「関西には朝粥という食習慣があるけど、なぜ関東には無いかわかる?」とイチ子さん。
彼女の母方の祖母の実家は神戸の財界で使うような大きな料亭で、イチ子さんには料理に関わるウンチクだけ山のように伝わっている。
「さて、なんだろう...。何か特別なワケでもあるの?」とぼく。
「そう。タイマー付きの電気炊飯器のない、日本中がまだ薪でご飯を炊いていた時代の話だけど、ご飯は一日分を一日一回炊いていたわけよ。で、その一回をいつ炊くかによるのがその理由ね。江戸は朝炊き、上方は昼炊きだったから、炊きたて以外の食事は、お冷やご飯をお粥にするなりお茶漬けにするなり、どうにか工夫する必要があったのよ」
「なるほどね。お冷やご飯を番茶やほうじ茶と塩で煮た茶粥なんか、たまに食べたくなるよね」