きみの靴の中の砂

小説にはハンディーがある





 文学の場合、どの出版社の文庫にも所収されておらず、全集で読むしかない作品が少なからずある。若いときは、勢い、全集や選集、作品集などを適当に買ったが、今頃になって処分に困るのに気付く。全集は全集だから価値があって、必要な巻だけ残し、あとは処分してしまうのは人情として困難を伴う。しかしそんなことを言っていたら埒があかない。あたかも古本屋から全集の端本を買ってきて並べているように見えるのも割り切り、残しておきたい巻だけ残し、あとは始末するのも止むなしだ。

 小説家にも得手不得手の分野はあって、雑文、日記、評論は面白いが、小説は再読に耐えない芥川賞作家も数多くいる。小説の場合、数回読んでストーリーが読者の頭に刷り込まれてしまうと、更なる再読に結構年月を要するものがあって、その点、小説にはハンディーがある。その裏返しで、ストーリー性の希薄な著作こそ再読に耐え得ると言ったら、ストーリーテリングを重視する小説家志望の若い人達にとって辛口な意見であることは重々承知しておりますよ。




【The Osmonds - One Bad Apple】

 

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