尾根を離れ、ぼく達が長い坂道を四ッ谷駅の方へ降っていったときのことだ。
「男と女って、お互いに相手に対して理想を追い続けていると、いずれ関係が破綻する、みたいなことをこの間どっかで読んだんだけど、そんなこと聞いたことある?」と水口イチ子。
「ウーン、覚えがない。それで、著者はどうしろって言うの?」
「それはね、季節ごとに衣替えするように、理想を着替えていくといいんですって」
「なるほどね、そうやって、新鮮さを更新していこうっていうわけね」
目の前の高架橋を西日を受けて電車が通過していく。
「ねぇ、あたし達って、自分達じゃ気付かないうちにそうしてるのかもね」
【Haircut 100 - Milk Film】