今年最後のメイストームかもしれない —— 春一番から数えて何度目の嵐だろう。
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先月末で行きつけの豆腐屋が店を閉めた。
長年、老夫婦が営んでいたが、あとを継ぐ者がなく、自宅を兼ねた駅裏の店舗を売り払い、揃って老人専用の集合住宅へ移っていったという。
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古くからの店がなくなり始めて随分な時間が経つ。無くなった業種を上げれば、映画館、自家製パン屋、米屋、煙草屋、文房具屋、乾物屋、金物屋、荒物屋等々挙げれば切りがない。
『古い店がなくなるのは街が進化していく過程』という理解は、今となっては空想の一端に過ぎなかったと反省に値する。それは『かつて賑やかだった街並みが老いて滅んでいく道筋』、つまり、新しい文明を享受するのと引き換えに伝統・文化を手放す道程だった。
何事も手遅れになる前にしなくてはならないことは、山ほどあった。