『五年くらい精神科に通ってました。でも、長引いたのは薬のせいだったんです。飲むと死にたくなるような薬もありますから。担当医が他の病院に移って、それをきっかけに通院をやめて薬飲まなくなったら治っちゃった』という部分が、つげ義春の日記にある。
精神科系の薬や中枢神経に作用する鎮痛剤の能書をネットで見てもらうと、確かに一般的ではない妙な副作用があって、特に後者は、脊柱管狭窄症や交通事故による骨の変形などに伴う厄介な痛みにもよく使われるので、それなりに副作用に悩まされる患者もいるはずだ。
ぼくは、脊柱管狭窄症の痛みで歩けなくなってきたので、そういう強い鎮痛剤を飲み始めたら、眠りが浅いときに悪夢を見たり、人混みが苦手になったりし出した。しかし、その後、たまたま20kgの減量に成功したら、神経を圧迫していた背骨への負担が減ったらしく、痛みがどこかへ行ってしまい、強い鎮痛剤は止められた。よって、三日程で悪夢を見ることもなくなった —— どういう夢を悪夢というかを説明すると膨大な量になるのでここでは止めておくが、『ねじ式』にある描写のような夢を始終見ていた。しかも、同じ夢が繰り返された。ただ、人混みが苦手になったのは改善せず、こちらの方は薬の副作用ばかりではなく、年齢のせいかもしれない —— 大人数でもソーシャル・ディスタンスなら問題はないが、肩が触れ合うような状況だと居心地が悪く、家に帰りたくなってしまう。
なお、薬の副作用で見る悪夢は、薬が原因とわかっているから改善は可能だが、なんにもしないのに悪夢を見続けるとしたら、これは精神科領域に踏み込んでいるかもしれない。