日曜の午後。 庭先の読書にイチ子がなつかしい本を持ち出していた —— 背ヤケしたカバーのトルーマン・カポーティ短篇集 —— 古い版だ —— 高校の卒業記念にぼくが自分の蔵書から選んでプレゼントしたやつかもしれない。 「その本、まだ持ってたの」と言うと、イチ子は表紙を開いてこっちに向ける。 表紙の裏に、ふたりがまだ子供だった頃、千葉の富津海岸(だったか)へ潮干狩りに行ったとき、ふたり並んで撮ってもらった白黒の写真が貼ってあった。 イチ子は、今もその頃と同じ目で笑う。 【Peter and Gordon - I Go To Pieces】