DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

flake65.海鳴

2019年07月26日 | 星玉帳-Star Flakes-
【海鳴】


浜で海が鳴るのを聞いていると


沖の廃船に棲む猫が寄ってきた。


猫の背中には青い斑模様があった。


模様は薄らと光を帯びていた。


美しく光る青ですね、と言うと、


猫は頷き、説いてくれた。


この惑星の海鳴は猫の青斑と共鳴するのですよ



時が封じた尊い哀しみの模様と音は共に鳴くのですよ、と。



flake65『海鳴』


flake64.ワルツ

2019年07月23日 | 星玉帳-Star Flakes-
【ワルツ】


星の宿でワルツを集めた。


音を探し拍子をなぞり音階を辿り


一日を終えた。


夜になると


青い惑星の港で別れたままの人のことを考えた。


言葉にしようとペンを取る。


途端に部屋は静まりかえり言葉を失う。


長い夜は繰り返し訪れるものだ。


静寂の先は何処か。


青い星のワルツは聞こえるだろうか。



flake64『ワルツ』



flake63.雨草

2019年07月16日 | 星玉帳-Star Flakes-
【雨草】


星の草原で布を織る白狐に出会った。


夏前に刈った雨草の繊維を糸にして


雨季の間、織り続けるのだという。


しっとりとした柔らかな心地の布だ。


胸指足を幾重にも巻くことを勧められた。


それらは元の体温には戻らないと思っていた箇所だった。


雨と草に巻かれることですよ


と彼は囁き鳴くのだ。



6flake3『雨草』





flake62.雲間

2019年07月07日 | 星玉帳-Star Flakes-
【雲間】


雲に覆われた道々


言葉を書き留めていると


星船の操縦士に出会った。


船が難破し流れ着いたのだと言う。


傷を巻くためのスカーフを渡すと


スープを分けてくれた。


透き通った青色のスープだった。


往く先を失った者たちの紡ぎ出す在りかは


まるでスープに浮かぶ雲だ。


切れ間が青く突き刺さる。



flake62『雲間』


flake61.船乗り

2019年07月04日 | 星玉帳-Star Flakes-
【船乗り】


星間船の舵をとりながら


船乗りは歌を歌う。


宙の海は荒れている。


激しく揺れる海の上では


去った星や別れた人や置いてきたあれこれや


一瞬で砕かれかき消えてしまう。



永遠などというものに


憧れては失い


刹那の前に幾度もひざまずき


そうして彼は船に乗り歌うのだ。


永遠の旅人であることを歌うのだ。



flake61『船乗り』