さてと・・・・・・なかなか下手なコト書きにくい盤のレヴューでもいたしましょう(笑)
ファン目線ではなく、いちポップスマニアの感想と思って読んでいただければ幸い。
嵐
『僕の見ている風景』
2010/8/4リリース
Jストーム
JACA5232~5233
今、最も勢いのある且つCDの売れるユニット、嵐の9枚目のオリジナルアルバム。
2年4カ月というスパンでリリースされたため、2枚組20曲というヴォリュームとなりました。
しかしまぁ、なんとも評価が難しいアルバム。
まず思ったのは、「20曲は多すぎるな(苦笑)」というコト。
既発曲5曲とソロ5曲を収めるために、2枚組というパッケージを選択したのが散漫な印象を与える。ソロ曲は別ディスクにボーナス扱いとして、12曲くらいで1枚のアルバムとして仕立てた方がコンセプチュアルな作品ができた様な気が。
既発の曲で言えば、「Troublemaker」や「空高く」と、「マイガール」が同じアルバムに入っている時点で、ごった煮感が強くなってしまうのだ。
もうひとつは、これだけ多彩な曲調を詰め込む目的とは何か?というコトが頭をよぎる。
たとえば「ギフト」だ。この“いかにも”なメロディと“いかにも”なスタンスの歌詞を持つバラッドは、勢いに乗って坂を駆け上がる彼らの今に果たしてふさわしいモノなのか?
そこには、不特定多数を相手にする状況が透けて見える。
コアなファンだけでなく、ちょっと興味のあるというレヴェルのリスナーや音楽にさほど詳しくない層をターゲットにした場合、“解り易い”モノが必要になってくる。
それは、マーケットが肥大すればどうしても仕方ないモノではあるけれど、ココに好意が集中すれば、これからの作品のプロットに影響が出る懸念がどうしても残る。
更に言えば、冒頭の3曲の曲調の重たさが気になる。
「movin' on」のベースラインや古のロックの如きギターリフ、「マダ上ヲ」のオリエンタルテイスト、「リフレイン」のダークなトーン・・・・・・アルバムの冒頭に続けて持ってくるのは、ある意味チャレンジだけど、ある程度アルバム全体の色合いを決めてしまう部分もある気がする。
個別に聴けば、そんなに悪くない出来なんですが(笑)
「Troublemaker」で、やっとホッとした(爆)
ここまで、かなりネガティヴに書いてきましたが、実はこのアルバムの真価は後半にあると思ってます。
20曲を半分にした場合、後半の冒頭は相葉ちゃんのソロ「Magical Song」になりますが、この曲からラストまでは本当に素晴らしい(「Monster」除く(苦笑))
いい意味でチープ。いい意味でジャンクなエレクトロディスコチューン。若干の和テイストが加わったバブルガムユーロビートに、訥弁でクセの強い相葉ちゃんの声が実にイイ味わい。間奏の、ドゥーピー・ブラザーズ「ロング・トレイン・ランニン」モドキなギターもグッときます。
「let me down」を書いた田中直はSUPA LOVE(私見ですが、ココの事務所のクリエイターの仕事は現在の職業作曲家系J-POPの相当量を担っていると思います)所属の新進クリエイターですが、この曲、冒頭3曲に近いテイストながら、ギリギリのラインで重たさを回避して、実にグルーヴィなクールファンクに仕立てています。
「Don't stop」は、個人的にベストトラック。フックの効いたメロディとホーン(エリック宮城や西村浩二、フレッド・シモンズといった名手揃い!)が炸裂するアッパーグルーヴ。ハービーマンの様なファンキーなフルートが最高にクールなんです。
ニノのソロには→Pia-no-jaC←がピアノ&カホンで参加。コーラスアレンジは山下達郎のバックを務める佐々木久美さんでしょうか?
「空高く」からラストまでの3曲は、締めに相応しい作品揃い(このへんが冒頭とのギャップ(笑))でワクワクなんです。
「空高く」の軽やかなカッティングが醸し出すグルーヴ。
小林建樹が書きha-jがアレンジした「kagerô」は、ダークめトーンを物ともしない疾走感を感じるサビメロ。
謎のユニットThe仙台セピアの「Summer Splash!」は、YANAGIMANが手掛けたケツメイシのディスコチューンの様な極上サマーアンセム。
なんだかんだ言って、いい音です。種子田健や松原秀樹のベース、西川進や天野清継のギター、山木秀夫のドラム、弦一徹のストリングス・・・・・良いミュージシャンの演奏が楽しめます。
そして、何よりも素晴らしいのは、大野智という奇跡のヴォーカリストを中心とした、バランスの良い5人の声。
彼らの歌だから、それほどでも無い曲でも聴けるモノに仕上がるし、良い曲は格段にクオリティが上がる。
それでもまだ、彼らの底は全く見えない。特に大野智という男には。
グルーヴチューンに興味がないというのは本当なのか?それで、あの歌が?
必死にグルーヴ出そうとして歌ってるヴォーカリストが嫉妬するぞ(笑)
まだまだ駆け上がる途中。そう思えば、模索の末に生まれたモノだと思えば、それはそれでイイものになってるなぁと、感じる1枚。
一人でも多く、嵐グルーヴを感じ取ってくれる方が増えると嬉しいと思います。