今年、また彼らのアルバムレヴューを書くコトがあろうとは・・・・・
しかも、こんな出来の作品になるとは・・・・・・正直言って、驚きと裏切りの連続(笑)
嵐
『Popcorn』
2012/10/31リリース
ジェイストーム
JACA 5338
昨年の『Beautiful World』から1年4カ月ぶりに放たれた嵐のオリジナルフルアルバムは、アルバムとしての意味を感じさせてくれる見事な一枚でした。
正直、ここまで計算されてシングルをリリースしていたのかと考えれば、スタッフの慧眼と拘りに驚くばかり。
実際のところ、一曲一曲の出来という点だけで言えば、過去アルバムに比べて突出している訳ではない。
寧ろ少し地味でキャッチーさに欠けるアルバム曲もある(苦笑)
しかし、アルバムトータルで見た時に受ける印象で言えば、嵐史上でも屈指の仕上がり。抑揚というか、緩急の付け方が見事としか言えない。
オリジナルアルバムにとっての、アルバム曲と既発シングルの曲順やバランスが如何に大事かという見本の様な作品になっている。
ポップというコンセプトを表すタイトルで解る様に、このアルバムの軸はポップスの核が何であるかというコト。それは、ワクワクやドキドキする感情。決して、歌詞に対する共感や感動ではない。ココロが如何に躍るか。それに尽きる様に思う。
では、各曲について簡単に。
オープニングは、吉岡たくのアレンジによる「Welcome to our party」。文字通りのパーティチューンで、これから始まるポップソングの応酬を予感させる。アルバムを一つの組曲と考えた場合、気分を盛り上げるイントロダクションとして十分な一曲。
続けての第一楽章(笑)はCMでお馴染みの「駆け抜けろ!」。
この曲の破壊力の素晴らしさ!石塚知生のアレンジが冴えまくる疾走ロックアッパーグルーヴ。タイトで正確無比なドラムは神保彰。硬質でドライヴする松原秀樹のベース。ディテールに凝った奥田健治のギター。グルーヴを増幅する小野かほりのパーカッション。情感溢れる弦一徹のストリングス。そして、何よりも素晴らしいのは、エリック宮城・佐野聡・春名正治といった腕利きが粋なフレーズを連発しまくるホーンセクション。エンディング間際に飛び出す、スペクトラムの「トマトイッパツ」の断片に感涙。
続けて「ワイルドアットハート」「Face Down」というシングル2曲。「ワイルド~」のリズムセクションが小田原豊と松原秀樹だったというコトに納得したり、オルガンで河合代介が参加してるんだと驚いたりしたのですが、この2曲・・・・・・シングル単体で聴いた時よりグッとくるんです。これも曲順の妙ってヤツですかね(笑)
そして、クレジット見て最も驚いたのが潤くんのソロ「We wanna funk,we need a funk」。ドラムがジェームズ・ギャドソン!?あのモータウン全盛期を支えた“キング・オブ・グルーヴ”が!?マーヴィン・ゲイやジャクソン5、シェリル・リンの「ガット・トゥ・ビー・リアル」のドラムもこの人です。しかも、ベースがルーファスのボビー・ワトソン?マジかっ(笑)その上、パーカッションがルイス・コンテ・・・・・・・・どんだけ贅沢してんねん!ギターは、我が郷土の誇り“オグちゃん”こと、小倉博和という豪華布陣。こんだけで買う価値があるな。
ここまでの流れが圧巻だった。キャッチーかつグルーヴィにトバしまくる。
そして、一気にクールダウンさせるのが、リーダー:大野智のソロ「two」。スロウだけど、決してつまらない良くあるバラッドにしなかったのが正解。というか、この曲で大野くんのステージが一つ上がった気がする。エレクトロだけど、オールドソウルマナーも垣間見える、実にエモーショナルな作品。3分辺りからのCメロラストで聴かせるロングノートと、その終わりに見せるフェイクが圧巻。
「Waiting for you」は、吉岡たくと宮野幸子のアレンジによるミドルチューン。いかにも嵐らしいユニゾンが聴こえる佳作。終盤の大野くんのハイノートがまた良いんだな。
今回のソロ曲は素晴らしく充実しているんだけど、この作品も驚きだった「楽園」。相葉ちゃんの声が見事に生かされている。ボトムが弱くて不安定、しかもワシャワシャした声なのに、それがマッチするメロディとアレンジ。この疾走感とポップなフックが、あのヴォーカルで躍動する。ドラムは神保彰、ギターは西川進という鉄壁の布陣も最高です。
「旅は続くよ」は、最初に単独で聴いた時に違和感あったんだけど、アルバムの流れで聴くとハマってるんです。ディキシーの様なラグタイムの様なカントリーの様なマーチの様な・・・・・でも、面白い作品になってる。この曲調でラップを挟みますか(笑)アレンジはYouwhichで、「駆け抜けろ!」と同じホーン隊がイイ味を出してます。
このアルバムのソロ曲で唯一ハマらなかったのが「それはやっぱり君でした」(苦笑)なんでニノはこーいう路線に行くかな~。しかし、ニノはコレを確信犯的にやってるんじゃないかとも思うのです。おそらく、嵐ファンの大半が求めているモノを提供するつもりで、あえてやっている様にも思うのです。ちなみに、個人的な聴き所は3分15秒過ぎのピアノとストリングスの絡み。いい間奏です(笑)
この曲の後だから、「迷宮ラブソング」がシングルの時より良く聴こえる。ドラム、佐野康夫さんだったんだな~ベースは人時でストリングスは弦一徹、ストリングスのスコアは佐々木博史か~どうりで安定感あった訳だ。決してテンポは速くないのに、感じる爽快感とドライヴする感じ。改めて聴いて、嵐ポップの王道を再確認。
あ、この曲から最後まで弦一徹ストリングスが大活躍です(笑)
「Your Eyes」に関しては特になし(苦笑)サビ以外は悪くないけど、サビで笑っちゃう(爆)ドラムがカースケさん、ベースは人時、ギター西川進、弦一徹ストリングスという面子でも如何ともし難い。
翔ちゃんのソロ「Fly on Friday」は、初音ミク作品でお馴染み、livetuneのkzがアレンジした四つ打ちエレクトロ。アッパーだけどキャッチーなポップさを湛えた一曲。
「cosmos」のアレンジは佐々木博史。このタイプの曲は殆ど聴いたコトが無い気がする。所謂応援歌の様な・・・・・でも、悪くない。ちゃんとポップな要素が塗されてて。
「証」に関しては、ha-jのアレンジによる弦一徹のストリングスに尽きる。このオーケストレーションが曲の格を上げてる。ただ、Bメロ後半(サビ前)からサビ辺りに漂う、コブクロやゆず臭は個人的に拒否反応(苦笑)
ラストを飾るのは「Up to you」というアップチューン。設楽博臣の軽やかなギター、佐野康夫と渡辺等のリズム隊はあくまでタイトでグルーヴィ、弦一徹のストリングスは疾走感を煽る。曲構成が実に緻密で素晴らしい。
改めて書くが、ここまでのアルバムを作り上げた彼らとスタッフに敬意を表します。
ただ、このアルバムは一つの分水嶺になる気がします。
このアルバムを多少のマイナス評価するファンは少なからず存在するのではないかとも思うのです。
ただ、ポップミュージックを愛し、理解し、嵐にその未来を見るファンならばきっと気に入るはず。
その意味では、篩いにかける一端を担う作品になるかもしれません。
個人的には、クリスタルの原型から結晶化を始めた記念碑的アルバムだと感じています。
ちなみに、スペクトラムの「トマトイッパツ」はコチラ(笑)↓