みすぼらしく見える前に古着は始末するとか、あるいは家の中だけの普段着に限定にするなど、必要な段取りをせずに新調もしないでいると、いつか着るものがなくなり、仕舞いには度を超した古着というよりもボロを着て出かける時が来る。自分が良ければそれで良いかというとあながちそうでもなく、周囲の人に要らぬ心配をされかねない。
近所に住む七十代後半で、数年前に奥さんに先立たれた先輩がいる。それまでは奥さんが着るものの管理をされていたのか、亡くなられてからはそれが停止し、たまに自転車に乗って暇をつぶしているところを見かけることがあるが、気の毒になるくらい貧相なカッコだ。近所の人達は、彼にお金があることはみんな知っているからまだしも、そうじゃない人達からは不本意に可哀相に思われても仕方ないような風体だ。家の中もどれだけ掃除が行き届いていることやら...。
母親が生前、ぼくに「アンタはきれい好きだから、女の子に生まれれば良かったねぇ」と言っていた話をすると、水口イチ子は、決まって意味不明の笑い方をする。