夏の初めの頃、可愛げな淡い緑の実を付けた庭の無花果は、いよいよ秋に至り、熟して、色濃い赤紫になった。 飛ぶ鳥に露呈せぬ位置に実を結ぶのは進化の証か。熟れ加減を見極めながら収穫の時を待つ。
そして昨日、遂にその日は来た。鋏を使って丁寧に摘み取る。青みの残るヘタ以外はすべて食用となる。
アラビア原産のこの果実 —— 中国を経て伝来したようだ。唐柿などの古称に其の由来が伺える。
儚く薄い表皮の下に濃い乳酪のような食感が潜む。謙虚に甘味を纏った種子の口当たりは、苺のそれよりも野性的だ。
欧米で一般的に好まれる果実と比べ、柿、石榴、杏子、無花果など、日本に昔からあるものは、どこか無性に日本人の気風と重なるものが多い気がするのだが...。
【John Renbourn - South Wind】