DayDreamNote by星玉

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flake92.星夜夢

2019年12月25日 | 星玉帳-Star Flakes-
【星夜夢】


十字星の夜。


目覚めても目覚めても。


時空は永い夢だから。


星降る夜の沈黙に行き先のない夜を充て。


夢みる人を抱きながら喪失へ向かうことを祝おう。



星夜の空虚に閉じ込められた彼もわたしも


静寂を愛するならば。


十字星は夢だけを奏でるだろうか。


静かに深く溺れるようにと奏でるだろうか。





flake92.『星夜夢』



flake91.夜鳥

2019年12月21日 | 星玉帳-Star Flakes-
【夜鳥】



夜深く。


星樹の巣に棲む鳥は鳴く。


星の夜も雨の夜も雪の夜も。


遠く森の奥から聞こえる声は


遙かの星に吹き荒んだ激しい風の記憶を揺り戻す。


耳を澄ませる。


声を抱きしめる。


夜に墜ちる。


長い暗夜の夢中。


夢を知り夢を壊し。


目覚めた時空こそ夢幻なのだと


目覚める度に鳥は鳴く。



flake91.『夜鳥』







flake90.星影

2019年12月14日 | 星玉帳-Star Flakes-
【星影】


零下の星夜。


金星塔の螺旋階段を昇る。


途中小窓から見える星灯りの瞬きの中に


かつてすれ違った旅人の面影を見つけ、


ああそれは幻ですよ零下の星影は幻を見せるのですよ、


と塔の番人の言葉を思い出す。


塔の螺旋では見つかるはずのないものも見えることがあるのだから


星影に溺れてしまうのだと。





flake90『星影』



flake89.零下

2019年12月09日 | 星玉帳-Star Flakes-
【零下】


毛羽だった毛布を宿の寝台に広げる。


今宵出航する金星号に乗る人と共に


零下の夜を忍んだ毛布だった。


船の出る時刻。


毛布を身体に巻き付け


窓を開ける。


星の見えない漆黒の宙。


ひと筋の光の尾が遠い宙を横切った。


最後の会話が思い出せず


言葉を交わしたのかさえ思い出せず。


冷気が布を貫き。





flake89『零下』



flake88.星獣

2019年12月06日 | 星玉帳-Star Flakes-
【星獣】


遙かの星で夜を共にした星獣は


しきりに鳴いていた。


時を探してはならないと。


今宵星夜過去も未来も失せ


星獣に抱かれ静かに沈む狭間なのだと知り。


抱かれた刹那に銀河の向こうから聞こえた


美しくおぼろげな旋律は


しばしば鮮明に繰り返される。


星夜が去り


遠く別れ別れになった今も


ずっと。




flake88『星獣』