日記を詳細に書くか、それともアッサリ短く書くか...。
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『バートルビーと仲間たち』の著者は、ついつい長く書きたくなるようなドラマチックな出来事は一行で書こう!と誘う ------ もともとその程度の価値しかなかったんだと考えればいいだけのこと、と言う。それにより、悲劇を喜劇に変えることができるかも知れないとも言う。
その著者が仮病を使い、ニューヨークでサリンジャーの取材をしたのが会社にバレてクビになった日の日記に記している ------ ロンカッリ枢機卿が、誰ひとり予想しなかった自分の大抜擢を『今日、法王に任命された』とだけ書いたように、あるいは、ルイ十六世がバスティーユを占領された日に『本日、何ごともなし』と書いたように、自分も今からそんなふうに書こう、と...。
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つまり、ぼくにしてみれば、今朝の出来事など『きみは、朝早く出かけていった』とだけ書けばいいのだろう。
【Jess Lewis - Room 335】