きみの靴の中の砂

グリンデルワルト

 

 

 歳を重ねて長いものを読む根気がなくなったと言うべきか、小仕事のせいで読書向きの時間を巧い塩梅でとれないと言うべきか...。昨今の読書傾向は、好き好んで書くもの同様、一章が精々十五分程度で読めるものが都合がいい。勿論、それで完結してしまうような掌篇・小品でもいい。ということで暇を持て余した今夜、急に思い立って、久し振りに辻村伊助の『スウィス日記』を持ち出してきた —— 日記とは言っても、実際はチャールズ・ラムのような英国伝統エッセー風の文体で書かれている —— その三十篇ほどの中の一篇『グリンデルワルト』繙讀。ここまで格調高い文体に接しなければ、ここで繙讀などという言葉を使おうとは思わなかったろう。

 辻村のプロファイでは、彼は園芸家、登山家となっていて文筆家とは認識されていないせいか、なかなかの読書家と思われる人でも、余程の好事家でない限り手を出さない本のようだ。而して、世間で話題にされにくい随筆家である。

 

 

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