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DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

春になると少女は_160414

2016年04月14日 | 創作帳
春になると
少女は

さくら色のワンピースを
身にまとい

すみれ色のスカーフを
首に巻き


白いひな菊もようのくつを
はきます


それから

スケッチブックと
黄色の色鉛筆をいっぽん
かばんに入れて

川の土手へ
出かけます

土手には
一面のたんぽぽ

少女は
花のそばに
そっと腰かけると

黄色い色鉛筆を取り出し

たんぽぽを
画用紙いっぱいに
写します


写し終わると

たんぽぽを
描いた

画用紙で
舟を作ります


そして


できた舟を
川面に浮かべ
乗りこみます


少女は
いったい
どこへ?





(一度だけ、少女に聞いたことがあります)


「会いたい人がいるのです
二月の風に吹かれたまま動けないでいるのです」と





春になると
少女は


さくら色のワンピース
すみれ色のスカーフを

風に
そよがせ

それがどこかわからない
水辺を目指し

たんぽぽ色の舟を
漕ぐのです





えんぴつの希望_160412

2016年04月12日 | 創作帳
ある時、とつぜん、
えんぴつは、字や絵が書けなくなりました。

えんぴつは、おろおろと、かなしみました。

「どうしよう。どうしたらいいんだ。
 書けないえんぴつはえんぴつではないではないか。
 どうしたら、もとのふつうのえんぴつみたいに、書けるえんぴつになれるんだ。
 自分は、えんぴつとして、えんぴつであるために、やらなければならないことが、
 まだまだ足りないから、こんなふうになってしまったのだろうか」

えんぴつは、えんぴつだけが描ける希望や夢があるのだと、ずっと信じていました。
その希望や夢を消さないようにと

(どうしたらいいかやり方もわからないので思いつくままに)

ある時は
からだにぎゅうきゅうチカラを入れてみたり
ある時は
冷たい水や熱い湯の中に身を投げてみたり
ある時は
からだぜんぶを、壁や床や机にたたきつけてみたり
ある時は
細いからだを、さらに削って細くしてみたり

そんなことを、やっているうちに、
えんぴつは、書けるえんぴつになるのが、
えんぴつの、希望なのか、反対に、疲れ果てて希望を失うことなのか、
さっぱり、わからなくなりました。


いまだにえんぴつには
わからないままです。

わからないまま、えんぴつは
このままえんぴつにもわからないどこかに
行こうとして
そして、そのことが希望なのか絶望なのかを判断しまうのは
ひどく無意味な気もして
筆箱を出たり入ったりしています。









ぐーちょきぱー_160408

2016年04月08日 | 創作帳
ぐーちょきぱー

ぐーばかり出していたら
手が石になってしまいました

ぐーちょきぱー

ちょきばかり出していたら
指がはさみになってしまいました

ぐーちょきぱー

ぱーばかり出していたら
てのひらが紙になってしまいました


それで


お酒ばかり飲んでいたら
からだがグラスになってしまいました


泣いてばかりいたら
ないぞうが海水になってしまいました


夢ばかり焦がれていたら
心がシャボンになってしまいました



ぐーちょきぱー


ぐーで
海水に泡をたてて

ちょきで
海水をきりさいて

ぱーで
海水をかきわけて


グラスになったわたしは
ジャンケンしながら
海をゆきます





逆立ちキリン_160405

2016年04月05日 | 創作帳
長いお首が、逆さまの
細いお足が、逆さまの
キリンさん

あなたの草原には
何が見えますか。

逆さまの土や草や花や虫?
逆さまのなかまのキリン?
たまにやってくる、逆さまのニンゲンの足?

あなたにはあなたの草原にある
景色がその目にたくさんたくさん見えると思うけれど

あなたの草原の、
その向こうのまた向こうの
キリンの住まない草原にいるわたしのすがたを
見るのは、きっと、かなわないことでしょう。


かなわないことなど
じんせいにはたくさんある?
そうですねそうですね。その通りです。


かなしいことなのですが、もうひとつ
わたしにはかないそうにないことがあります。

わたし、
逆立ちができないのです。

いくらがんばっても
(今のところ)できないのです。

なので
逆さまのあなたが見る景色を見ることは
またかないそうにないことなのです。


でも
わたし、あなたの好物(だと聞きました)青い草を食べ
草原をさやさやと渡る風に吹かれているうちに
気がつきました。

自分の位置が逆さまではないと
思い込んでいましたが
それは単なる思い込みではないかと。

あなたの逆さまはあなたにとって逆さまではなく、
わたしが逆さまでないことはあなたにとっては逆さまなのです。

あなたからみれば
わたしのみる景色は
あなたの逆さまということで。

言い換えれば
どっちも
逆さまということで
どっちも
逆さまでないということで。


むずかしくなりました。
草を食べることにします。


それでつまりは

逆さま笑い顔逆さま泣き顔のあなたへ
ただただ
青い青い草がなびくささやかな風を
送ることができたらと思うのです。









黄色い羽

2015年07月09日 | 創作帳
背中を
何度も何度も
だいじょうぶ、だいじょうぶ、って
なでては、鳴いて、くれるんだ

山の途中でカナリアが
背中をなでてくれるんだ
人の肌よりの倍も倍も軽やかなその黄色い羽は
だいじょうぶの色なんだ

羽毛のように、
だいじょうぶが飛ぶんだ

根拠のある、だいじょうぶ?
根拠のない、だいじょうぶ?

もはや
どっちでもいいことだよ、と
だいじょうぶの呪文とともに
羽は祈りの文言になったんだよ


羽は、ただなでるんだ
時々、いいよもう、って
はらいのけてしまうのは
わたしにまだ羽がないからなんだよ
きっと


信じられるか、られないか、
もはや、答えは、ないんだよ

鳥の、羽ざわりと
黄色い、世界の、希みが

背中に触れれば
世界は答えを求めないんだよ





(画像提供は「写真AC」みーゆさんより。ありがとうございます)



カゲ

2015年05月29日 | 創作帳
カゲは、わたしと共にいました。
太陽や光に当たると、カゲは必ず、わたしに寄り添い
カタチを、さまざまに作ってくれました。

寄り添うカゲは、わたしの大切な宝でした。
カゲの作ってくれるカゲは、非常にわたしに親しいカタチで、
それでいてつかみどころのないものです。

それでも、わたしは今にもきえそうなカゲの手とおぼしきものを取り……
(正確には手をとったつもりになり)
わたしたちはよくダンスをしました。
ダンスといってもふたり一緒に気の向くままに揺れている、そんな感じの動きです。
ダンスは、笑顔の時も。悲しい時も。つらい時も。苦しい時も。

気まぐれに現れては消えるカゲを、わたしはつかまえて、大事な宝物を入れる自分の「宝箱」に入れたいと
よく思いましたが、

カゲは、はっきりとつかむことなど、できませんし、
第一そんな愚かなことをしてはいけないと、わたしは分かっているつもりです。
箱に入れるなどして閉じ込めてしまったら、
カゲはカゲの自由さ-たやすくカタチを変えたり気まぐれにふっと消えたり登場したりする力(それはカゲのすべて!)-
そのような魔法の力とも呼ぶべき力を失ってしまうでしょうから。



あるとき、わたしは病を患ってしまいました。
光に当たることのできない病気でした。
光に当たってしまうと、全身が震え出し、呼吸が苦しくなってしまうのです。
命さえ奪ってしまう病でした。

何よりもわたしを悲しませたのは、
光に当たれないこと、というよりも、光に当たらないことによって「カゲに会えない」ということでした。
光が現れるとき必ずカゲもやってくるのです。

わたしは、光の当たらない部屋に閉じこもり
何年も何年も泣き暮らしました。

暗い部屋の中で、たまに小さな頃から大事にしている「宝箱」を開けて眺める、そんな生活が続いていました。
宝箱の中には、お気に入りの石だとか指輪だとか、子供の頃から集めていた、他愛のないものが入っているだけなのですが。
カゲに会えない今、そんなことくらいしか、できない自分でした。


ある日、いつものように、宝箱を開けると

え?

中に、何か、黒いような、形の定まらないようなものが、よぎったようでした。

もしかして……
カゲ?
カゲなの?
わたしに会いに来てくれたの?



それ(カゲとおぼしきもの)は、かすかにうなずいたようでした。


カゲが会いに来てくれた!

見ると、閉め切っていた窓のカーテンが、いつのまにか少しだけ開いていました。

もしかして
カゲが開けてくれたの?

カーテンのすきまから、一筋の光が差し込んでいます。

宝箱の中でカゲは、光とともに、そのカタチを長くしたり短くしたり横に動いたり縦に跳ねたりさせたりして、
わたしたちがよくしていたあのダンスをしているようでした。

これは喜びのダンス。

カゲもわたしに会えて喜んでいるのだわ。
きっとわたしの願いが、カゲに通じたのだ。

さあ、箱になんか、入っていてはだめよ。

わたしは、カゲに手を伸ばしました。
カゲも、それを待っていたように手を伸ばし、わたしの手を取ってくれました。

わたしとカゲは、手をつないで踊りました。
なつかしく愛おしいカゲとのダンスでした。

このまま永久に踊っていられたらいいのに……

わたしが言うと、カゲもまたうなずきました。


扉を開けましょうか?
ここは狭いわ。

カーテンがさらに開いたみたいです。
目の前にぱあっと光の道が開けました。
まぶしい。
強烈なまぶしさです。
扉の形がはっきり見えます。
カゲの形もだんだんはっきりしてきました。

光のまぶしさにともなって、わたしの意識は、だんだん薄れていくようです。

わたしはカゲに言いました。
「扉の向こうへ、いきましょう。踊るにはここは狭いわ。それにこの暗い部屋はもうたくさんなの」

カゲがわたしに言いました。
「向こうへ行くと、戻れないのだよ、ここには。それでもいく?」


戻る?
そんなこと!
どうしてたずねるの?

扉へ。

  さあ開けましょう。





(画像提供は「写真AC」そぼぼんさんより。ありがとうございます)



カラフル

2015年05月28日 | 創作帳
ものごごろついたころから
白色が大好きでした。

身につけるものは、好んで白い色を。
白いスカート、白いブラウス、白いワンピース、白いカーディガン、
白いジャケット、白いパンツ、
白い腕時計、白いネックレス、白い指輪、

食べるものも白い食べ物を多く。
白いパン、白いご飯、白いお豆腐、白いお野菜……

そういった選択肢は自由です。

だとしても
生きていく暮らしていく道々で
赤くなってみたり、黒くなってみたり、桃色になってみたり、灰色になってみたりすることしばしばです。

変色は気持ちの動きを呼び、いえ、
気持ちの動きが変色を呼ぶのか、どちらが先かわかりませんが、
変色を呼ぶ出来事や気持ちの動きは、時には悲しかったり苦しかったりでもでも楽しかったり。
大変エネルギーのいることなのです。
けれどもそれは暮らしに必要なことなのかもしれません。
カラフルであることは、生きることに彩りを添えてくれることなのでしょう。





(写真提供は「写真AC」七彩さんより。ありがとうございます)


十字路

2015年05月13日 | 創作帳
十字路に立っています。

道は
四つの道の向こうの道の
またその向こうの十字路の
先の道の十字路ではない道の
先の十字路の
またその先の道の先

そんなふうにして
道は
連続して分かれ
連続してつながり
行き止まり途絶えるまでつながり


膨大に分裂した道の
分岐点の
連続する一点が
今立っているここなのだと

わたしは
無限のわかれ道を、想っては
はらはらと立ちくらみます

はらはらはらはら立ちくらんだあと
自分はまるで
宇宙に放り出された
ひらひらする微少ななにものかだと
思うのです。

わたしはなにものか。
あなたはなにものか。
世界はなにものか。

あっと気がつくと
またわたしは
ひらひらはらはらしています。

微少が属する道の先の
宇宙の夢を見ようとしては。




(画像提供は「写真AC」サンサンさんより。ありがとうございます。)



愛を語るハイネのように

2015年04月17日 | 創作帳
出会うときも

別れるときも


真向かいに

いらっしゃい


愛を語るハイネのように

歌うから





出会うときも

別れるときも


真向かいに

いらっしゃい


月と星の語り輝く

このみずうみを開くから



ハイネのように

愛を語るハイネのように

黄昏の薄明かりをたよりに


真向かいに

いらっしゃい



そこから

わたしを

見てくれたら


わたしたちの

「燃えるくれない」を水の波紋に

投げるから



(写真提供は「写真AC」キイロイトリさんより。ありがとうございます。)


無限遠点

2015年04月14日 | 創作帳
君AとわたしBは

直線と仮定します


さらに

直線Aと直線Bは平行であると

仮定します


故に

永遠に

交わることは

ありません


……


だと、


思っていました




思い込みでした



「無限遠点」





交わる可能性があります



思い込んでしまっては


宇宙の法則は、極小に作用します





直線Aと直線Bの

仮想希望あるいは希望仮想は

だだ、一点、そこ、

なのです



「無限遠点において

交わりましょう」
























やさしき人の花

2015年04月08日 | 創作帳
毎日
水をやり
朝晩
話しかけ

大事にしてきた
お花が
殺されそうだったのです

少なくとも、わたしには
そんなふうに、感じられました

それで
とっさに

お花の上に
身をかぶせたのです

すべての悪しきものが
お花に、触れないように

しばらく
そうしていました

もう、だいじょうぶかしらと
からだを、起こしたわたしは

ああ何てことだと

崩れ落ちました

泣きながら
自分を殴り
自分を責めました

お花は
おおいかぶさった
わたしのからだの
重みで

つぶれてしまったのです


ああ、ごめんなさいごめんなさい

つぶれたお花を前に
わたしは、長いこと
ひざを抱えて泣き暮らしました

もとにはもどらない花を
何度も何度も、なでては
何年も何年も、泣きました

そうして
涙も枯れたころ

顔をあげると

お花の種を植えている
おばあさん

お花畑に肥料をやっている
おじさん

花束をかかえ
いそいそと歩く娘さん

が、目に入りました


何年かぶりに
わたしは、口を開いて

この人たちに
きいてみよう、と思いました


わたしのお花
わたしが、つぶしてしまったお花が
なくなりました
どこに


きくと

土になったのよ
星になったんだよ
あなたの心になったのよ

そんなこたえが、かえってきました

それから

おばあさんから
種を分けていただきました

おじさんに
満開の花を見せていただきました

娘さんに
花束の香りをかがせていただきました


やさしき人たち


わたしの、いなくなったお花は
いないままで

かなしみが
消えることは、ないけれど

そして

やさしき人たちのこたえが
正しいかは
確かめられないけれど


やさしき人たちの
花は、咲きます



(写真提供は「写真AC」acworksさんより。ありがとうございます。)


過去形

2015年04月06日 | 創作帳

おわかれ、は

いつも

過去形で、来るの


手を振るのはいま


さよならは

あとで、知るの


体を触れるのはここ


さよならに

前ぶれを、ふれないの


心を降らせるのはまだ



振れない手 触れた体
触れない体 降れた心
降れない心 振れた手


ばらばらになったものたちをしばり

風に投げるの
空に浮かぶの
光に泳ぐの


その形のことなど

空に、きいても
風に、きいても
光に、きいても

わかるわけ、ないから





まぶたを閉じて

2015年04月06日 | 創作帳
まぶたを
閉じていたのは

一瞬だったような
気がします

閉じている間に

世界は
変わりました

閉じていたせいですか

閉じなければ
変わらなかったのですか


知り合いのウサギも猫も
わからないままでよいのだ、と
鳴きました



世界は変わる
空気の色は剥がれ塗られ
また剥がれ塗られ

赤色が灰色に
灰色が金色に

金色が黒色に
黒色が銀色に

銀色が青色に
青色が桃色に



それらを
無造作、無神経に、取り巻く

時間
空間
人々

閉じたまぶたの
その裏に

放つ矢の速さで
流れ流れ流れ
流れが流れていきます

わたしと、あなたたち
あなたとわたしたち
過ごした日々を
さまざまに

塗って
染めて
いきました

色は
ふとした合間、
何気無い間合い、に


消えるのです


無色の野



これで
98999412925回
消えました


わたし、また
まぶたを、閉じます


世界の色を変えるためなのか
世界の色を無くすためなのか

空の向こう
鳥が鳴いて飛びました
わからないままでいいのだと


よければ、お願いです

あなたから、見える世界の色を
どうぞ、教えてください





(画像提供は「写真AC」ricoさんより。ありがとうございます。)


お届けものです

2015年04月04日 | 創作帳
荷物を、持って
橋をわたっています。

むこうがわに
いかなければならない
お仕事ができたのです。


お仕事とは
この荷物、つまり「お届けもの」
を届けることです。


お届けものの、中身は

「思い出」
という荷物です。


思い出……

これは
とても
こわれやすいものです。

だから

そうっとそうっと
運ばなければなりません。

なかなか
神経をつかいます。


ときどき
受け取り拒否をする方が
いらっしゃいますが

ゆくあてのない
「思い出」は

ますます
ふくれあがり

ますます
重量が増します。

どうか
お受け取りの
サインを




(写真「写真AC」チョコラテさん)



2015年04月03日 | 創作帳
鐘が、鳴っていますね。


近くに
教会でも、あるのでしょうか。


夜、
白い波の中で
泳いでいると

よく
聞こえるのです。

鐘の音。


聞きながら
波のあいだを、ゆきます。


泳ぎが
うまくないわたしは

波をたくさん
飲んでしまいます。

波は
とても、とても、しょっぱいです。

鐘の音は

泳ぐ人を

讃えているのでしょうか。
哀れんでいるのでしょうか。


まだ……

泳ぎます。


たくさん泳いで
手足がしびれたころ

ようやく

岩でできた、お城に
たどり着きました。

どうやら

鐘は
お城の、塔のてっぺんから
聞こえているようです。


白い波間を
夜に、泳ぎ

白い波を
からだに、いっぱい
飲みこんだら

その音は

わたしへ
あなたへ

鳴ることを
知りました。





(写真提供は「写真AC」旅人さんより。ありがとうございます。)