いつだったか、ノースショアの手前にクレオール料理のレストランがあるのに気付いた。
COVID-19絡みでシティの繁華街では食事をするのがはばかられ、街外れならと、車を走らせ、ランチに出かけた。
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定食は、ひと口大に乱切りにしたラム肉を低温のバタークリームソースで煮て、平皿の中央にたっぷりのソースと供に装い、ソースが染み込み易いようにと、生地の細かいブールのようなパンの小片でラム肉を取り囲むようにデコレーションされていた。
サラダはタンポポの若葉に固ゆで卵の微塵切りが飾られ、ドレッシングは典型的なヴィネグレット —— レモンをたっぷり絞って至極爽やか。
タンポポのサラダには日本の蕗の薹に通じる苦味がある。どちらもともに春を告げる味だ。
昔よく散歩がてら、土手のタンポポの若葉を摘んできてはサラダにしていたことがある。あの時、タンポポばかりでは苦いと言うと、イチ子さんは次から、小松菜やらなんやら他の葉物と合わせて食べ易くしてくれたっけ —— 急にそんなことを思い出した。
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店の外がにわかに騒がしい。
顔を上げると、窓の外は、いつもより早い時間のスコールが通過中であった。