きみの靴の中の砂

『カイエ(手帳・雑記帳)』の類い

 

 

 鴨長明の『方丈記』など随筆と呼ばれるものの部分は必ず教科書にあるので、記憶にあるかないかは別にして、ほとんどの日本人は(学校をサボったり、病欠していない限り)一度は触れていることになっている。
 一方、欧州では、同様に『レオナルド・ダ・ヴインチの手記』が教科書にある。
 そんなことから翻訳を含め、両者(加えて同じ分類の随筆)が、それぞれの言語で執筆活動をする作家達になんらかの影響を無意識のうちに与えていても不思議はない。

 現代ではヴァレリーやカミュ(他にはバルトやシモンなども、まだ入手できる)を初めとして欧州のほとんどの作家が記す『カイエ(手帳・雑記帳)』の類いが、規範をダ・ヴィンチの手記に採っているのは読み比べれば容易に納得できる。
 しかし、日本人は形式好きで格好付けたがりだから、作家も版元も『手帖や雑記帳のスタイルで、随想・発想・思索などの備忘を混ぜ合わせたような、いわゆる手記形式(本音)の著作』は、生前にはなかなか世に出ない。精々、推敲されたものが『日記の部分』として稀に上梓される程度(例としては何人かの作家の戦中日記などがそれに当たる)。

 よく観察すると昨今のSNSは、特定の著者にとってはまさに手記の集大成で、読み応えのあるものが散見される。それらを書籍化してくれるサービスもあるので、多少貯金のある人は、あの世へ行く前に、生前の十年分くらいの記述なら、写真やスケッチを含め、数万円でソフトカバーの本に分冊してくれるので作っておくと遺族には良い記念品となる。

 

 

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