずに臨場感をもたせるには貴重なことだったと思う。
全世界を先行しているようなアメリカだが、実際に危機管理が出来ていないところを如実に露呈した事件だった。 昨今、「内部統制」という言葉が色んなビジネスシーン、企業内で問題視されている。 最新の兵器や最新鋭の設備を備えていても、それを的確な判断力と迅速な決断・指示のできないリーダーがいないと、こういった不意打ちのような事件を回避することはできないし、対処すらできないことを考えさせられた。
エアフォースが飛び立ったことニュースだ劇中で流されたとき、脳裏をよぎった映画があった。 それはあのマイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』でのアポなし突撃ルポだった(笑)
このあと、ニコラス・ケイジ主演の『ワールド・トレーディング・センター』が公開される。 映画の出来は別として、『ユナイテッド93』同様、史実の映像化は避けて通るべきではないし、後世に残すべき重大でワールドワイドな社会的事件である。
この時期にイギリスで、テロ未遂事件が発覚したが、飲料水や化粧品等、今までの簡単に持ち込めていたものに盲点があったなんて、ここにも危機管理の杜撰さが露呈したニュースだった。
大惨事を回避させたユナイテッド93の乗客の勇気ある行動に改めて敬意を表したい。
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こういう作品や「ホテル・ルワンダ」などは映画という感じがしなくて、いつものように★何個という評価は当てはまらないような気になってしまいます。
真実についていろいろ言われていますが、事件が風化する前にこのような手法の映画で「9.11」に関するものが皮切りになってよかったのではないでしょうか。
パンフを読む限り(鵜呑みにしてはいけないのかもしれませんが)製作者側と遺族の関係はとても良好だったようですし。
>こういう作品や「ホテル・ルワンダ」などは映画という感じがしなくて、いつものように★何個という評価は当てはまらないような気になってしまいます。
そうですね^^ 評価すべきではないですが、ま、個人的な意見の範疇で、ということで^^
>真実についていろいろ言われていますが、事件が風化する前にこのような手法の映画で「9.11」に関するものが皮切りになってよかったのではないでしょうか。パンフを読む限り(鵜呑みにしてはいけないのかもしれませんが)製作者側と遺族の関係はとても良好だったようですし。
賛否両論あって仕方がないところだと思いますが、史実は史実として真摯に受け止めたいですね。
今なお諸説入り乱れ、最近もまた未遂事件が起きているようですが、事件を風化させないためにも見ておくべき映画だと思いました。
この映画は、あの一日を感情移入することなく淡々と描いた手法に好感が持てました。
>9月11日が近づいてきましたね。
そうですね!
>事件を風化させないためにも見ておくべき映画だと思いました。この映画は、あの一日を感情移入することなく淡々と描いた手法に好感が持てました。
そうですね^^ もう少し時間軸をハッキリと描いていたら、分かりやすかったでしょうね^^
TBありがとうございました。
アメリカでは「時期尚早」という意見も
あったようですが、ロンドンでのテロ未遂事件
などが発生する今だからこそ、9.11は
今も終わっていないという意味合いをこめて
発表される異議のある作品だと感じました。
国や人種は違えど、この歴史的な大事件は広島・長崎の原爆同様忘れてはいけない出来事だと思いますね。
劇中の出来事が100%真実とは言えないですけど、そのリアルな描き方は本物さながらのようでした。グリーングラス監督の真摯な思いのようなものをこの作品に観た気がします。
TBありがとうございます。
充分臨場感に溢れていて、見ていて辛い作品だったのだけれど、時間の経過がもっとわかれば・・と私もそこだけは思っていました。
それはそれでカウントダウンをしているかのようになり、もっともっと辛くなったのかもしれませんが。
犠牲になった方々の冥福をお祈りしたいと思います。
>ロンドンでのテロ未遂事件などが発生する今だからこそ、9.11は今も終わっていないという意味合いをこめて発表される異議のある作品だと感じました。
異議?意義ですよね! テロ未遂事件はたまたまタイムリーになりましたが、でも忘れてはならない事件ですよね。
>国や人種は違えど、この歴史的な大事件は広島・長崎の原爆同様忘れてはいけない出来事だと思いますね。
そうですね!
>そのリアルな描き方は本物さながらのようでした。グリーングラス監督の真摯な思いのようなものをこの作品に観た気がします。
彼ならではの映像ではありましたが、やたらその臨場感を出すためのハンディ映像はちょっと・・・でした><
>充分臨場感に溢れていて、見ていて辛い作品だったのだけれど、時間の経過がもっとわかれば・・と私もそこだけは思っていました。
たいむさんも感じられましたか? そこにもこの映画の、いや実際その時起こったことの重要さが時間軸にあったと思います。
>それはそれでカウントダウンをしているかのようになり、もっともっと辛くなったのかもしれませんが。
でも、それは事実であり、曲げることの出来ない真実でもあるのですから。
>犠牲になった方々の冥福をお祈りしたいと思います。
本当に、二度とこんな惨事は回避したいですね!