『彼自身によるロラン・バルト』による(3)
『彼自身によるロラン・バルト(Roland Barthes par Roland Barthes, 1975)』の一項『能動的/反応的』(47頁)でバルトは書く。自分のテクストには、二種類あると.....。
ひとつは『反応的(反作用的)』なものであり、憤慨、恐怖、内心での反論、防衛、いさかいなどが動因となっている。もうひとつは『能動的(作用的)』なものであり、その動因は快楽である。
前者は、推敲を経るうちに次第にエクリチュールの虚構に順応していく。それは自らの反応性の表皮を失い、後者のような能動的なものになっていく-----反応性は、ところどころに、わずかな痕跡(ささやかな丸括弧に囲まれた斑点)としてしか残らない(47頁)。
たったこれだけの内容のものを書くにも、バルトも翻訳者も僕も三人三様に骨を折る。その中心にあるのは、推敲、つまり初稿に以下のフィルターをかけることにより失う、純粋な真実への悔恨の情である。
1. 選択、採用した言葉の点検、確認
2. 語尾の音の重複回避
3. 文章、論理、ともに無理な省略がなされていないか吟味
4. さらに音読した時のセンテンスの長さが不自然なバランスではないかの調整
『こうしたことにより失った純粋な真実』を取り戻す手段、つまり再生への道はなく、さっさとそのこだわりを忘れてしまうか、あきらめるかしかない。誰も、何も答えてくれない。
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ただ『好きだ』と言えばすむところを、美文を連ねたばかりに不格好になる真実-----それは、下手に刈り込まれた庭木を鑑賞するに似ている。
「じゃあ、うまく刈り込めば良いじゃないかって? そりゃあそうだ。だけど、切り落としてしまって、もう二度と復元できない枝葉は必ずある。取り繕うことが出来ても、それはすでに何か違う、別なものでしかないんだ」
TO BE CONTINUED.
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