きみの靴の中の砂

サラマンカの手帖から

 

 

 夏休み中の課題のひとつが読書感想文。本の分野やその長短などに条件はない。ただ、四百字詰原稿用紙の必ず十枚目に〈完〉の字を打つ必要がある。この条件を満たしていれば課題は完成かというとそれは正しくなく、ちゃんと起承転結で構成されていない場合は、主旨不明として書き直させられるらしい。それも二学期初頭二週間以内に、だとか。
 先生が読んだことのない本でも課題がよく書けていれば、先生にも理解できて全く問題ない、というのが理屈らしい。

 イチ子に、本を決めたかと聞くと、辻邦生の『サラマンカの手帖から』にしようと思うという。

 人というものは、相手より理解のいっているものには、ついつい上から目線で意見しがちだが、『サラマンカの手帖から』は何回も読んではいるけれど、未だ理解するには程遠く、素直に読んだことがあるとは言い辛い。

 夏休みと言っても、イチ子は、娘を持たないぼくの母と仲が良く、どうせ例年どおり、いつもウチに遊びに来ているんだろう。

                    

 隣に住むイチ子とウチの家とは庭続きで垣根がない。

 

 

 

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