東京郊外の旧郡部では、渡り鳥と言うと、いくつかある分類の中でも冬鳥を思い浮かべる —— 冬鳥は、本来の生息地は北方なのに『寒い地域での繁殖を嫌って』、秋が深まる頃に南下してくる一団を指す。
この辺りの多摩川沿いの水辺は、冬鳥にとってはパーキングエリアに過ぎず、彼等は、餌捕りが容易な場所へと更に南下、また春が来ると北へ帰る。
*
冬鳥の呼称は、英語圏ではスノーバード。
避寒地のリゾートに通年暮らす人達は、暖かくなると去って行ってしまう避寒客も同様に(口語で)スノーバードと呼ぶ。
人間の『スノーバード』は、芽生えた恋をそのまま残して去って行くこともあって、冬鳥を題材にした歌には失恋を扱うものが多い。