「葉書くらいの大きさのスケッチブックを上着のポケットから出して、立ち止まって鉛筆デッサンしている絵描きのオジサンって、昔は、いっぱいいたよね」とイチ子がデッキのベンチに掛けて誰かの画集を見ながら言う。そう言われてみれば、事実、確かにそうだ。イチ子は、何を切っかけにそんなことを思い付いたのか —— 庭のウッド・デッキまでコードを延ばしたHomePod miniから五十年位前に流行ったアメリカン・ポップスが聞こえていたせいか。
そんな『絵描きのオジサン』を巷で見なくなってからも、毎年、美術学校からは一定数の学生が卒業していくというのに、これは一体どういう事だろう。写生と写真は別物だから、デッサンがデジカメに吸収されたという説は簡単には信用できない。
【Terri Clark - Kodachrome】