ある週末の雲の低い昼下がり。仏蘭西南部の古都。
街角で見つけた砂糖菓子を売る可愛らしい店の奥から、オレンジの果実酒が甘く香っている。
覗けば、良く磨き上げられた硝子のショー・ケースの中にナツメ椰子やピスタチオ、干した無花果や葡萄で飾られた焼き菓子の他にも、蜂蜜を練り込んだ渦巻き状の揚げ菓子などが計算され尽くされたように並べられている。中には《ガレット・デ・ロワ(Galette des Rois)》や《オスティ(Hostie)》など欧州の基督教の行事に欠かせない菓子までも...。
それらの菓子のひとつふたつを買って、その場で口に入れることが仮にその国の作法に反していたとしても、異国にある拙い言葉を話す旅人なら許されるかもしれない。
しかし、それと同時に、熱く、深いローストの珈琲が欲しくなり、ひいては遠い極東の国に残してきた可愛い恋人にも逢いたくなりそうで...。
そんなことから、菓子を買うのをいささかためらわれた午後ではあったのだが...。
【Ronnie Aldrich / Clair】
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