先に書いたホーボーズ・ソングで思い出したのが、60年代にも "今の時代の放浪者の歌" と言われた曲が結構あったと思います。が、残念ながら私は2曲しか思い浮かばなくて。
その1曲がイアン&シルビアの「風は激しく」で、まさに季節雇いの労働者が歌われ、「強い風に波の高い海、良かった僕らの時は過ぎ、僕は仕事を求め行かなくてはならない…」 そんな内容が美しいメロディに乗って印象的な曲でした。また、小僧だった私には、途中でブツっと切れたような終わり方も印象に残ったのですが。
そしてもう1曲が、カナダを代表するシンガー・ソングライター、ゴードン・ライトフットの「朝(あした)の雨」で、これはP・P&Mなど多くの歌手に歌われていました。
1ドル札を握りしめ、ポケットには砂だけが。故郷を遠く離れ恋人も失い、帰りたくとも金は無く、いま飛び立とうとしている飛行機、あれに乗ると三時間で故郷に帰れるのに、俺は酒を喰らって飛行場の草むらで酔い潰れている。朝の雨に打たれながら…
ホーボーの時代のように貨物列車に潜り込む事も出来ず、飛び立つ飛行機を見つめての失望と望郷の念… 名曲で、私が最初に耳にしたのはジュディ・コリンズのベスト盤からでしたが、そのオリジナルを聞いたのはずっと後になります。
ライトフット自身の歌を最初に聞いたのは、71年にワーナーに移ってのアルバム「人生の夏の日」からで、これが気に入り次作の「ドン・キホーテ」、「懐かしきダン」、大ヒットとなった「サンダウン」と買い求めたのですが、そのあたりから少しずつ好みからは外れて来て。
その間に買ったワーナーでの1枚目「心に秘めた想い」の方が気に入って、そうしている間にキングからU.A時代の「サンデー・コンサート」が発売され、これが気に入って、60年代のライトフットの方を中心に聞くようになります。
このCDは一番のお気に入りで、66年の「ライトフット」から、U.A時代の4枚のアルバムの全てが入った2枚組で、合計49曲も聞けるというお得盤。
ここではごく初期の「ロング・リバー」などの、写真でしか知らないカナダの雄大な自然が目に浮かぶ様な曲も多く、アメリカのシンガー・ソングライターとは一味違うこの感覚や、ギターの上手さにも感動したものでした。
ライトフットさんはカナダを代表する音楽家として、1986年にカナダの音楽の殿堂入りし、その式典でプレゼンターを務めたのは、ボブ・ディランだったそうで、ディランは以前「ゴードン・ライトフットの曲で好きじゃないものは思いつかない。彼の曲を聴く度に永遠に続いて欲しいと思う」と話していたそうです。
そんなライトフットさんですが、今年の5月に入り亡くなられていた事を最近知りました。
ライトフットさん、多くの素敵な曲をありがとうございました。久し振りに歌声を耳にしたのが訃報を知ってからとは残念でしたが、今はどうど、ゆっくりお休みになって下さい。
※2013年のteacupに書いたブログの加筆・再掲載なので【聞きたい365日 第〇話】のカウントはありません。