きみの靴の中の砂

後ろ指を指されて





 陶工濱田庄司がテレビに出ていた頃のことだ —— どれだけ古い話なんだ。
 その教養番組で、自らの作陶工程をレクチャーしていて、配合する土の種類やデザインのコツまでも明かしていた。興味を持ってチャンネルを合わせていたファンは、『これで、ぼくもアタシも今日から濱田庄司』と思ったに違いない。しかし、たったひとつ『土の配合率』は明かさなかった。

 似た話に『俳句の作り方』『小説の書き方』『詩の方法』など、無数に上梓されているこの手のレクチャー本がある。
 それらは、出版社にしてみると大当たりはしないが、ある程度部数が読めるジャンルで、昔から版元の小金稼ぎによく使われる。これらの本を書くに必要な肩書きを持つか、あるいは多少名の売れた文筆業の方々も濱田庄司同様、肝心な勘所というかコツについては上っ面をなぞるに過ぎず、深々と掘り下げることはない。
 そりゃあ飯の『種』だから、そうは簡単に明かさないというか明かす勇気もなかろう。まぁ、仮に明かしたからといって、毎日畑に水をやり、草取りをして育てていく努力を励行できるのは、大雑把に言って作家志望者全体の0.01%にも満たない。ほとんどというほとんどが筆を折り、脱落していく。多少世間に名が売れるのは、更にその何千分の1。増してや次の世紀に名を残せる率など、計算するのも馬鹿馬鹿しくなるくらいだ。

 というわけで、創作は自分のお気軽ライフの一環・お楽しみの一環として関わるもの。そういった人達の中から、死後やっと有名になった人も世界には数知れない。

 変に作家ぶった生き方をすると、世間(あるいは家族)から『下手の横好き』と後ろ指を指されて蔑まされることにもなりかねない。




【Melanie - Beautiful People】

 

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