きみの靴の中の砂

私は蝉になりたい





 蒸し暑くなったいち日。
 昼過ぎ、窓を開け放つと、今年初めて蝉の声が聞こえてきた。そういう日和なのだろう。

 蝉には蝉の短い一生 ----- まぁ、楽しくすごしてくれ給え。

 ところで、昨夜、古女房と些細な口論があった。
「まぁ、三十年程連れ添って、いろいろお世話になったけど、平均寿命からすれば、あと十五年ほどで長いお別れだから、そろそろ穏やかに過ごしましょう」と言うと、古女房は一瞬ひるむ様相を見せたが、素早く立ち直り、
「アンタみたいなのに限って、アタシより長生きするんだ」と少しも口が減らない。




Karla Bonoff / I Don't Want to Miss You


 

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