シアター・パイプオルガンとかシネマ・オルガンと呼ばれる楽器は、1900年代にアメリカで生まれ、無声映画のシーンに合わせ音楽を奏でたり、動物の鳴き声や機関車等の効果音を発したりと、たいそう映画を"音で彩った"そうです。
パイプの音のみならず鍵盤と連動させた打楽器、時には管楽器やバンジョー等も鳴らしたと言いますから何とも大がかりな楽器で、そのコンソール(演奏台)も四段マニュアル(鍵盤)とか豪華なものだったようです。
後にトーキーの時代となり、多くは映画館からお役御免となりますが、その独特の音色には熱心なファンがいて、アメリカでは「シアター・オルガン・ソサエティ」と言う団体もあるそうですし、日本ではその音を目指した電子オルガンもあります。
ローランド創始者の梯さんもシアター・オルガンを愛した様で、電子オルガン市場が下り坂の1994年に、ミュージック・アトリエというシアターオルガン・タイプの楽器を発表し、ヤマハやハモンドのファンと違う層を掘り起こし、今も現行モデルがあるようです。
ヤマハも一時期海外専用モデルとして、シアター・オルガン的な音色を持つ電子オルガン(確かARという型番) を発売していましたが、今は現行モデルは無いようです。
私が聞いた事のあるレコードはごく僅かですが、その乏しい中から紹介すると、①は出したアルバムが60枚以上という巨人、ジョージ・ライトの2in1のCD。
②はウーリッツァー社のオルガンを使ったレナード・マクレイン1956年のアルバムで、これは劇場で聞くオルガンを想像させます。ジャケットの雰囲気と音楽とがぴったり合い、テレビ映画などで見ていた50~60年代の豊かな国アメリカ、そんな事を感じさせる好きなアルバムで、その中から1944年の映画の曲「ローラ」をYouTobeにUPしてみました。
③はロリン・ホイットニーのアルバム。氏は「パイプオルガンの福音伝道者」と呼ばれ、ラジオ番組のオルガン奏者として有名だったそうです。中から讃美歌「How Great Thou Art」を聞いてみて下さい。この曲は日本では「輝く日を仰ぐ時」の題で歌われているそうです。
ここで使われているのはロバート・モートン社のオルガンで、同社はウーリッツァー社に次ぐ2位メーカーですが、生産量はウーリッアー社の半分程度だったらしいです。奏者のレジストレーションの好みなのか?楽器の違いなのかまではわかりませんが、流麗な音色は引けをとらず素敵です。
なおウーリッツアー社は、後にジュークボックスの製造に乗り出し、よくオールディズのジャケットで見かけたりし、一般的にはジュークボックスの会社で有名かも知れません。
シアターオルガンを弾いている映像はネットに結構ありますが、鍵盤と連動して他の楽器類も動く映像を参考まで。⇒ Dave Wickerham Chitty Chitty Bang Bang
名古屋に単身赴任していた頃に、金山に面白い中古レコード店があり、隅にひっそりと?ハモンドのコードオルガンとか、当時はレアなオルガンのレコードが何枚かあったので、これらを買い求めましたが懐かしいなぁ、店は今もあるのかなぁ。
生でシアターオルガンを聞いた事は無いのですが、日本橋三越に1929年に納入されたウーリッアー社のオルガンがあり、昨年9月に大規模修復が済み、コンサートも催されているとか。札幌からその為に行くほどでは無いにせよ、機会が合えば聞いてみたいものです。【参考にしました】 ワーリッツァー社の歴史(大和音響株式会社HP) 全日本電子楽器教育研究会第42回ワークショップ
以上は、旧teacpuブログ「シアター・オルガンの時代」(2018/12/14)に加筆し再掲載したものです。