ふたりで出かけた散歩の帰り道、露店で椿桃(つばいもも)を買おうとイチ子が言う。洋名はネクタリン、今が旬だ。
帰宅すると、彼女は、それを木の桶に取り、庭で井戸水に浸す。歯が疼く程には冷やさないのが肝心。
***
次第に喉の渇きが我慢できなくなってきた ------ 冷え頃を見計らって、素早く桶に手を伸ばし、中からひとつをつかみ出す。水気も切らず、そのまま口へ運べば、噛みついた口の端から滴る果汁がたちまち肘まで垂れて慌てるぼく。イチ子が、エプロンに挟んだ金魚柄の手拭いを素早く投げてくれる。
きみが履く庭下駄の鼻緒の色は、その日の椿桃と同じ朱赤だった。
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Celia Paul / Dreaming Day
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